第7節 死の城の決戦
今回は戦闘回なのですが、すいません。
ちょっと眠くておかしいかもしれません;
あと、明日はちょっと投稿出来そうにありません。
理由は簡単。今日は寝たいからである……((殴
僕らは冷たい石造りのダンジョンを抜けた後、出口の奥に自然と現れた青黒い階段を登って、装飾やら何から見るにおそらく城であろう中に足を踏み入れた。
「ここからが本番ってことですよね?」
奥村が怯え顔ではなく真剣の眼差しで声を放つ。
「ああ。ここからが本当の戦いだ。」
僕も真剣の眼差しで答えた。
長い長い階段だ。青黒い色が視界を覆っている。
そして、登りきった後、新しい景色が視界に飛び込んできた。
僕は目配せの後、息を殺して階段から廊下を覗く。
「……おかしいな。何もいない。」
「え? いない?」
疑うように静香も廊下を見渡した。
「確かにいないわね。でも、なんで……。」
「さぁ、考えても仕方ない……な。」
僕らはこの状況を疑いつつも、仕方なく足を進める事にした。
青黒い階段を抜け、細部まで装飾された廊下を進む。
細部まで装飾された廊下を抜けて、一つしかない小さな扉から一つの部屋に侵入した。
「ここは何の部屋だろうな?」
ところどころに波のように装飾が施された石造りの部屋には、少しずつ緊張の風が流れてきた。その風を感じつつ、僕らの視線はゆっくりと部屋の奥にある小さな入り口に向けられた。
どうやらこの部屋は、王の間へと続く玄関的なものの役割をしていたようであり、扉を護る兵士のいた痕跡があちらこちらに残っていた。
「……行くぞ。いいな?」
僕が皆を見渡す。
「わかった。」
「わかりました。」
「問題ないわ。」
「了解です。」
僕らは再び階段に足を乗せた。
階段は二十段ほど続いた。一段ごとに、王の間から迫る緊張の風と殺気は一段と大きさを増した。
僕らはその風と気配に、一歩下がりそうになりながらも階段を登りきった。
そこで待っていたのは、やはりというべきか、魔王と呼ばれる存在だった。
重い重装に身を包み、片手に大型の剣を持った普通の男のようにも見えるが、その巨体や、そこから放たれる殺気は尋常なものではなかった。
「来たな、小さき勇者御一行。君たちの望むものは、私の倒した先にある。まぁ、この私を倒せたらの話だけどな。」
冷めた表情で魔王エトルーザはそう言うと、ズシリと重い剣をこちらに向けた。
視線の交錯と共に落とされた戦いの火蓋は、重い金属のぶつかり合う音と共に、火花を散らして消え去った。
僕は交えた剣を引き戻して、体勢を整えて再び斬りこんだ。が、エトルーザの剣により、軽々と受け止められてしまう。
「やっぱ、能力を発動させるしかないな?」
「そうね。」
そういって、僕と古川は髪と片目を異色に染め、再びエトルーザに向き合った。
「そうだ。それでこそ勇者だ。選ばれたものの力は、私を高みへと連れて行ってくれる。」
―― 一瞬の後、僕の体は簡単に弾き飛ばされてしまった。
気づけば、僕はエトルーザの攻撃を受けていたのだ。幸い、反射的に両手に持った剣で攻撃を受けたため実際に斬られることはなかった。
「佑太君! 周りにも魔物がいます。」
静香の声に周囲を見渡すと、計四匹の魔物がいた。
が、おそらくエトルーザの攻撃を見切る、避ける、そして攻撃できるのは、能力もちの俺と古川だけだろう。
「静香と奥村、後、雫も、周りのザコの応戦を頼む!」
「了解!」
僕は古川の目を見て合図を送ると、お互いのいる側の側面へと移動を開始した。
作戦としてはつい先程のケルベロドレイク戦と同じもので、剣が一本しかない以上、二手から攻めれば片方の攻撃を受けざるをおえないという考えだ。
だがしかし、魔王にそんな安易な作戦が通用するはずもなく、他愛もなく攻撃は回避された。実際のところ、回避といっても、二人を剣で同時になぎ払ったのだが。
「古川! 大丈夫か!」
「うん。なんとか……。」
僕は古川の方に意識を向ける。古川はあの斬撃を防ぐ術を、表面積の少ない一対の拳銃しか持っていないからだ。だが、古川も素人ではない。その少ない表面積すべてを使い、攻撃をうまく防いでいた。
後方では、奥村と静香と雫がザコを相手に戦っている。
魔王は、魔王は僕がどうにかしなくちゃならない……!!
僕はそう考えると、石造りの床を蹴りながらエトルーザの後方目指して駆ける。
「古川! 援護攻撃を頼む!」
僕は古川の壊す力に期待しつつも、自らの救う力に意識を集中し、最大のスピードを発揮する事だけを考える。そして、呼吸を安定させて、エトルーザの背後にもぐりこんだ。ここまではうまくいったのだが、やはり作戦は読まれていて、背後にもぐりこんだ瞬間に剣により弾かれてしまった。
そして、僕を弾いて隙ができたところを古川の能力弾が突いた。しかし、古川の能力をもってしてもエトルーザの重装を貫くことはおろか、傷つける事もかなわなかった。
「……やっぱり、勇者ポジは僕なんだな。」
僕は瞳を閉じ、呟いた。
そして、赤い瞳を大きく見開き、エトルーザを睨みつける。
冷たい地面を蹴り、再び背後に回る。そして、今度こそと祈り、最速で攻撃を加える。一撃をお見舞いする事はできたが、即座に反応して反撃されてしまった。僕は両手の剣でそれを防ぐが、後方で戦闘する雫たちの許まで飛ばされてしまった。
「佑にい! 大丈夫!?」
雫が走ってきた。
「……ああ。何とかな――」
僕が返事を交わしたときのことだった。僕の目の前に、信じられない、いや、信じたくない光景が広がった。
僕に向かって駆け寄っていた雫が、取り巻きの魔物に跳ね飛ばされた。
そして、僕の脳裏に一瞬だが血の気が引く赤いビジョンが流れた。
「雫……雫?」
僕は頭を真っ白にして、雫の許へと向かった。途中、攻撃を仕掛けてくるザコは適当に切り刻み、足を進めた。
雫までいくと、僕は剣を置いて雫を抱き上げた。
「心臓は……動いてる。息も……してる。」
僕はほっとして息を吐くと、周りにいるザコに目を向けた。
エトルーザの相手は今は古川だけで、奥村と静香もザコ相手に一杯一杯のようだ。
「僕しか……僕しかいないのか……」
僕はその場を立ち上がり、攻撃の届く範囲のザコを次から次へときりつけていった。犬型のものトカゲ型のもの。斬って斬って斬りまくった。
能力の補正のためか、ありえないスピードで敵の体を切り崩していった。数秒で視界が真っ赤に染まる。鉄臭い匂いが僕の鼻をきつくついた。
僕は雫を安全な階段近くまで連れて行くと、再びエトルーザに向いた。
――もう何連撃加えただろうか? そればかりが気になる。
これだけの数の攻撃をエトルーザはいとも簡単に受け流していた。
「もっと重く、もっと重く……」
僕は攻撃を続けた。途中で打撃を受ける事もあったが、気にならなかった。ただ、斬る事だけを考えていた。斬撃は幸い受けなかった。剣を持っている腕には注意していたからだ。
古川の援護もあり、攻撃は流されてはいるが、順調に思えた。
そして、僕はただ、前のように何もかも失うのが怖かった。
「このまま斬り続ければ、もしかしたら――」
そう思ったときだった。エトルーザは今まで正面から受けていた攻撃を体と剣の向きを変えることで左側で受け、右側ではうっとうしいと思ったのか、古川に向けて攻撃をした。
僕と同じでその攻撃を予測できていなかった古川は、その攻撃をもろに受け、その体を壁まで飛ばした。
その後、僕も不意に反対側へ殴り飛ばされた。それと同時に、受けに回った右手の短剣も砕けた。
この時点で、僕自分の死を覚悟していた。ただ、他の皆にこの場を立ち去って欲しかった。僕の仲間にだけは、この場で、僕の目の前で、死んでは欲しくない。
『――護りたいか?』
っ!!
この声は今までには響かなかった声だ。けど、なぜか聞き飽きた声。そう、これは――
「僕の声……」
『護りたいか? お前の力で。』
当たり前だ。護りたいに、救いたいに決まっている。
この時また、冬のキャンプみたいに時が止まって思えた。流れる丸く赤い体液が宙を鮮やかに彩って見えた。
『ならば一度だけすべての力を貸してやろう。お前が、今度の勇者が壊れないために――』
最後の言葉は正直言って聞き取れなかった。最初の一言目で頭が一杯になったからだ。
そして、この声の本当の持ち主も、僕は分かった気がした。手のひらで踊らされているようで、しゃくだったが、今はこれに頼るしかない。
僕は両目を見開くと、運よく目の前の床に刺さっていた長剣「テイルソード」を手に取り、力いっぱい叫んだ。
「行くぞ。うおおおぉぉぉ!!」
その叫びと共に放たれた攻撃は、まさに稲妻の如く、重く力強い攻撃で何より速かった。
僕の右手に握ったテイルソードは、エルトーザの急所を鎧ごと貫き、その後も各部を鎧後と切り裂いた。自分でも信じられないほどのスピードで、鎧を斬る重い一撃を、軽く振り落とした。
今にも力尽きそうなエトルーザの目は、なぜか笑っているように見えた。なぜかは分からない。だが最後に、
「その目だ……」
と、一言呟いていた。そして、エトルーザはついに、僕の前で力尽きた。
魔王エトルーザを見事討伐し、すべてを取り戻したに思えた僕は、まだ頭の中が真っ白だった。
しだいに周りから聞こえる仲間達の歓声と涙の色で一杯になった。
「星野……。そうだ、星野。」
僕は取り付かれたように星野を探す。
部屋のさらに奥の個室。撒き散らされた青いきれいな結晶の上に横たわる裸の彼女を見つけたのは、その数秒後だ。
僕にはなぜか、彼女のいる場所が分かった。それは以前古川が言ってたものだろうと判断するのは、相当に時間が掛かった。
この時はただ、魔王を倒して星野が僕のところに戻ってきてくれたと、泣いて喜んだ。
この、北の山脈にそびえる死の城の決戦で、僕は一つ、救うことができたのだ――。




