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ハロージョブ ~適正職業を求めて~  作者: 明日出 良良也
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旅立ち

初めて小説書きました

「よくぞ、過酷な試練を乗り越えた!! 今日からおまえは勇者(仮)だ

さぁ、旅立て、そして、魔王を倒し真の勇者になるのだ」


僕が4歳から始めた勇者修行は今年で11年が過ぎた

勇者になるためには10年の修行が必要だった


「じいちゃん、そのセリフは去年全く同じ言葉を聞いたよ」


勇者(仮)になるには15歳以上という年齢制限があり1年間追加で修行は行われた


「わしの決め台詞だからな、どうじゃ?わしの十八番は?かっここいいじゃろ?おまえもなるか?

勇者の師匠(仮)に?」


「じいちゃんも(仮)じゃん、かっこわるいよ

それに、わしの時は魔王がいなくて勇者になれないから仕方なく勇者の師になったんじゃってなにかあると毎回いうじゃん」


勇者によって魔王は倒された


「うるさい、うるさい、おまえが勇者になればわしも勇者の師だ歴とした勇者の師匠になるわ」


じいちゃんのお父さん、つまり僕の曾おじいちゃんは魔王を倒した勇者だ

終わることなどないと言われた暗黒時代を終わらせた勇者


「孫よ、いやシュートよ、旅の途中街に寄って来年度の勇者コースの新規受講者様を集めてくるように

今期の勇者体験コースはまだ空きがある、そして今年より勇者見習いの従者(3か月コース)も新たに新設した、こちらもちゃんと勧めるのだぞ」


世界に平和は訪れた

だが、魔王はいずれ復活する、束の間の平和


「嫌だよ、最近村でも馬鹿にされるんだよ、勇者なにそれ?飯食えんの?生活できんの?って もう勇者なんて時代遅れだって言われたよ」


「ふむふむ、そいつを連れてきなさい、勇者の素晴らしさを魂に刻み込んであげようではないか」


「やめてよ、絶対やめてよ、先月じいちゃんがわけわかんないことを村の不良に吹き込んだせいで

『勇者様バンザイ』

とか叫ぶ焼身自殺未遂事件起きたばかりだよ」


「何を言う、ただ白い部屋で我が父の偉業を語っただけではないか!!」


じいちゃんは勇者のことになると見境がない・・・ 箍が外れたようになってすごく怖い



僕が生まれて育ったこの村は曾じいちゃんも生まれた村

この村は勇者の隠れ里で有名観光地になっている

しかし、勇者が魔王討伐して約100年がたち徐々に活気がなくなり今では観光に来る人は少なくなったとじいちゃんは言う

その原因はきっと職業自由化の御触れに違いない

平和の象徴として生み出された法案だ

職業自由化の御触れは文字通り職業を自由にしていいという法律

魔王が生きていた時は魔王に対抗するべく一定の人数を一定の職業につけるという法律があったため自由に転職などできなかった

職業自由化の御触れが発布された翌日村人だった人が次の日には国王を名乗っているという事件も起きていたらしいが

現在は法は整備され、どの職業にもなれるが経験・能力・そして条件を満たした者にしか権利はない



「じいちゃん旅に出ろって言われても何も持ってないんだけど、勇者って大体初めに何かもらえたりするんじゃないの?」


「なにを言っている、しっかり装備してるでわないか 訓練用ダガー、村人の服、それに皮の靴 皮の靴なんて序盤そうそう手に入らない上位装備でわないか」


「じいちゃん これ普段着!!普段着だから、訓練用ダガーなんてかっこいい名前ついてるけど、この武器ただの石、とんがってるだけの石っころだから」


じいちゃんが言う訓練用ダガーは、僕の鑑定スキルでもはっきり”石”だと鑑定されている

勇者(仮)の修行で僕は 下位鑑定スキル と 剣術 を覚えさせられた


「わがままな孫じゃな、仕方ない手を出せ」


言われるがままにじいちゃんの目の前に手のひらを突き出した


チャリン


「え?」

手のひらには銅貨が5枚・・・・   ※1銅貨=10円


「じいちゃん5銅貨じゃあなにも買えないよ」


「やくそう1枚かおいしい水が買えるじゃろうが」


僕の家が勇者の一族だといっても裕福ではない

だが、かわいい孫が旅立つのに5銅貨しか与えれないほど貧困してるわけでもない

ただじいちゃんがケチなだけなんだ、それでももう少しくれても・・・


「これからおまえは旅をするのじゃ、自分で稼ぎなさい」


「あ、はい」


じいちゃんから真っ当なことなんて言われると思わなかった

そうだ、そうだよね、これから1人だ

自分でお金稼いで自分で食っていかないといけないんだ


「いってきます」


「募集は任せたぞ」


「・・・・・」



用意していたバックと手伝いの駄賃で貯めた1銀貨とわずかな銅貨を手にして長年暮らした家を出た   ※1銀貨=1000銅貨=1万円


家の扉を開けると大きな男にぶつかった


「お、シュートかすまん、大丈夫か?」


「ブラキさんか大丈夫だよ」


「おまえもついに旅に出るらしいな、おまえも大きくなったな感慨深いわ、初めて会った時はシュートが7歳で俺が24の時か、師匠のこの家に向かって歩いてたらおまえがついてきて『ぼくのいえになにかようじ?』なんて声をかけてきたな、あの頃のシュートは俺の足の大きさよりも小さくは言い過ぎか、ハッハハ、小さくて可愛いから女の子かと思ったぞ そして家につくなり『ぼ「ごめんブラキさん、僕はこれから道具屋に行くんだ」


ブラキさんは勇者修行8年目で僕の弟弟子にあたる人

悪い人ではないが話が長くよく喋る人で、きっと話を聞いてたら夜になってしまう


「じゃあ行ってくるよ、ブラキさん元気でね」


「ちょっと待て!」

ブラキさんは慌てて僕に一声かけ、家に入り何かを持って外に出てきた

そして、手にしていた物を僕に向かって投げた

「ほら、これを受け取れ、餞別だ」


受け取った物は古紙に包まれている

ん?結構重いなんだろう?

僕はすぐに古紙に包まれた物を開封した


剣だ!! 石の剣だ!!


鑑定してもちゃんと”石の剣”と表示された


「勇者の剣を手に入れるまでの繋ぎとして使ってくれ」

ブラキさんは少し照れくさそうに左手の親指で鼻をかきながら僕にそういった


「ありがとう、大事にします、今までお世話になりました、いってきます」


「おう、達者でな、またどこかで会おう」


僕は元気いっぱいに手を振った

今度ブラキさんに会ったら僕の旅の出来事でも語ってあげよう

ちゃんと最後まで聞いてくれるかな?

僕は少し頬を緩めながら道具屋に向かう


道具屋は僕の家から100mくらいのところで村のほぼ中心に建っている

この店は立派な物は置いていないがとにかくいろんな物が売っている

武器・防具・薬・肉・野菜・保存食 そして生活用品に土産物までだ


「いらっしゃい、今日も手伝いか?」


「今日から旅に出るんだよ、だから旅に必要な物を買いに来た」


「坊主もそんな年になったのか、うちは村一番の商店だからな坊主が欲しいものくらい置いてあるさ、今日は特別安くしといてやるよ」


村には他の商店自体ないので必然的にこの店が一番だと思う

この店主のおじさんはいつも調子がいい、何かある度に今日は記念日だ祝いだなんて言ってまけといてやると言っている、そのせいでいつも同じ価格だ、結局安くしてるかどうかわからない


「おじさんやくそうはある?とりあえず5枚くらい欲しい、あとは3日分の食料と水、街までの地図かな?」


「この村からだと街まで馬車でも5日ほどかかるぞ?」


「え、そんなに遠いの?隣村までは歩いて2日くらいだよね?」


「そうだな、隣村までは馬車で半日だな、歩けば2日くらいだろう」


「それじゃあ街まで歩いて10日くらいなのかな?」


「そんなわけあるか、この村から隣村までは山道を通るから馬車で半日もかかるんだぞ、そこからは平坦な道や舗装された道があるから馬車で5日だが、歩けば1か月は優にかかるわ」


隣村までは行ったことがあるけどそれ以上遠くには行ったことがない

じいちゃんは面倒な事は大体話さないからなぁ

どうしよう

「うちの村から街まで馬車は出てたかな?」


「月1本だな、運航日は月初めだ」


今日は5日だ、次に来るまで約1か月か、でも、このまま家に帰るのは嫌だ

じいちゃんは絶対この事知ってて今日にしたに違いない、家に帰って問い詰めても『旅に試練はつきものじゃ』って絶対言うはずだ

その後ニヤツキながら『ねぇ?どんな気持ち?今どんな気持ち?』って絶対2・3日言い続けてくるに違いない


「隣村って馬車は出てるよね?うちの村より数は多いかな?」


「そうだな、うちの村よりはあるだろう」


仕方ない、とりあえず隣村を目指そう

「わかった、ありがとう、全部でいくらになった?」


「やくそうが1つ5銅貨で5つで25銅貨だ、食料は今の時期は果物だな、果物の詰め合わせ3日分が200銅貨、水に関しては水筒を買えばいい、村から出る前に井戸で水を汲めばただだ、隣村までの道沿いに川もあるから困らないだろう、これが50銅貨で合計で275金貨だ。この素晴らしい地図とさっきの情報量はただしにしといてやる。」

「はいはい、275銅貨だね」


なんで、たまに銅貨をわざと間違えて金貨なんていうんだろうか?謎だ


「お、1銀貨か中々持ってるな、725銅貨おつりだ、買い忘れや欲しい物があればいつでもうちに来ていいからな」


「当分来ないよ、それじゃあね」


さてと旅の準備もできたし、あとは旅の前の腹ごしらえかな

それに旅立つ前におばちゃんには挨拶しときたいしね



職業は多様化され新しい職業もたくさん増えた

勇者から派生した ”勇者(仮)” や ”勇者の従者” そして最近では”勇者見習いの従者” など変わった職業もある

他にもうちの村には珍しい職業が存在する



店からシチューの香りがしてくる、いつ来てもここはイイニオイがする


宿屋兼食事処 ”幸せ亭” 僕が物心つく前から朝昼晩の3食ここで食べている

勇者の弟子たちは皆この店で食べるしきたりだ


「シュートちゃんは今日は遅いわね、お寝坊かい?」

いつも通り店内に入るとすぐに金髪の膨よかなおばちゃんがカウンターの中から話しかけてきた


「おばちゃん、いつものちょうだい」


「あいよ、勇者定食Aランチ1つね」


「実はね僕も今日旅に出る事になったんだ、それで準備してたらここに来るの遅くなったんだよ」


「シュートちゃんももうそんな年になったのかい、寂しくなるわねぇ、今日はいつも以上に大盛りにしとくからうんと食べていきなさい」


「いつもありがとう」


勇者定食を受け取ると長年座り慣れた席に座った

店の一番奥の風の通りがよく日差しがあまり当たらない窓際の席が僕のお気に入りだ


おばちゃんの職業は”勇者の料理番”

曾じいちゃんと一緒に旅をした幸せ亭の先先代が作った職業らしい

この職業には食べればみんな幸せになる料理のレシピや秘伝の調味料・秘伝の調理法があるらしいけど本当の事はおばちゃんしか知らない、世界で一人の職業だ


じいちゃんは全く料理をしないので僕にとってのおふくろの味はおばちゃんの料理になる

勇者定食Aの内容はパンにシチューそして僕の大好物のブドウゼリーがついている

うちの村にパン屋はないなのでおばちゃんが毎日朝焼いている外はカリカリ中はふわふわの至極のパン

シチューは初代勇者の料理番が残した伝説のレシピで勇者の隠れ里に来たら一度は味わいたいという一品だ、王都の有名料理雑誌にも掲載されたことがあるらしい

でも僕はなんと言ってもこのブドウゼリーが大好きだ、うちの村唯一の特産品の有機ぶどうでできている、山奥で何もない村だけどぶどうだけは甘くておいしい、そのぶどうをおばちゃんの技術によりほっぺが落ちるほどのおいしいゼリーになっている

旅にでたら次にいつこの村に帰ってくるかわからない、でも必ず帰ってくることがあるならここに来よう

絶対だ

名残惜しいけど、別に急ぐ旅でもないけど、ずっとここに居たいけど

魔王はいつ復活するか分からないだから僕は勇者の一族の一人として勇者を目指さないといけない


「おばちゃん今日も美味しかったよ、いつになるかわからないけどまた帰ってくるから」


「お弁当作ったから旅の途中で食べなさい、水には気を付けなさい、体調にも気を付けなさい、人にも気を付けなさい、それに夜は特に野宿をする際はちゃんと安全を確保しなさい、それから生活が安定して暇になったらでいいから手紙をちょうだい」


「うんうん、必ず手紙書くよ、お弁当もありがと、心配しないで大丈夫だよ、じゃあ行ってきます」


店の中にはお客さんがいるのにおばちゃんは外まででてきて手を振ってくれた

涙をこらえて一度振り返って手を振り返した、そのあとすぐ前を向き直し僕は村の出口の方へ歩き出した



村は木の塀で囲まれていて村の出入り口は1か所しかない、そこにはいつもうとうとしながら腰掛に座っている門番が1人いるだけ、一応勇者の里なんて言ってるんだからこんな守りで大丈夫なのかな心配になる


「門番のおいちゃん今日も寝てるの?」


「お、勇者の曾孫のシュートかどうした?一人で外にでるつもりか?珍しいな、ちなみに俺は寝ていないぞ、これは我が家に伝わる口伝の奥義で近寄るものの気配を感じる技だ」


なんで村の人間はおかしな事ばかり言うのだろうか?バレバレの嘘でしょ


「じいちゃんから聞いてない?今日から僕は一人で旅にでるんだよ」


「全く聞いてないな、シュートもついに修行を終えて旅立つのか、体に気を付けろよ」


門番のおいちゃんは左手を出した


握手かな?

僕はその手をしっかりと握った


「おいちゃん今までありがとう、頑張ってくるよ」





「なにしてんだよ、旅出るんだろ? 通行税1銀貨だぞ」





僕は勇者(仮)として旅立つことができなかった

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