1章 1話 暁光の中で
落ちる。
落ちている。
俺が通っていた学校、その屋上から飛び降りた。頭から。
死ぬ間際だが、少し例え話をしよう。
もしも、君の生きている世界がゲームだったとして、そのゲームはRPGで何億人もプレイしている。ステータスは完全にランダム、理不尽なバグもある。
しかし、一番大事なのはそこではない。このゲームはコンテニューもセーブも出来ないと言う事だ。
やり直しが絶対に効かない。もし、万が一にも死んでしまったらそこでゲームオーバーになり、カセットのデータはバックアップも無しに完全消去。
君はそのゲームのスタートボタンを押した。
するとどうだろう、君のステータスは低ランクしかもスキルが不運ときた。
君はそんなゲーム、続けたいか?
まあ、俺は嫌だね。でなかったら自殺なんかしてないだろ。
少し話を戻そう。というか死ぬ間際ってけっこう長く思いにふける事が出来るんだな。この事を発表したらノーベル賞貰えるかな?
なんて、今更遅いし、てかこれ経験した人死ぬじゃん。
そんな他愛無い事を考えながら、目を見開いてみる。学校へ着いたのが確か4時半ぐらいだったな、そんでもって侵入して屋上の鍵をくすね、屋上まできて大体20分、覚悟を決めるのに自分の顔を腫れるまで殴って10分で、今は落ちている訳で。
とても綺麗な朝日が見える。この時間の朝日は確か……暁光……って言うんだっけ。
いや、ギャンブラーではないけども……。
俺は今暁光に包まれながら残りの命を、1秒ずつ味わっている事になる。
初めて朝日を綺麗だと思ったかもしれないな。
死後の世界……ね……信じているかと言われれば、信じてない方に入るだろう。
まあ願うのはタダだしな。願わくば、来世はラノベのような世界で可愛い女神様とキャッキャウフフな生活が送れます様に…………
……なんてね。
信じてないのに叶うわけないだろ。
まあ最後くらい夢見てもいいのか。
俺は最初で最後の朝日を目に焼き付けるため
、眩しいながらも日を見つめていた。
その時、途端に光が強くなった。反動で目を瞑る。暗い世界に閉ざされる。
…………長い事目を閉じているけど、一向に痛みはやってこない。もう死んじゃった⁈
じゃあ目を開ければ、天国⁉︎
恐る恐る目を開けてみた……。
ーーーー俺は不幸だ。俺の望んだ通りにはならない。
そんな人生を送って来た。
だがしかし!
ようやく、とうとう、望んだ通りになる!
わけなかった。
天国とは思えないほどの活気。いや、天国ってこういうもんなのか……いやいやいやいや超顔痛いよ!天国って痛みあるの⁈
自ら殴った顔をさすりながら逆立ちの体勢からあぐらをかく。
うーん、分からん。誰かに話しかけるか?いや、無理だな……。コミュ力が足りない。2、3年人と話してないし、家から出たくなかったし、家から出た時足プルプルで産まれたての子鹿だったし。そもそもあの人?達は、
人類なのか?
ちらほらケモ耳見えてるけど……。
ああ、もうだめだな。ていうか案内役居ないのかよ!ああ!もう!
「ついてねーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」
これが俺、幸島運廻の異世界転移後、初の言葉である。