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第8.5話『ジャンヌの正体』その3


 防音設備も完備のパーティールーム、そこではヴェールヌイと斑鳩、青空奏あおぞら・かなでの三人が様々な話をしている。

その中で、ジャンヌ・ダルクの話題が出てきた事で状況は変化した。

「聞きたい事とは?」

「ずばり、あなたがアカシックワールドの――」

 ヴェールヌイは何かを切りだそうとしたのだが、青空の方は若干深刻そうな顔をする。

話したくないと言う表情ではなく、別の事だろうか?

「アカシックワールド――初耳だな。ARゲームで、そう言うタイトルがあるのは把握したが――」

 残念ながら無関係――と言いたそうな発言であっさりと話を切り上げた。

ならば仕方がない――とヴェールヌイが思ったのかは不明だが、別の話題を切りだそうとする。

「では、質問を変えましょう。ジャンヌ・ダルク――あの人物が何者なのか? ご存知ですか」

 かなりの直球発言である。ヴェールヌイは、青空にジャンヌの正体が何者なのかを聞こうとしていた。

虚構神話の我侭姫に登場するジャンヌがベースになっている事は分かっているが、それだけとは思えない。

さすがにアレの正体がコスプレイヤーとも考えたくもないが、ぶつけるだけぶつけてみる事にする。

「あの人物の顔は見覚えがない。元々、あのジャンヌはイメージイラストもなかった――それが、あそこまで設定を把握して精巧に作るとは――」

 青空の話を聞いた斑鳩いかるがも若干疑問に思い始める。

今の話を踏まえると、正体と思われる人物がゼロから小説をチェックした上でコスプレ衣装を作ったようにも思える発言だ。

「ネット上のまとめサイト等の話題には興味がないし、その辺りの話は詳しくない。それに――」

 青空の視線はヴェールヌイの方を見ている。視線が泳いでいるような事は決してないので、嘘はついていないのだろう。

誘導尋問などをするのも酷なので、この話はここで切り上げる事にした。

「話したくない事があるのであれば、それでも構いません。私としては、ジャンヌ・ダルクの正体――それに関係する情報が得られれば問題はないので」

 まるで、彼女もネット上の記事を全く信用していないような――そんな口調で断言した事に、蒼空も何かを感じていた。

ヴェールヌイはジャンヌ・ダルクの正体を知りたかったのは事実であり、自分がWEB小説の作者である事も知っている。

謎の部分は多いかもしれないが、下手に深く関わると消されかねない――そう青空は感じていた。



 近くのアンテナショップを見回り、空の様子を見てそろそろ切り上げようと思ったのは神原颯人かみはら・はやとだった。

彼は――別のアンテナショップの入り口に通りかかった所で、青空とすれ違う。

ただし、神原は青空の顔を知っている訳ではない。その一方で青空の名前は何度か見覚えがあるので、全く知らない訳ではないが。

 気のせいか――と思いつつも、青空の歩いていった方角を見ると、そこには何人かの通行人が青空の方を見て――。

「あれは、青空じゃないのか? WEB小説家の――」

「青空奏だと? 何処だ――」

 一部の野次馬が彼を追いかけようとするのだが、そんな事をすれば――警察沙汰になるのは目に見えていた。

それに、高層ビルの入り口には監視カメラが設置されており、ARゲームの中継用ドローンも飛んでいるような状況である。

近年になってネット私刑や炎上勢力の様な存在もネット上で話題となり、取り締まり強化法案を求める声主あるほど。

そのような状況でストーカーをしようと言うのは――警察に犯罪者アピールをするような物である。

「あれが――青空奏なのか?」

 神原が注視した頃には既に彼の姿はなく、顔が確認出来るような状況ではなかったと言う。

しかし、彼のような人物が草加市に姿を見せると言うのは珍しい。

「この街特有の事情を取材しようとしているのか――?」

 草加市がARゲームの聖地巡礼等に力を入れている話題は、色々な媒体でも取り上げられている。

それに、草加市内ではコスプレイヤーがきわどいコスプレでもない限りは――警察官が声をかける事もない。

その手の裏サイトでパンチラ等の盗撮写真をアップしようと言う事を考えそうな人間もいるかもしれないが――自分で犯罪者アピールをするような環境では、行う事はないだろう。



 青空が帰ってからも、二人はパーティールームで色々と調べ物をしていた。

ARゲーム用モニターには、アーケードリバースの中継が映し出されているのだが――。

「あのアーマーは?」

 ヴェールヌイも別のプレイヤーが対戦している相手のアーマーの形状、そのデザインが他と違う事に気付く。

しかし、思い出せそうで思い出せない――そんな微妙な状態である。その為に人物名が出てこないのだ。

プレイヤーネームは中継映像の下段に表示されているが、それが丁度見えていない状態なのかもしれない。

「――えっ?」

 斑鳩はプレイヤーネームを見て驚いた。まるで、見覚えのあるような名前に――。

【レーヴァテイン】

 プレイヤーネームは、神話等をかじった事があれば聞いた事があると思われる物で――そんなに珍しくはない。

むしろ、問題はそこではなかった。アーマーの形状、レーヴァテインと言う名前――それが意味するのは、一つしかなかった。

「パワードフォースにも実際に登場していたレーヴァテイン? どういう事なの?」

 まさか、ジャンヌ・ダルク以外にも別作品のデザインを持ったアバターがいるのか――とも考える。

しかし、ジャンヌとレーヴァテインの違いは、ARアーマーの演出的な部分にもあった。

ジャンヌが中途半端にアバターを再現したような演出だったのに対し、向こうは特撮色が出ているのは間違いない。

ARゲーム自体も特撮色が濃いようなCG技術が使われているが――それを差し引いても、テレビで実際に使用したモデルをそのまま転用していると言っても過言ではないだろう。

それを踏まえて、斑鳩はレーヴァテインのアーマーデザインを『ありえない』と言う考えで驚いたのだ。

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