第9話『レーヴァテインの反撃』その4
レーヴァテインがこのような行動に出ている事には理由があった。それはチートプレイヤーの根絶という説がネット上では有力とされている。
しかし、本当にそれで正しいのか――疑問が出てくる個所は存在するのも事実だった。
それは特撮版レーヴァテインと今回のレーヴァテインに決定的な違いがある事から来ているようだが――。
【仮に特撮版のレーヴァテインをコピペしているとしたら、行動理念に矛盾が生じる】
【彼は利益至上主義や人命軽視をするような組織に対しては――容赦なく潰す傾向があった】
【確かに――それは一理ある。チートの大本を潰そうと言う行動には出ていないな】
【その通りだ。もしかすると、あのジャンヌ・ダルクと同じように二次創作の設定等を取りこんでいるのかもしれない】
【それはありえないだろう。第一、ジャンヌ・ダルクの正体は未知数と言われている。それと同じとは――考えにくいはず】
【それを踏まえての矛盾と言う事か。単純に行動を真似るだけの愉快犯なら――いくらでも存在し、出現する度にネットで叩かれる】
【ネット私刑――ARゲームではガーディアンと言うべきか? どちらにしても、放置は出来ない事案だろう】
【ガーディアンとネット私刑を紐付けするのは危険だ。あくまでネット私刑は芸能事務所AとJに雇われたネット炎上勢力を揶揄しているだけに過ぎない】
【向こうのネット私刑とひとくくりにすれば――大変な事になる。実際、WEB小説で起きた事件をリアルで起こそうと言う人間もいた位だ】
【それを――】
ネット上のまとめサイトでは、レーヴァテインの正体を考察している記事も存在している。
しかし、それが本人の口から出たような物ではない為に――あくまでもネタの一種と言う事で判断しているようだが。
実際にレーヴァテインの行動は様々な分野に被害を出している訳もなく、逆にネット炎上要素となる存在を摘発した事に歓迎する声もある位だ。
その一方で、彼の行動を危険視するような勢力がいる事も事実であり――リアルで暗殺計画が計画されている話題も存在している。
動画を視聴し終わったアークロイヤルとヴェールヌイは、ここで別れる事になった。しかし、ヴェールヌイは引きとめているような無言の表情を見せる。
「あなた――」
アークロイヤルも、ここで帰ったらまずいだろう――そう思い始め、近くのコンビニへと買い出しに誘った。
その誘いには全力で応えたので――もしかすると、別の目的があって接触した可能性も高いだろう。
その後、ヴェールヌイは菓子パンやお菓子、ペットボトルのコーラを購入したと言う。この状況にアークロイヤルはドン引きをするが。
2人は再び同じARゲームフィールドへと戻ってきた。ここにはフードコートはないがイートインスペースがある。
つまり、コンビニで買ってきた弁当等を食べるスペースは存在すると言う事だ。ただし、ゴミは持ち帰るという前提条件付きだが。
2人がイートインスペースに座るが、ファミレスの様な席が設定されているようなスペースではなく、ネットが出来るようにセッティングされたようなパーテーション方式だった。
パーテーションと言っても1人用スペースではなく、ある程度の広さを持ったスペースと言う物であり、3人までなら――大丈夫だろう。
格闘家等の場合は1人用スペースになってしまうかもしれないが――特に狭いと感じないようにしてあるので、こういう仕様かもしれない。
「君の動画は以前にチェックしていた。相当な実力を持っているようにも見えるが――」
ヴェールヌイは、既にアークロイヤルのプレイ動画をチェック済みだった。つまり、接触理由もそう言う事なのだろう。
「そう言えば、あなたは一体――?」
アークロイヤルの疑問も最もだろう。動画サイトではそこそこ有名なヴェールヌイだが、一目見ただけでは――本人と分かりづらい。
「自己紹介がまだだったようだ――。私の名前はヴェールヌイ。これでも、アーケード――違った、アカシックワールドのプレイヤーだ」
別のゲーム名を出してしまい、何かを訂正しそうになったが――そのまま仕切り直す。訂正という単語もなかったので、うっかり出てしまった可能性も高いが。
その後、ヴェールヌイは購入してきたカレーパンにかじりついた。
「そう言えば――私を動画で見た事があるって言っていたけど」
アークロイヤルは、あまり自分でも動画をアップしていなかった事を踏まえ、ヴェールヌイに動画の事を聞こうとしていた。
しかし、彼女はカレーパンを1分も満たないような速度で食べ終わり――その後にペットボトルのコーラを開けている。
さすがにパンくずをこぼしたりはしていないが――あまり褒められるような食べ方ではないだろう。
しばらくして、カレーパンを食べ終わった辺りで本題に入るかのように表情を変化させる。
「その通りだ。私はARゲームとは違う動画で君を目撃した。その時はハンドルネームも黒塗りで――分からなかったが」
まさか、ヴェールヌイは自分のVRゲーム時代を知っているのか――別の意味でも動揺した。
ARゲームではなく、VRゲームの方を知っている人間が他にもいたことには驚きを隠せないが――。
「そこまで分かっているのね――」
アークロイヤルは、これ以上隠し通せないと判断してヴェールヌイに事情を話す。
VRゲームで炎上騒ぎに巻き込まれて撤退せざるを得なかった事、それに――。
「そう言う事が――。しかし、それとジャンヌ・ダルクに何の関係が?」
ヴェールヌイもそこだけは引っ掛かる。アークロイヤルの言うある人物――それがジャンヌ・ダルクと名乗っていた事を。
しかし、現状ではその人物と今回のジャンヌ・ダルクが同一人物とは限らない。その為、色々と悩んでいる部分があるとも言った。
「コンテンツハザード、聞いた事がないわね」
アークロイヤルもコンテンツハザードは初耳であり、VR時代のジャンヌも言及はしていない。
別作品のジャンヌではないか――二次オリの様な概念のジャンヌとも仮説を立てていたヴェールヌイの見立ても、ここで振り出しに戻ってしまう。
「彼女がコンテンツハザードを達成させる為に、一連の事件を起こしている可能性もある」
ヴェールヌイの一言を聞き、アークロイヤルは深刻そうな表情を見せる。
彼女には何か思い当たる部分があるのだろうか――。しかし、これ以上に話題を広げて彼女のトラウマを――という懸念も持っていた。
ヴェールヌイはジャンヌの言うコンテンツハザードには、パワードフォースで言及されていたソレとは違う意味を持っている可能性が――と思う
アークロイヤルはパワードフォースでコンテンツハザードに似たようなエピソードがあったのか、脳内データベースで検索をするが――思い出せないでいる。
お互いにコンテンツハザードを阻止する事が最終目標になるという点だけは共通しているようでもあった。