第一話 出会い
初めて長編をかこうとおもいます。最後まで見てくれると嬉しいです。
俺はあの日、何も考えずに歩いていた。何も考えずというよりはどうにでもなれという気持ちだ。
どうしたものか。どうしようかと考えるとき、俺は必ずここに来る。
世界の中心、穴に来る。周りを歩いていると、端まで来てしまった。
半径一kmにもなるこの穴は、高い柵で囲われていた。
柵には一つ大きな切れ込みがあり、そこには町の中心、大聖堂があった。
俺は穴を見下ろす。吸い込まれるような黒のこの穴は、悩みも吸ってくれる気がした。そんな時だ。不可解なものが見えた。少女だ。そこにいる。穴の中に。その少女はだんだんと浮かび上がっていた。
少女は今起きたかのように目を開けると、空を歩いて大聖堂の屋上へと向かっていった。
何が何だかわからない俺はそれを追いかけた。大聖堂の屋上は、この世界をすべて見渡せる。
この世界は大きなドームに包まれている。そこに浮かぶ月は綺麗だ。
「星を探しているの。」
彼女は言った。その顔はとても少女の物とは思えない、覚悟の顔だった。
「星?なんだそれは?」
俺は目を合わせ、彼女の心を見た。美しい蒼の目の奥に、空を飾る宝石があった。
そこにある物語。俺は思わず涙した。
「少々心を見させてもらった。そうか、これが星か。」
「そう、それがあなたの力なのね。ここはどこ?」
「ここは世界の中心、大聖堂。穴より生まれた子供に名前を授け、力を渡し、死にゆく人を穴に返す。」
「ふうん。不思議な世界ね。私はこの世界に来たばかりなの。あなたの名前は?」
「俺の名前はルナリス。君は?」
「私はアルヘナ。星を探す者。私の旅に付き合って。」
星。その言葉は存在しないはずだった。
俺は空を見上げる。いつもの空だ。でも何か足りない。知ってしまったら。
知ってしまったら、探さずにはいられない。
「君が教えてくれ。星のことを。星を探しに行こう。」
言葉は、心に染み渡る。
彼女は年相応とも取れる、屈託のない笑顔を俺に向けた。
「ええ、行きましょう。」
俺はもう一度空を見た。黒い空には宝石はなかった。
俺達はどこに行くか。それを決める必要があった。
「まずは大書庫に行かないか?俺も行ったことがないが、この世界の本がすべてあるという。そこに行けば、何をすべきかわかるかもしれない。」
「それはいいわね。まずは私もこの世界について知らなければいけないと思っていたの。」
「じゃあ、まずは大書庫だ。ここから大体四日の距離にある。間には2つ町があるが、少なくとも2日は野宿だ。その準備や必要なものを、ここでそろえてから行こう。」
「わかったわ。私はお金は持っていないのだけれど、お金になりそうなものなら沢山持ってきたの。」
「金の事なら気にするな。金だけは沢山ある。それこそ、腐るほどな。だからその金はとっておけ。」
「ありがとう。じゃあ明日は買い物ね。私はこの町も見ておきたいの。今夜はどこで寝る?」
俺は宿の部屋の鍵を無くして途方に暮れていたことを思い出した。
***
彼は一瞬だけ黙った後、ばつが悪そうな顔をして、こちらを向いて話始めた。
「宿の部屋はあるのだが、鍵を無くしてしまったんだ。入れてもらえないかもしれん。」
「あなたって、頼りになりそうな顔をしてるのに、意外と抜けてるとこあるのね。」
「そんなつもりはないんだがなあ。」
そうだ。いつも彼はこうだ。不器用な彼の優しさは、いつもいい方向に向かうわけではないのだ。
「仕方ないわね。何とか取り合ってもらいましょ。とりあえず寝れればいいわ。」
「すまんな。」
***
二人は宿に到着した。幸い灯りはまだついている。
ルナリスは宿主に謝った。
「帰るのが遅くなってすまない。鍵を無くしてしまった。何とか部屋に入れてもらえないか。
宿主は笑い、
「そんなことだと思ったよ。鍵は届いてる。よかったな優しい人がいて。」
「ありがとう。」
そんなこんなで無事に部屋に戻ることができた二人は、なんだか寝る気にもなれず、話し始めた。
アルヘナは「星」について語った。
「星は、私たちにとっての希望よ。」
「星という言葉は聞いたことがなかったな。あるいは、俺が知らないだけかもしれないが。」
彼女は星についての詩を教えてくれた。
「星は、空の果てにあり。」
「闇夜が世界を閉ざすとき、」
「散りばめられし、静かな光。」
彼女は少し止まり、息を吸った。
「閉ざされし世界。」
「一つの希望。」
「人はそれを星と呼んだ。」
彼女は自分の子供に語るかのように、優しく詠んだ。詩というよりは、お伽話の一節のような感じだ。
静かな余韻に浸るように、彼女は語り始めた。
「この詩は、私の父が見つけたものなの。」
俺の心に焼き付いた、誰も知らない光る宝石。
「この詩を書いた昔の人は、きっと星が好きだったんだろうな。」
「そうなのかしら。そこにあった星。それが綺麗だったから書いたんじゃないかしら。」
「そうかもな。」
そんなことを話した。そんなことを話しながら、何かが足りない夜を明かした。
これから二人は旅をする。長い、長い旅だ。
向かう先は大書庫。お世辞にも近いとは言えない場所だ。
しかしルナリスは決めた。彼は一度決めたことは貫き通す男だ。
次の日。
彼女はこの世界の不便に戸惑っているようであった。朝、水を飲もうとした彼女は、
「水はどこにあるのかしら」
「水なら宿に共用の井戸がある。」
「なんで水道が敷かれてないのよ。わざわざ井戸まで汲みにいかないといけないなんて…」
と溢していた。俺には「水道」が何かわからないが、水なら生活魔法で何とかなる。それを知らないのかもと思い、聞いてみた。
「魔法は使わないのか?少しの飲み水なら汲むより楽だと思うが。」
「魔法?何それ便利そうね。」
「魔法を知らないのか?ならば見せたほうが早いな。『湧き出よ』」
俺は初級水魔法、ウォータを使い、水を手の平から出しコップに入れた。
「わあ!すごい!そんなものがあるのね!」
その姿は、初めて魔法を見た子供に相応しい、幼いものであった。その姿に、なんだか違和感を覚えた。
俺は彼女を知っている気がした。でも思い出せない。遠い昔に逢ったような気がする。
「この魔法は、誰にでもできるはずだ。やってみるか?」
「やりたい!」
学ぶ意欲があるのはいいことだ。子供たちが最初に覚える魔法、ウォータ。それを彼女に教えることにした。二人は、町の外れにある公園に来た。建物に囲まれ、人気のない公園だ。
「詠唱はさっきも言ったが、『湧き出よ』だ。やってみろ。」
「『湧き出よ』!」
彼女は叫んだ。そうして出てきた水は、ほんの数滴だった。
「きっとが才能がないのね。」
一日中練習した彼女は、自分が出した水をのみながら言う。最初は数滴しか出なかった水も、一度でコップ一杯は余裕な量になっていた。
「一日でそんなに出たら上出来だ。本当は子供たちが二年も三年もかけてできるようになっていくことだからな。まずはその一歩だ。旅の途中でも、必要とあらば教えよう。」
そうして二人は宿に戻り、彼女は相当疲れたようで、宿で夕飯を食べた後、部屋に帰ってすぐ、泥のように眠ってしまった。
今日の様子を見るに、彼女はこの世界についてよく知らないようだった。
明日はこの町を見て回ることにする。この町にはもう戻らないかもしれないが、この町はこの世界の 様々な町と通ずるところがある。
今日は町の外れで過ごしたが、ここは央都、【ノヴァリア】であり、中央市場といわれる場所は、相当賑やかだ。そんなところにも行くつもりで、ルナリスも床に就く。
窓から闇夜をのぞいてみても、そこに宝石はなかった。
とりあえず読み切りでここまでです!続きは、反応が良かったら書こうと思います!




