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よん

物置部屋の開けっぱなしの換気窓から獄卒カガチの姿を目で追おうとしたが、もう獄卒カガチの姿は何処にもなかった。薔薇の華やかな匂いがする風が吹き込み私の前髪を揺らす。ドレッサーには前髪の隙間からオレンジ色の瞳が映っていた。


『必ず戻る。そしたら日本に帰って、…結婚しよう』


匠と交わした1000年前の約束が頭の中で再生されて、心臓を鷲掴みにされたように苦しくなった。でも、不快じゃない。


彼は何をしているかな?元気にしてるかな?私のように匠も転生していたら一緒に居られるかな?


彼と再会したら、前世の約束は、今も有効ですか?と聞こう。


必ず逢いに行く。嬉しくて浮き立つ心に自然と身体が軽くなって、今なら何でも出来る気がして口角も上がる。


「早くカガチ、迎えにこないかな」


足取り軽く換気窓から離れようとした瞬間、換気窓の外から賑やかな声が聞こえてきた。


「あのノロマなリデア様、きっと今頃オロオロしているわ!!」


「取りに行った花瓶が割れているんだからね」


「声が大きいわよ!」


「ごめん。あっ!でも良い事思いついた!」


「何?」


「侍女長を連れて、リデア様の様子を見に行くのよ!きっと面白い事になるわ」


キャロライン付きの侍女2人がクスクス嘲笑っていて、私は数歩後退った。


キャロライン付きの侍女は「物置部屋に置いてあるピンクの花模様の花瓶を持ってきて」と言っていた。


そして、今の割れた花瓶という会話に「もしかして…」と、もう一度物置部屋に『サーチ』を使う。


数秒もしないうちに、棚の1番下の段に置かれた木箱が光った。その木箱を引っ張り出して、蓋を開けると中身は、やっぱり粉々に割れた件のピンクの花模様の花瓶で。


前世を思い出す前に『サーチ』を使った時、私はピンクの花模様の花瓶を思い浮かべたが、実際の花瓶は割れていて形が違っていたから、反応が無かったのだ。


つまり、キャロライン付きのあの侍女達は、ピンクの花模様の花瓶を割った罪を私に着せようとしている。


このままだと冤罪で、殴る蹴るの暴力をふるわれ反省部屋に監禁されてしまう。そうしたら、カガチと匠を探しに行けなくなってしまうかも。


「冤罪なんて冗談じゃない。でも前世のスキルを試す良い機会だわ」


使用人を含めたデュモルティー伯爵家が把握している私のスキルは、屑スキルとされている『探索』で。当然、私の前世のスキルは知らない。


小太刀 橙子が得意としたのは錬金術と空間魔法。


空間魔法は後回しにして、今は錬金術だ。


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