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美しい彼女

作者: 名草よもぎ

彼女の周りにはいつも花が咲いている。



誰が見てもそう思うだろう。


彼女が笑うと可愛らしい花が。

彼女が悲しむと繊細な花が。

彼女が歩くと花びらが舞う。


皆それを見て美しいと

美しいと口々に言った。


僕もその中の一人である。


彼女の美しさに引かれ、引き寄せられるように後ろをついて行く。


彼女は僕を気にもしない。

ただいつも通りに振る舞うだけ。

それが逆に有り難い。


だから誰かれ構わず彼女の周りに人は集まる。

僕はそれが嬉しいことでもあったし、逆に妬ましいく、恐ろしいことでもあった。


僕が見ていない間、彼女が弱々しくなることがあった。

彼女自身は感情を表に出さないけれど、周りに咲く花がそれをひしひしと伝えていた。


痛め付けられた彼女。

ばらばらに散った花びら。

涙、涙、涙。


美しい彼女を傷つける者があとを絶たない。

だから僕は彼女を守る。

大切に、大切にする。


……彼女は次第に元気を取り戻しているようだ。

僕も嬉しい。


もっと、もっと、彼女と一緒にいたい。

僕と彼女の時間を永遠に。

彼女の美しい花を僕の側に。

彼女の美しい香を僕の側に。


いつからか願いは欲望へと変わってしまった。


彼女を手に入れたい。



ねえ、僕と一緒に何処かに行こう。

誰も知らないはるか遠い彼方へ。


大丈夫、僕がついているから。

そんなに小さな花をつけて……君はやっぱり可愛いね。


ほら、こうすればいいんだよ。

僕といれば、ずっと綺麗な花を咲かせられるよ。


僕と一緒に。

僕と一緒になろう。



君が願わずとも、美しい花が咲く。

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