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第6話『アークロイヤルの敗北』その3


 5月17日、ネット上では案の定という書かれ方をしている記事に対し――チェックするのもレスをするのも面倒だと考える人物がいた。

それは――ファルコンシャドウに勝利したアークロイヤルの方だったのである。

 ファルコンシャドウの方は、記事の書かれ方に腹を立てるのも――と言う事で沈黙を続けているようだが、記事のチェックだけはしていた。

大抵が芸能事務所のアイドルを宣伝する為、巧みにアカシックワールドを炎上させるような書き方をしている。

中には、はっきりと予約受付中のCDのアフィリエイトリンクを追加して、CDを買うように誘導しているのだが――。

「ジャンヌ・ダルク――」

 アンテナショップのセンターモニターでジャンヌ・ダルクの姿を見せている動画を見て、何か思う所があったファルコンシャドウ。

しかし、彼女が――そこから行動を起こす事になったのは、後の話となる。

【ファルコンシャドウのバトルは見たが、手ごわいレベルなのか?】

【あれならば、そこそこのレベルと攻略法があれば楽生だろう】

【しかし、アカシックワールドに攻略本や攻略ウィキ、攻略動画のような物は通じない】

【ソレは分かっている】

【様式美はあっても、退屈になるようなマンネリは通じない――それがARゲームの決まりだ】

 つぶやきサイト上でも、ある程度はファルコンシャドウの動画が発見できるようになった。

しかし、謎の人物と掲示板上で言われていたような時と印象は異なり、ごく普通のプレイヤーと言う事で落ち着いている。

特筆する事があるとすれば、チートや不正に関しては人一倍の嫌悪感を抱く――と言う部分だけ。 



 5月18日、ネット上で様々な書かれ方をしたアークロイヤルは、自分とは無関係な記事でも自分がネットを炎上させていると感じていた。

――ファルコンシャドウに勝利した事が直接的な原因ではないのだが、アークロイヤルは彼女に勝利した事でネット炎上を呼んだと感じている。

草加市内でも、やはりというかアークロイヤルの話題に触れる人間は存在し、アンテナショップに現れたと同時にひそひそ話をするような自分アピール人間もいたほどだ。

「やはり、私がARゲームに関わったことで――」

 表情には見せていないが、明らかに彼女の調子は絶不調と言っても過言ではない。

周囲の人間も、不幸が移ると言わんばかりに彼女に近づこうとはしていなかった。

 この日の天気は雨でもないのに、彼女の周囲には台風が来ているのでは――と言うコメントをつぶやきサイトに写真付きで拡散し、炎上させようという人間もいた。

しかし、こうした人間の行動が――最終的にアークロイヤルを追い詰めるのには、この段階では気付かなかったのである。

【あそこでアークロイヤルを見るとは――】

【しかし、何処かで見覚えのあるような――】

【何処で? まさか、他のARゲームではないよな?】

【ARではない。VRゲームで、彼女と似たようなプレイスタイルを持ったプレイヤーがいたという噂がある】

【VR? それは、どう考えてもおかしいだろう】

【だが、他の格ゲー出身者がARゲームでも実力を発揮したり、ARリズムゲームでも他のアプリやアーケードの経験者が――と言う話は聞く】

【プロゲーマーじゃないのか? それならば、ある程度強いのには納得がいく】

【違うな。プロゲーマーであれば、どんな時でも観客の前で無様なプレイはしない――と言うのが通例だろう?】

 つぶやきサイトだけではなく、インターネットの有名な掲示板でもアークロイヤルの話題に言及されていた。

まとめサイトの中には、彼女がVRゲーム出身者の疑惑があるとスクープと言う形で言及しているサイトもある。



 同日午後1時、メイド服姿の斑鳩はあるマッチングを見て――はらわたが煮えくりかえりそうな状態になっていた。

「あんな、パチモノコスプレイヤーにも苦戦するなんて――」

 アークロイヤルの勝率は3割を切りそうな状態になっている。

勝ったのはファルコンシャドウ以外にも、何人かいるのに――それさえも帳消しになりそうなレベルの負けっぷりだ。

相手はファルコンシャドウではないが、そのコスプレイをしているコスプレイヤーである。それを見て、トラウマが再燃したのか?

 しかし、彼女の眼はトラウマで曇っている訳ではない。おそらく、もっと別な理由で調子が上がらないと言うのが正しいのだろう。

このバトルでは何とか偶発的なコンボや相手側の焦りで勝利をもぎ取ったが、その勝利に一喜一憂する訳でもなく――。

彼女は――機械的に勝率を確認し、次のプレイヤーを待っていた。この様子にはギャラリーも動揺する程である。

 アカシックワールドは特殊なガジェットではないと、マッチングは不可能という特殊なARゲームでもある。

斑鳩は、その条件にクリアしているのか――と疑問に思ったが、今はアークロイヤルにパンチをお見舞いしないと気が済まない。

「あれは、斑鳩か!?」

「斑鳩も――アカシックワールドにいたのか」

「公式サイトを見なかったのか? 彼女もプレイヤーだ」

「そうなると、アークロイヤルも名前があって当然のはず」

 公式ホームページを見ていたギャラリーの一人は、斑鳩の名前がランキングに載っていた事に驚きの声を上げる。

しかし、ベスト50の中にはアークロイヤルの名前はなかったと言う。

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