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第5話『虚構の英雄』その2


 そもそも、パワードフォースとは何なのか? その疑問を持つ者は多かった。

アカシックワールドの元になっている物が、パワードフォースかもしれないのだが――。

ネット上で判明しているのは、パワードフォースと言う特撮番組が存在する事、パワードフォースがシリーズ化している事位である。

既に10作品ほどあり、長期シリーズである事も書かれていたが――重要なのはそこじゃない。

「スーツのデザイン、使用されているガジェット、大まかなストーリーライン……そう言う事か」

 ジャンヌ・ダルクに敗戦後、蒼空名城あおそら・なぎは気になる事が合って情報を集める。

アカシックワールドが何のために生み出されたのか――よりも、彼が重要視していたのは別の事だった。

「何故、アカシックワールドを炎上させてオワコン化させようと言うのか」

 蒼空はタブレット端末を巧みに操作し、サイトの記事をチェックし続ける。

彼がいる場所はコンビニやイースポーツカフェ等の中ではない。アンテナショップのセンターモニター前だった。

センターモニター前にはいくつかの待機用の椅子が置かれており、そこに座ってゲームの順番を待つ事も出来る。

当然だが、蒼空のようにセンターモニターから出ている電波を使ってネットを見ることだって可能だ。

 ちなみに――このネット専用回線の使用は無料である。

時間制限等はないのだが、センターモニターに居座り続けても、他のプレイヤーの迷惑になるので――適度に席を離れたりするのだが。

「まだ、ジャンヌも手札の全てを見せた訳ではない。それに――」

 圧倒的過ぎたジャンヌの能力に、太刀打ちは不可能かもしれない。そう、彼は感じていた。

勝てる手段はあるかもしれないが、毒を以て毒を制すみたいなチート合戦は不適切だろう。

それに、そんな事をして勝っても――ARゲーム的には興ざめなのは間違いない。



 午後4時20分、そろそろ用事も何とか終わったのでアークロイヤルは帰宅をしようと考えていたのだが――。

「何なの、あれ――!?」

 自宅へ帰ろうとアンテナショップを出ようとした矢先、彼女は言葉にならないような声で驚いた。

アカシックワールドが映し出されていたのは事実だが――その対戦相手に閉口せざるを得ない。

「あの都市伝説、ガチだったのか」

「ネタと思ってスルーしていたら、これか!?」

「信じられない」

「ルール的にありなのか?」

「ARゲームで公式運用されているガジェットであれば、問題はないはずだ――他のARゲームでの事例だが」

 周囲のギャラリーも驚いているが、大型ガジェットの運用自体に問題はない様子。

しかし、明らかに戦力差が――と言う事で、驚く人物もいれば――この状況を受け入れられない人物もいた。

「ロボットもののARゲームも存在するって聞いていたけど、アレは――」

 巨大ロボット同士で対決するARゲームも、ある事にはあるだろう。

しかし、目の前の映像にあるのは――巨大ロボットとアーマーを装備しているとはいえど、生身の人間である。

このマッチメイクをしたのは何者なのか――。まさか、炎上マーケティング狙いの合成映像か?

 アークロイヤルは、目の前の映像を――いつの間にか足を止めて見ていた。

合成映像の類であれば、すぐに通報されるのは目に見えている。それは過去にVRゲームでも行われていたから――。

 そう言えば、アカシックストーリーズへは特定ガジェットではないとエントリー出来ない――そう公式サイトには書かれていたのを見た。

しかし、大型ガジェットも特定ガジェットなのか? 疑問に思う個所もアークロイヤルにはあるのだが――今は忘れる事にする。



 対戦相手のプレイヤーが目の前のARガジェットを見上げていた。それ程に巨大だったというのもある。

全長7メートルほど、横幅は――そんなに細身と言う訳ではないが、コクピット部分が小さい訳でもない。

それに――デザイン意匠はSFと言うよりも神話系統をモチーフに持ち出している気配もあり、装備の一つ一つがSFのソレとは大きく異なった。

確かにアカシックワールドは、モチーフにSFが多い傾向だが――それは、あくまでもパワードフォースを元ネタにしているような要素があるからである。

『こっちとしては、特にチートとか持ち込んでいないはずだよ』

 目の前の巨大ガジェットからは女性の声が聞こえた。

女性プレイヤーだからと言って馬鹿にされていると相手が思っていたら――それもネット炎上に悪用される。

そう言う世の中になってしまったのは、それだけまとめサイト等に依存するネット住民が増えてしまった身体と思われるだろう。

「こっちもチートを持ち出したら、即失格になる。そう言う事を言いたいのか?」

 相手プレイヤーもチートガジェットの類は使用していない。使っていたら、バトル開始前にストップをかけられる。

しかし、このステージは彼にとって明らかに不利過ぎた。周囲に有効的な遮蔽物と呼べるような建物がない。

大型ARガジェットを持ち出した以上、建物に入る事が出来ないエリアもあるので――行動範囲が限定される向こうも不利かもしれないが。

『そう言う事。正々堂々とバトルをしようよ!』

 まさかの正々堂々と言う単語が出てくるとは――相手プレイヤーの方も驚いていた。

最近のARゲームではチートプレイヤーが暴れ放題だった過去を踏まえ、規制を強化したが――それをすり抜ける手段は闇ネットに存在する。

つまり――結局の所は、悲劇の繰り返しが行われているのだ。

 しかし、バトル開始前に彼女は予想外の行動に出たのである。

大型ARガジェットは消えたわけではなく、ガトリングを搭載したバイク型とシールドブレードとシールドアンカー等を組み合わせたようなボード型ユニットに分離した。

この行動には相手プレイヤーも驚いたのだが――もっと驚くのは、目の前に現れたARゲーム用インナースーツとARメットを装着した人物の方である。

そして、彼女が持っていた武装は――大型ARガジェットではシールドブレードとして使用している物であり、複数のアーマーパーツに分離して装着されていた。

「そちらも、こちらの武装に合わせる――と言う事か」

 相手プレイヤーは、彼女が取った行動に若干の動揺をしたのだが、それでも――あの巨体が相手では歯が立たないのは事実だろう。

向こうにどのような意図があるのかは不明だが――これはチャンスと考える。

『さぁ――始めるよ!』

 しかし、これが作戦の内だと相手が気付く事はなかった。

彼女の名は蒼風凛あおかぜ・りん、これでもプロゲーマーである。知名度の問題で、ARゲームでは目立った存在ではないのだが。


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