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アフターディメンション-After dimension-  作者: 片岡 雅
第1章 真相を求める話
4/24

第3節 荒れ狂う聖夜

書き溜めがなくなるまで一日二節ずつ投稿することにしました!

まぁたぶん数日でなくなりますが;

温かい目でご覧ください!

 今日は一二月二四日、クリスマス・イブだ。この世界でもクリスマスはあるようで、やることもなにも変わりないそうだ。

 僕の家でも、丁度今雫がケーキを焼いていた。


「お前ケーキも焼けるのかぁ。知らなかった」


「何言ってるのよ佑にい。去年も焼いたじゃない。って、あそうか、違うんだったわね。ごめんごめん。そうだよー焼けるんだよーすごいでしょー」


 雫はのみこみが早く、僕が本当のことを話すとすぐさま受け入れて、それでも今までと変らずに接してくれている。

 本当にありがたい話だ。急に対応が変るほうがこっちとしてはやりづらい。


「それで、何ケーキなんだ?」


「佑にいの好きな≪ねずみ≫のケーキ!」


 え…。冗談だよな、と僕がものすごく嫌そうな顔をすると、雫は冗談だよと、苦笑いで返した来て、僕は普通にほっとした。

 ねずみが好きとはいえ、それは食べ物としてではなく愛玩として好きなのだからさすがにちょっと驚いた。


――朝食後、僕は先日のこともあり、奥村のことが心配でとりあえずあの実戦演習の時のメンバーと連絡を取った。

 最近奥村から何か聞いていないか、とか。結果、だれも何も聞いていないようだ。こうなったら直接家に行くしかないという案もでていた。

 しかし、それでは奥村が出てきづらいということで保留になっていた。だが、もうそんなこといってられない。僕らは今日の午後、集合して話し合うことにした。


 午後五時、場所は学校から数百メートル離れた三島公園。古川の都合が悪く、夕方になってしまった。


「じゃあ、はじめましょう。まずは奥村君の家に直接行くか、それとも別の方法で呼ぶかね」


 司会進行はクラス委員の静香が引き受けてくれた。


「うーん。やっぱ直接ってのはきついからなー。こっちとしても、奥村にしても」


「そうよね。だってまず誰も奥村君の家の場所知らないし。そうなると、先生に聞くしかないけど、めんどくさいしねー」


 え? そうなのか? 誰も知らないのか? まずそのことを僕は知らなかった。そしてしかたなく、僕らは別の案を考えることにした。

 すると、僕はそこそこのいい案を思いついた。それは、クリスマスパーティーをひらいて、そこで招待するというものだ。

 それを皆にも話すと、決まりになった。

 パーティの開催場所は丘の上にある僕の家で、メンバーは招待する奥村と、僕と雫と静香と古川の五人だ。

 パーティなのだからケーキのほかにもいろいろ必要だ。早速、その旨を知らせるため僕は雫に連絡をすると、料理なら任せろと喜んで協力してるそうだ。あとは奥村に招待状を送るだけとなった。


「あれ、まてよ。結局奥村の家に行かなきゃなんないんじゃないのか?」


「大丈夫よ。彼の家を知ってる人の家をを知ってるから。頼めばもっていってくれるわ」


 僕の心配は静香によってなくなった。なら初めからそいつに聞けばよかったのでは? とは思ったが、何も言わないでおいた。静香も気づいたようで、失敗したと言わんばかりの顔をしている。

 僕は招待状を書くと、静香に渡してもらってもらうよう頼んだ。


「あとは飾り付けだな。料理のほうは雫に頼んだからな」


「雫ちゃんの料理かー。楽しみだなー」


 古川は雫の料理をすごく楽しみにしている。そんなにおいしいのだろうか? 僕はだんだん楽しみになってきた。


「では、買い物に行きましょうか」


 僕らは静香を先頭に、デパートへと向かった。

 デパートに着くと、なぜか一人足りなかった。


「あれ? 古川は?」


「まさか、また迷子?」


 また? 静香の話によると、古川は極度の方向音痴らしい。しまった。これでは買い物どころじゃない。僕は静香と手分けして探すことにした。静かは一階から三階、僕は四階から六階を探すことにした。

 僕が五階の衣類コーナーを探していたときのことだ。フロアの奥のほうに謎の人影を見た。人なら他にもたくさんいるがその人影だけは何かが違った。

 だが、僕は大して詮索をしなかった。なにより今は古川を探さなくてはいけないからだ。

 僕と静香が古川を探し始めて二七分。やっと見つかったようだ。僕は静香から連絡をもらって聞いたのだが古川はどうやら一階の食品コーナーのクッキーを見ていたら迷子になったようだ。そこから三階の玩具コーナーに行って楽しんでいたらしい。

 僕らはそれから飾りをいくつか買うと、デパートを出た。


 買い物から帰ってくると、飾り付け作業が開始した。僕らは一人一人別の部屋を担当して、時間短縮を図った。


「見てみてこれ! 変な色のねずみー!」


「あはははは。……確かに変な色だな」


 古川が楽しそうに掲げているもの、それは僕の目覚まし時計の隣においてあった黄色と緑のねずみだった。言われて見ると変な色だな。


「これ佑太君のでしょ? へんなのー!」


 ぐさぐさと突き刺さる台詞だ。おそらく本人は何も考えていないのだろう。もし考えて言っていたら怖い。

 すると、僕の目に古川の提げているバッグが写った。そこにはクワガタの形をしたバッジがついていた。よく見ると、髪飾りもクワガタの形のように見えなくもない。

 おい古川、お前の趣味もなかなかおかしいぞ。

 僕はそう思いながら、部屋の飾り付けを進めた。

 始めてから2時間が経ち、飾りつけが無事終わった。


「よくよく考えると……パーティ明日だよな」


 僕がそういうと、なんだかずんと落ち込んだ空気になった。


「奥村君、そういうこと言わないの……」


「佑にい……」


「すいません……」


 静香と古川は帰り、僕と雫だけになる。


「なんか、知らない人といるみたいで不思議な感じだね」


「たしかに、実際の兄妹じゃないって思うとなんかね……」


 なんだろうか、だんだん気まずい空気になって来た。


「そ、そろそろ私寝るね。お休み佑にい」


「お休み。僕も、そろそろ寝るか」


 午後一一時半、僕はリビングにて就寝した。


 クリスマス当日、今日は天気が悪い。だが、もしこれで雪が降ってくれればホワイトクリスマスになる。僕は少し期待を抱いていた。

 早いうちから打ち合わせをしようと、僕は静香と古川に連絡する。

 三人そろうと、例の如く静香司会の会議が始まった。

 議題はパーティの内容。一人ずつ案を出すこととなり、僕は定番のビンゴを、静香は人生ゲームを、古川は……あろうことかロシアンルーレットを提案した。それでもし奥村がはずれを引いたらどうするんだ? それ以上に、僕には良くない思い出もある。――それについては後日改めて書くとして、古川はただの思いつきなのだろうが、思いつきでロシアンルーレットが出てくるところが少し怖い。もしかしたら古川は天然で恐ろしいことは言うヤツなんじゃないのだろうか。

 僕は少し距離を置いてみることにした。もしものときのために。

――そうして、話し合いは終了し、結果、ビンゴと……ロシアンルーレットに……決定してしまった――。

 ビンゴは景品があり、僕の縫ぐるみが一匹犠牲になることになって、ロシアンルーレットははずれが激辛レッドペッパーということになった。僕は心のそこで、それが古川にあたってほしいと思ってしまっていた。

 パーティの準備が完璧に終わり、時間は午後四時半。つい先程まで青かったはずの空が、徐々に紅に染まり始めていた。

 この時僕は、古川と買い忘れていたものをデパートに買いに行く最中だった。


「いいか? 絶対に僕から離れるなよ? 迷子になるなよ?」


「う、うん。あははーごめんねー……」


 古川は苦笑いになりながらついてくる。


「ねぇ佑太君、手、つながない? そうしたら絶対に離れないから」


 正直言えば恥ずかしい。恥ずかしいが止むを得ず、僕は古川の提案にのり、手をつないだ。デパートに着くまで、僕はかなり照れくさかった。

 デパートに着くと、僕らは自動ドアから中に入った。

――その次の瞬間、駐車場の方から大きな爆発音が聞こえた。


「佑太君。もしかして……」


「ああ、もしかしたら魔物かもしれない。行こう」


 僕らはデパートの入り口をでて、駐車場へと向かう。

 するとそこには信じられない光景があった。いくつものある車は、ほとんど破壊されていて、あたりは火の海となっていた。車には、人の力ではつけられないような爪痕がいくつもあった。


「この痕から見るに、やっぱり魔物だよね」


 僕は軽くうなずく。

 しかし一体どんな魔物が? 音がしてからすぐに駆けつけてきたのにすでにどこにもいないことを考えると、何かの狙いがあったに違いない。僕が深く考え込んでいると、すぅっと、誰かが横を通り抜けていくのを感じた。


「っ! 誰だ!」


 しかしそこには何もいなかった。存在に気づかなかっただけではなく、気づいたあとすぐに姿を消した。

 一体何者だったのか、僕がわかるのは白と黒の仮面をつけていたこと、一言僕に話しかけたことだった。「いずれ君の元に私のしもべがおとずれるだろう」と。

 その意味は分からないが、おそらくこの事件にかかわっていることは確かだろう。

 爆発が原因で、デパートはすぐに閉店。何も買えずに僕らはしぶしぶ帰宅した。

 時間は午後六時。そろそろパーティの始まる時間だ。奥村は来るだろうか? 僕はそれだけが心配でたまらなかった。――だが、心配は無用だったようだ。

 急な坂道を、奥村ががんばってのぼっているのが見えた。


「おーい奥村ー!待ってたぞー!」


 僕が呼んでも、奥村は反応を見せなかった。まだよく見えないが、どうやら浮かない顔をしているようだった。そしてしばらくすると、奥村は僕の家に入った。


「お、お邪魔……します」


 どうしたんだろう? やはり元気がない。


「どうしたの? 最近学校にも来てないし、何かあったの?」


 早速古川が質問する。お前それいきなり聞くなよ。


「あっいやっその……」


 古川の質問には、奥村は答えられないようだ。やはりいきなりは無理だったかと、古川は残念そうだった。


「言いづらいなら今じゃなくてもいいわ。まずは楽しみましょう?」


 今度は静香だが、質問ではなくフォローだった。だが、静香がそういうと、提案にのって大人しく楽しむかと思われた奥村が、自ら口火を切った。


「僕……その……先日のことが申し訳なくって、自分が恥ずかしくって」


 奥村がずっと学校に来ることも連絡を取ることもしなかったのは、先日の演習が原因だった。


「ずっとそれを気にしてたのか?」


 僕がそういうと、奥村は恥ずかしそうに下をむいた。


「そんなの気にしなくていいよ。無事だったんだからさ」


 理由もわかったところで、僕らは何も気にしていないことを伝えると、奥村は、疑わしくもうれしそうな顔でこちらを向いた。それと同時に僕らもほっとした。

 これでもう奥村は大丈夫だろう。また魔物が出たときが心配だが、そのときは僕らがなんとかすればいい。少なくとも僕はそう思った。

 その後僕らは、ビンゴをして、ロシアンルーレットをして……、それなりに楽しく遊んだ。

 ビンゴの景品は雫のものとなり、家にあることに変わりはなくなった。そして、ロシアンルーレットだが、僕の期待通り古川がはずれを引いた。辛いのを泣きながら我慢している古川の顔が今でも忘れられない。

 ちなみに、雫の料理の腕は確かで、どの料理も最高においしく僕は一瞬夢でも見ているのかとさえ思った。

 午後七時ごろからは雪も降り、今日は思い出に残るホワイトクリスマスとなった。プレゼント交換こそしなかったが、今までよりもクリスマスっぽいような気がしていた。

 ただ、デパートで見た人影が気になっていた。

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