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流転のネロは電脳で吠える

作者: みね
掲載日:2026/04/03

※この文章はプロットをAIに生成させて、さらに改稿を加えたものです

偉大なる祖、ユリウスの名を冠する者として、歴史に刻まれる栄光が与えられていたなら、オレも胸を張ってかつてのオレの名を名乗っただろう。だが現実は違う。神になり損ねた存在——それがオレだ。


だからこそ、こんな果ての地に生まれ落ちたのだろう。


日本。かつてローマの商人たちがシルクロードの終点として噂に聞いた「絹の国」の、そのさらに外側にある島国だ。


同じ島国であっても当時のギリシアのような洗練とは程遠い。先をいく国を模倣することが特技だというのだから、属国中の属国といえる。


もっとも、この生は神を目指す席に着きながら敗れた者への罰として納得できる。


オレは偉業を求めたことがない。

芸術——それだけに己を捧げた男だ。



ただ、オレの前世の評価に対しては忸怩たるものがある。


軽い不満から述べよう。オレと母が不義の関係にあったという、あの忌まわしい虚言が真実とされていること。


母はオレのパトロンだった。母はオレに芸術活動にふさわしい血を与えた。オレはその見返りに、母に執政権を与えた。当然にすべてではないにせよ戦果を望めぬ女である母には破格の栄誉を。それが真実だった。


晩年の母は、今の言葉で言うならば、痴呆という病をえた。


うまく食べることができず、服を汚す。着替えようとしたまま衣をまとうことを忘れるらしく、母の部屋を訪れると裸同然で過ごしていることもあった。それを政敵どもは歪め、あのような醜聞へと仕立て上げた。


母はオレが殺した。

だが、それは殺害ではない。介錯だ。


あの時代、人として生きるとは自立していることを意味した。尊厳を失った存在は、人ではないと見なされた。母がパピルスを食べたとき、オレは悟った。ああ、この人はもう母ではない、と。


だからこそ、せめて名誉ある婦人として終わらせたかった。


それなのに——


二千年以上の時を経てもなお、不名誉な母の姿が真実として語られている。



そしてオレ自身の評価。キリスト教とやらの信徒を迫害した暴君として記録されているという。


そもそも、オレは迫害などしていないのに、だ。


キリスト教をオレは今世で知った。色々な資料を読んでユダヤから派生した信仰らしいとようやく前世とつながったくらいだ。


それほど当時は取るに足らない信仰だったのだ。



だというのに。

ああ、この悲嘆をどんな詩にすればよい。



オレのローマが信ずる神は祖霊だった。


ローマを築き上げた者たち——ロムルス、ユリウス、そして数えきれぬ先達たち。その魂は都市の礎に宿り、ローマを見守り、導く存在だった。神々とは天にある存在ではない。ローマの地そのものだ。


だからこそ、ローマの地に住むローマ人は、それを忘れない。

前世のオレには、芸術のモティーフとするまでもない信頼だった。

朝になれば陽が昇る。それを疑うなど思いもよらなかったように。


だが——。


この時代に生まれ落ちて、オレは知った。


太陽すら長い時の果てには滅ぶがごとく。

取るに足らなかったはずの信仰が、ローマの地を覆っているという事実を。



ローマを創り上げた神々ではなく、辺境の地で生まれた一人の男の死と復活。

それを崇め、祈り、縋っている。


ガリア人どころかローマ人の末裔たちすら。

あれほど誇り高かった民が。

祖先の名を口にするだけで胸を張った民が。


時代が移ろえば、信仰の形も変わる。だが、祖先の偉業は神話として子々孫々まで語り継がれるはずだった。


胸の奥に、鈍い痛みが走った。


過ぎたことでありながら、ローマの喪失はオレの胸を草原にひそむ刺草のように陰湿に刺す。



何よりも辛いのは、芸術を理解できる者がこの辺境にいないことだ。


芸術とは、魂の燃焼そのものだ。神々への捧げ物であり、人の内奥を詳らかにし、時をも凌駕する。


だが、この時代の芸術と呼ばれるモノはどうだ。


軽い。浅い。消費され、ただの暇つぶしとして扱われる。


オレは孤独だった。


この身体は日本の少年として生きているが、宿るものはローマの魂だ。語り合える者などいない。



そんな憂鬱に耽っていると、


「パソコンだ!」


誇らしげにそう言う父の声が階下から響いてきた。


「いくらしたのよ?」


また無駄遣いしてという不満が伝わってくる母の苛立った声がする。


「いやいや、コレはすごいんだ。文字だけじゃなくて写真だって一瞬で世界中に共有できるんだぞ。子供の勉強にだって使えるさ!」


その言葉に、オレは反応した。


世界——それはローマ人とも?


父の説明を聞くうちに理解した。この機械は、遠く離れた者同士を結びつける道具らしい。


天啓。この言葉はこんなときのためにあるに違いない。


この道具で、真の芸術を世界に示してやろう。


幸い、ラテン語はこの時代にも生きている。オレの魂を最も正確に表現できる言葉が。



オレは詩を語りあうページに投稿した。


ダクテュロス六歩格ヘクサメトルの律に乗せ、祖名をアナフォラとする。もちろん、アナフォラとする以外の祖名は、換称法による冗長さの排除に配慮している。他にも修辞を凝らした詩だ。

文字しか投稿できないのが残念だ。本来は吟じてこそ美しい。


祖霊への讃歌。

ローマが何であったのかを、忘れた者に思いださせるために。


そうだ。これこそがオレの芸術だ。



[古典ラテン語?][注釈をつけて][どこからの引用?]


翌日、画面に並んでいたのは、芸術家ではなく未開の者からの返事だった。

オレは小さく息を吐いた。


「……この時代の者が、芸術など理解できるはずもないか」


思い知る。この生は罰なのだ。


オレの生きたローマはこの地に無い。

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