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第6話『アークロイヤルの敗北』


 5月16日午前10時30分頃、アークロイヤルは偶然だが――ファルコンシャドウを発見する事が出来た。

谷塚駅近辺のARフィールドで、ファルコンシャドウはアイドル投資家と思わしきプレイヤーを容赦なく叩く様子が見える。

心理的な意味ではなく、文字通りの物理的な意味で――。

何故、そのような行為に走っているのか――最初は見ている方も分からずじまいだった。

 ARゲームの様子はARバイザーを初めとした対応ガジェットでしかARアーマー等を確認する事は出来ない。

その為、ガジェットを持たない人間からすれば喧嘩に見えなくもないのだが――。

『こっちとしても、お前達の様な存在がARゲームの価値を下げているのかと思うと――』

 ファルコンシャドウの声は、どちらかと言うと男性の様に聞こえる。しかし、ボイスチェンジャーかもしれない。

怒りに我を忘れて攻撃をしている訳ではなく、どちらかと言うとプロレスで決着のゴングが鳴ってからも攻撃を続けるレスラーを連想する。

『お前達としては、芸能事務所AとJのアイドルの商品価値が上がれば都合がいいのだろうがな。FX投資やマネーゲームのように――』

 ファルコンシャドウはARウェポンではなく、ナックル型のガジェットでリアルに殴っているようにも――見える。

まるで、ネット炎上を誘っているかのように相手は全く抵抗をしていないし、反論もしない。

これが――何を意味しているのか? おそらく、ファルコンシャドウは百も承知だが。

 相手プレイヤーがログアウトし、ファルコンシャドウは何かの手ごたえを感じる。

力を手に入れたことで――アイドル投資家を黙らせることが出来る、と。

「ファルコンシャドウ! 貴方は――間違ってる!」

 私服姿のアークロイヤルは鞄からARガジェットを取り出し、それを右腕に装着する。

ファルコンシャドウの方は、アークロイヤルの声がする方向を向いたのだが――そこから喋る等のリアクションはない。

『いいだろう。こちらのパワーを試すには――絶好のサンプルになる!』

 この言葉を聞き、アークロイヤルはカチンと来た。これは、手段を考えている時間を与えてくれそうにない、と。

『今こそ、禁忌の扉を開く! アカシックレコード、遊戯開始フィールドアクセス!』

 2人同時にログインワードを叫ぶ。

ファルコンシャドウの方は、最初からARバイザーを装着していた関係もあり、バイザーとインナースーツにアーマーが装着されるタイプらしい。

アークロイヤルの方は、あれからアーマーカスタマイズを行い、ビームライフルと一体化した1メートルほどのロングソード、ブレードバックパックの2種類を装備している。

 ちなみに、カスタマイズパーツは市販品やレンタルがメインだが、お互いにワンオフのカスタマイズパーツがメインとなっていた。

これはアカシックワールドがワンオフをメインにしているのも理由らしいのだが――。



 今回のマッチングは、手まわしが早いと言われそうな展開でアカシックワールドに対応したセンターモニターで中継された。

これに関しては、メーカーのビル内で見ていた神原颯人かみはら・はやとも驚いている。

「ファルコンシャドウの放置は危険だが――誰が、今回の中継をセッティングした?」

 アカシックワールドの中継はビッグバトルと呼ばれる有名プレイヤー同士の対決などでセッティングされるように――神原が設定している。

しかし、今回のバトルはアークロイヤルとファルコンシャドウ――どちらもバトル回数が少ない。

アークロイヤルはジャンヌ・ダルクとのバトルもあるが、アレはノーカウントという認識である。つまり、事実上の初バトルだ。

「あのバトルはログを含めて向こうになっているはずだが――?」

 神原も若干焦りの表情を見せている為、このバトルは彼も知らない所でセッティングされた可能性が高いだろう。

だとすれば、どの権限を持つ人間が勝手に中継をスタンバイしたのか?

バトルを中止にする事もマスター権限で可能かもしれないが、中継が始まると聞いて駆けつけたギャラリーが増えている以上、後にはひき返せない。

「あの程度の相手に負ければ、その程度だったという事になる――」

 神原は、どちらが負けたとしても――自分の計画に影響はないと考えていた。

そして――バトルは始まろうとしている。



 5分が経過した辺りだが、バトルの方は始まっていない。これはアークロイヤルの方がチュートリアルモードに移行していたからである。

《相手プレイヤーの準備完了まで、しばらくお待ちください》

 ファルコンシャドウのARバイザーには該当のインフォメーションメッセージが表示されたまま、ゲームが始まらない状態だ。

しかし、それで退屈をしているのかと言うと――そうではない。むしろ、時間の余裕が出来たことでガジェットの調整を行っていた。

『こちらのセッティング時間に余裕が出来たのは大きい。先ほどは遠距離型だったが、あの武器を見ると――近距離+中距離か』

 アークロイヤルの持っている装備を見て、中距離までのタイプと考え、自分の持っている武器で対応できそうな武器をタブレットで物色している。

厳密には、武器選択で使用しているのはタブレットと言うよりはリアルで展開された武器コンテナ――と言うべきか。

所有している武器の数もすくないので、あまり選択の幅はないのだが――何処かの距離に対応できない事がないように、満遍まんべんなく用意されていた。

 一方のアークロイヤルの方は、チュートリアルに突入していた。システムの大体は、以前のジャンヌ・ダルク戦で覚えているのだが――。

《1ラウンド5分で行われ、3本先取で勝利となります》

《マップで表示される範囲がバトルフィールドとなり、それより外に出た場合はリングアウト判定となります》

《リングアウトは20カウント以内で行えば問題はありません。20を超えた場合は1本を失い、更に20カウント取られればあなたの敗北です》

 自分のARバイザーにリングアウトの説明文が出た所で、アークロイヤルは視線を周囲のオブジェクトに向ける。

ARシステムが展開されているビルと展開されていないビルではカラーリングが異なる為、それを目安にすれば――と判断した。

《故意による相手の負傷、流血等はゲームの強制終了となります。対戦格闘におけるバッティングも同種判定を受けるので注意してください》

《チートの使用は反則です。ゲームのログイン前には判定を行いますが、それ以降でも不正と認識されればゲームは強制中断されます》

 チートに関しては何を今更――と思うが、メッセージを飛ばすにしてもチュートリアルなので下手に飛ばせば重要なメッセージを読み飛ばしかねない。

仕方がないので、一つ一つをチェックしていくしかない――とアークロイヤルは判断した。

《デスゲームは原則禁止です。運営でデスゲームと判定された場合、アカウント停止を含めた大きなペナルティが発生します》

 デスゲームも今更な気配がする。しかし、このガイドラインがあるからこそ、ARゲームが風評被害で大炎上する事はない。

これがなかったら、色眼鏡でWEB小説にあるようなゲームオーバーで消滅と同義なデスゲーム物と同じに見られてしまう。

《ゲーム側で配置されたオブジェクト以外の無差別破壊行為、ゲームと無関係の人間等を巻き込むようなバトルは禁止》

 こちらも、先ほどのデスゲーム禁止を踏まえれば同じだろう。

オブジェクトの方も――先ほどの周囲を見て確認をしてある。問題はないかもしれない。

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