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power of school!!  作者: 海原
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第二章 中

 昨日はそのまま寝てしまい、朝まで起きられなかった。悪夢にうなされることもなく、すんなりと学校へ登校することにする。リョウタに一緒に行こうと誘われたが丁重に断った。

 水ノ零は何処へ行ったか。車の風が短い髪を揺らしていく中、リョウは考えた。少女漫画風に考えれば前に会った美少年及び美少女が転校してきて主人公を驚かせるというのが基本的なシチュエーションであり、そう来ると予感していた。

 しかし、リョウの周りに少女漫画なんて読む女子は居なく、リョウ自身も家族も読まない。少女漫画が本当にそういうものなのかリョウ自身分からない。自分の独断と偏見で少女漫画がこういうものだと思いこんでいた。

 同年代のように見えたし、万が一高校生だったとしてもリョウタに聞けば分かると考える。小学生……とは思えないのであえて外しておいたがもしそうだったら従兄弟にでも聞けばいい。そう考えながら歩いていると後ろからどつかれた。

「よっすっ。なんだよお前、昨日休んだじゃんっ? 弱いな。このそうめんめーっ」

 肩に肘を乗っけて寄りかかってきた人物は可愛らしいと評判の中学の制服を全く着こなしていない、というか似合わないと一目見たら誰もが思う。リョウは露骨に嫌な表情を見せた。なるべく顔を背ける。

「……重い」

「ひっよわっ。オレの体重が乗ったぐらいで重い言うなよなー。この清涼飲料水めえっ!」

 肘で頬をつつきながらケラケラと笑ったのはキサラギスズタカにリョウというあだ名をつけた張本人の榎本雛エノモトヒナだった。リョウの幼なじみであり、同じ陸上部の短距離種目エース。リョウは短距離と走り高跳びの掛け持ちであり、それを理由にしなくともヒナはリョウよりも速かった。

「清涼飲料水言うな。大体、お前の発想はいつも馬鹿げてるんだよ。勉強しろ勉強」

「いーじゃん。みんな良いって言ってくれてるんだからさ。それにもの凄いあだ名じゃん! これほど素晴らしいあだ名はオレにしかつけられないって」

 たまたま陸上の大会で清涼飲料水を飲んでいたヒナが咄嗟に思いついた、たまたま思いついたあだ名をつけられた側はそんな満足げに笑うエースを殴りたくなった。女の子だから、というのは差別であり、喩えヒナが女であっても男子を打ち負かすほどの力があるのだから殴っても平気だとは思ったが、この前ヒナを激怒させて血の乱舞を見せてくれた男子が脳裏に浮かんだのでやめておいた。きっとヒナならキングゴリラでも恐竜でも打ち負かすだろう。

「おお。そう言えばさ、お前なに? テレビに影響される方な訳っ?」

 リョウがヒナを睨み付けたからか逃げるように話題を変えたヒナは月曜日――リョウから言えば日曜日な訳だが。に教室で倒れていた話だよ、と少し驚いた顔を見せた。クラスではそれは四、五日前に起こった何処かの生徒が教室で暴れ回ったのに影響されてリョウがこんな行動をしたという噂になっているらしい。

「……別に。教室をさんじらかしにしたのは俺じゃないから」

「じゃあ誰だよ」

「……知らん」

 それは宇宙人のせいだ、と言ってもヒナは大いに笑って背中を叩かれるだろうとリョウは口を閉ざす。右手の甲を横目で見た。包帯を巻いて、甲に描かれている赤い線を輪を隠している。リョウが苦みを潰した顔で手の甲を見ているとヒナが目ざとく甲の包帯を見つけた。

「何お前これっ! やっぱ昨日暴れたんだろっ」

「違うって。大体、俺が教室でどうして暴れなきゃならないんだ」

「だから影響されてるんだって」

 手を掴もうとするヒナの追撃にリョウが手を払いのけて避ける。違うって、と何度も言うがヒナは一向にそれを信じようとはしなかった。右手首を捕まえられてリョウのこめかみには冷や汗が伝った。あの摩訶不思議な模様を見られてしまう。ヒナの手がリョウの手の甲に触れる。

「ひゅー。お二人さんあっさからあっつあつだねえ」

 ヒナもリョウも咄嗟に約一メートルほどの距離感を保つ。そして同じクラスの桜庭サクラバが後ろからどついて冷やかそうとしていたのでリョウとヒナは同時に鉄拳を喰らわしてやった。

 サクラバの冷やかしでリョウはヒナの追撃を避けられた。リョウが安堵の溜息を吐いたて手の甲をさすったときにヒナは不思議そうな表情で手の甲を見ていた。なにかを思い出しそうな考えているのを思わせる瞳で。

 ゆるやかな坂を鼻を押さえて上るサクラバとヒナと一緒に上りながらリョウは二人に質問する。

「なあ、学校壊れてなかったか? もしくは転校生とか来る噂は無いのか?」

 先頭を歩いていたヒナとサクラバは悪い物を食べたのかと怪訝な表情で振り向いた。それからリョウタのように吹き出して大笑いする。ヒナは一度真剣な顔をしてリョウの肩を掴み、すぐに又吹き出してリョウの背中をバンバンと力強く叩いて腹を押さえて笑った。

「おいおい。まだお前熱あるんじゃねーのっ」

「大丈夫かよ。学校なんてそうそう壊れるわけないし。壊れたら万々歳! てゆうか、俺の情報の中に今のところ転校生が来るなんて言う情報は一切無い!」

 自信満々にそう言い切って笑いながらサクラバは言うが誰もサクラバの情報を聞こうとも信じようとも買おうともしない。もっとマシな情報屋だっているからだ。

 学校が壊れたら夏休みや冬休みを潰してまで授業を受けなくてはならないのにそのようなことを分かっていないサクラバに教えてやろうと思ったが大笑いしている二人がシャクに来たのでリョウは黙り込んで俯いた。

 昨日もやられた額に手の平を押しつけられる行為をされたのでそれをやった人間が誰だか見ると心配そうな表情をしたヒナだった。リョウの視線に気づいたのか驚いて顔を赤く染めるとリョウの額を叩いた。バチリといい音がする。

「いって」

「熱なんてないから大丈夫だろっ。行くぞサクラバ」

 まるで下僕扱い、犬扱いのようにサクラバの首根っこを掴んで坂を上るヒナをリョウは訳の分からぬ表情で額をさすりながらついていった。

 坂をのぼり終えると何処も壊れていない中学校校舎が見えてきてあの出来事が夢だと思いたかったがリョウは首を振って現実逃避をするのをやめようと思った。普段通りに学生服を着た生徒が吸い込まれるように校舎に入ってゆく。

「なあ、本当に大丈夫かよ」

「平気だ」

 しつこいとも言える心遣いがあるサクラバが不安げな表情を見せたのでリョウは小さく頷いてそう答えた。

 山の字の横線が校舎の入り口をなっている。二年生は一番端、二画目の所に玄関がある。

玄関に入って下駄箱に靴をしまって上履きに履き替えて、普段通りにまっすぐ行き、角にある階段を上ろうと久しぶりに思える上履きの感触を踏み締めようとしたときに、リョウは停止した。体も、精神も。

 急に立ち止まったリョウをサクラバが再び不安げな表情をした振り向き、よそ見をしてリョウの後ろにいたヒナは背中に額をぶつけた。

「いってー。なんだよいきなり」

 ヒナの憤怒した声を無視してリョウは下駄箱にかじりつく。リョウの視線の前のネームにはあり得ない人物の名前が書いてあった。

 ――水口零ミズグチレイ



ヒナとサクラバの台詞表現が使いこなせません。うわ。どうすんだろう。

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