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第10話『アカシックワールド』その3


 ラウンド4に突入しようとしていた状況で、ある書き込みが話題になる。

アークロイヤルのガジェットがチートと言う訳ではない――と明言した上で、この人物は別の説を言及した。

【少し前に言及している人間がいたが、彼女の場合はチートではない。むしろ、リアルチートや公式チートの部類だろう】

 公式チートと言う単語には疑問を持つ人物もいたのだが、彼の発言は全てが嘘と言う訳でもなかった。

確かに、アークロイヤルのガジェットはロケテストで使用されている――本来のARガジェットとは異なっている。

ロケテスト仕様のカスタム型ガジェットはロケテスト参加時に配布される形式を取っているが、その時の画像と違うガジェットを彼女は使っていた。

形状が違うガジェットでロケテストに参加できないというわけはないだろう。

【アカシックワールドで使用されているガジェットは、基本的にロケテスト用で市販はされていない。しかし、一部である仕様が残された初期型が出回っている話がある】

 このつぶやきに関しても信用が出来るようなソースの情報ではないのだが、現状でアークロイヤルの現象を説明できる要素が何もない中では――唯一の情報となった。

そして、ネット上ではアークロイヤルを巡って再び消火されていたはずの案件が、再び炎上する事となるのだが――。

『そう簡単に、君たちの思惑には乗らないよ。それに、今更超有名アイドル商法で使われたネット炎上ノウハウは――不要の技術、君たちの使うネットスラングで言えば――オワコンだ』

 ギャラリーが気づかないような特殊な場所で二人のバトルを見ていたのは、何とジャンヌ・ダルクだった。その声には、クールと言うには若干揺らぎがあるような喋り方だったのである。

しかも、ネットを炎上させようと言う勢力の存在に気付いたジャンヌは――アークロイヤルを炎上させようと考えていた書き込みを通報、その正体を暴露、更にはガーディアンに情報提供を行っていた。

それに使用した手段は、魔法的な何かではなく――普通にARガジェットである。一体、これが意味するのはどういう事なのか?

『単純にネットを炎上させたとして、それは自分が単純に目立ちたいだけだろう? そのような大義名分すらない無知のネット炎上を――』

 バトルの様子を別の端末で視聴して、ガーディアンへの通報は自分のARガジェットを使う。

中継を視聴するだけであればARガジェットでも事足りるはずなのだが――ジャンヌは、それを行わない。むしろ、何かを恐れて使ってない可能性も否定できなかった。

「ネット炎上は、コンテンツ流通にはあってはならない悲劇――」

『それこそ、大量破壊兵器と同類――チートその物だ』

 途中でジャンヌの声が何かの影響で変化したのだが、すぐに元に戻った。

その原因は不明だが――人為的なジャミングとも思えない。

 


 斑鳩いかるがとアークロイヤルのバトルは、ラウンド4で決着した。

その結果は――アークロイヤルの勝利である。3-1という成績ではあるのだが、素直にストレート勝ち出来るような相手ではない。

「ARゲームとVRゲームは根本的に違う。それなのに、何故――!」

 斑鳩は自分が負けた事を自覚していない――と言うよりも、悔しさのあまりに認めたくないのだ。

だからこそ、彼女は涙を見せずにARメットを脱いでアークロイヤルに向かって叫ぶ。

「ゲームである以上、VRもARも関係がない。操作や演出の違い以外に――何かあるのか」

 アークロイヤルの方はメットを脱ぐ事はなかった。そして、ログアウトを行い、その場を去ろうとしていたのだが――。

「周囲のフィールドが歪んでいる?」

 アークロイヤルがログアウトをしようとした矢先、周囲のARフィールドに歪みがある事に気付く。

ゲーム終了後は周囲の光景も歪んでいる物ではなかったはずなのに――。

「どういうことだ?」

「こういう事は、滅多にないと言うのに」

「一体、何が起こるのか?」

「これもジャンヌ・ダルクの仕業か?」

「違う。これは、もしかすると――」

 周囲のギャラリーも目の前の光景を見て、慌てているようにも見える。

ARバイザーを着用していない一般人にとっては、彼らが何を見て慌てているのかは全く分からない。

基本的にARゲームはARバイザーがなければ実際の画面を見ることはできないが、ARゲーム用のセンターモニターでならば――見る事は出来る。

 しかし、そのセンターモニターも画面が真っ黒になっていた。これにはモニターを見ていたギャラリーも困惑気味である。

ただし、ニューステロップは下の方に表示されており、電源が落ちたりした訳ではない。



 一連のバトルも途中からは中継映像も映らない状態であり、勝負が決着してから後が――。

『こうしたトラブルも――ネット上では炎上のネタとして扱われる――超有名アイドルを上げる為だけに。まるで、コラボ先作品の評判を落とす為だけの――』

『しかし、賢者の石に代表されるような――ビジネスノウハウは既に違法と認識されたはず』

『それを無視して、このような暴挙を行うとすれば――?』

 稀にジャンヌの声がノイズ混じりになる。何故、このような状態が続くのか。

サーバーが不安定であれば、ARガジェットに不具合情報が出るはずなので――明らかに意図的なジャミングと感じざるを得ない。

しかし、ARゲームの技術は海外に流出したり、特定芸能事務所が独占したというニュースも拡散した形跡はなかった。

『スケジュールを、早めるしかないのか。向こうには事後報告で――』

 ジャンヌは、ある計画を本格的に動かそうと考えた。

明らかにその表情は――芸能事務所に先手を打たれまいと動く週刊誌記者のようにも見える。


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