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第7話『反撃のヴェールヌイ』その2


 ジャンヌ・ダルクの放った刀はVRアバターにではなく、その先にあったオブジェクトに刺さった。

これを見た斑鳩いかるがは別の意味でも驚いたのだが、それ以上に驚いた人物もいる。

「このバトルを中継していたのは、公式配信とは違うのか?」

 冷静な口調で周囲の中継カメラを見ていたのは、ヴェールヌイだった。

服装は相変わらずの賢者を思わせるローブが目立つという――そんな気配だが。

【公式配信と思ったのだが――】

【実際に公式配信はあった。しかし、ジャンヌ戦になってからは中継が途絶えている】

【まさか? 電波障害?】

【電波障害だったら、ARガジェットに障害情報が出るし、公式サイトにもアナウンスされる】

【一体、何が起きたのか?】

 つぶやきサイト上でも、今回の異変に気付くような視聴者はいなかった。

しかし、現地にいたギャラリーの中には気づいている人物も――。



 斑鳩は刀が刺さっている場所へと振り向く。すると、そこには機械と思わしき物が姿を現したのである。

ドローンの類と言う訳ではなく、何かの装置と言うような構造だ。しかし、装置を仕掛けられるようなタイミングは――ARゲームでは存在しないはず。

ARゲームで使用される建物類のオブジェクトは、基本的にその場で生成されるパターンと実際にある建造物にフィールドを展開するパターンがあるのだが――。

『ここのフィールドは、確か自動生成型――そう言う事か』

 ジャンヌは、冷静に今回の状況を分析する。どうやら、ここで誘導されたのもはめられたと言うべきか。

既に名指しをしたプレイヤーがいた段階で気付くべきだったのだろうが、ある程度は把握したうえで突入したので同じ事――。

《アクシデントが発生した為、仕切り直しを行います》

 お互いのARバイザーには、仕切り直しのメッセージが表示され、フィールド関係も生成やり直しとなる。

その後のフィールドは商店街に近いようなフィールドに変化し、先ほどとは広さも変化した。

《ラウンド1――セットレディ》

 ラウンドコール後、5秒のカウントが始まる。しかし、カウントが1秒になったと同時に――。

『――今度は誰だ?』

 ジャンヌが指をパチンと鳴らし、フィールドを展開した事で飛来してきた物体は阻止できた。

その正体とはドローンの類ではなかった。その正体は――ビーム刃の仕込みナイフだったのである。

『ジャンヌ・ダルク。この勝負は無効だ――』

 姿を見せたのは、まさかのヴェールヌイだった。これにはお互いに驚くのだが――。

白銀騎士とも言えるような意匠は、お互いに見た事があるので――正体はバレバレである。

斑鳩に関してはネットでも白銀騎士を見た事があるが――。

 しかし、周囲のギャラリーはヴェールヌイの正体を知らない。

仮に知っていたとしても、名前がすぐに出るようなことはないだろう。

『無効試合かどうかは運営が判断する。そうではなかったのか?』

『確かに、それを判断するのは個人ではない。運営サイドだ。しかし、これは海賊放送の一件を含めて疑問に思わないのか――』

『こちらをはめたのは、芸能事務所AかJとでもいいたいのか?』

『そう決めつけるのは――まとめサイト等に炎上記事を書かせる口実になる』

 お互いに一歩も譲るような気配はない。

いつもは感情をむき出しにしないようなヴェールヌイが本気で止めようとしている――と言うのもあるが。

『しかし、こちらとしても真の目的がある!』

『それがコンテンツハザードと――』

 ヴェールヌイがコンテンツハザードと言う単語を出すと、ジャンヌは指をパチンと鳴らし――アガートラームを呼び出した。

図星と言う訳ではないが――当たらずも遠からず――らしい。



 ジャンヌとヴェールヌイの言い争いはその後も続く。お互いにコンテンツ市場に関しては疑問的な部分があるのは共通しているようだが――。

『私は――それでも、守りたい物がある!』

 ジャンヌの口調が若干崩れたようにも見えた。

そして、ジャンヌはアガートラームでヴェールヌイに打撃で対抗しようとする。

『ARゲームは、皆が楽しくプレイする物。カードゲームアニメやホビーアニメの様な物と――』

 ヴェールヌイがアガートラームを防いだシールド、それは自動防御型のシールドビットである。

この装備はアカシックワールドで実装された装備と言う訳ではなく、何か別の物をヒントに生み出した可能性が高い。

『それは、運営側ではなく――貴様の都合だろう? 過去のARゲームで起こった事件――それを再現させない為にも』

 ジャンヌの一言を聞き、ヴェールヌイは何かを確信する。

どうやら、それを確かめる為の乱入だったようだ。

そして、目的を達成したヴェールヌイはARガジェットの液晶画面に表示された非常用ボタンを押す。

『緊急ログアウト――そう言う事か、ヴェールヌイ!』

 ジャンヌが唐突に叫ぶのだが、そのタイミングには既にヴェールヌイの姿は消えていた。

それと同時に斑鳩も――と思ったが、彼女はあまりにも唐突に起こった出来事を見ているしかなかったのである。

『一度ならず二度までも――三度目はないと思え、ヴェールヌイ』

 ジャンヌも逆上した事に反省しつつも、VRアバターと同じ様な演出で消滅した。

一体、彼女は何が目的で現れたのか? ジャンヌも、ヴェールヌイも――。

斑鳩は、その事が分からずにいた。2人の言うコンテンツ流通とは、何を指すのか?

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