さんじゅうさん
気合い入れて『アイテムボックス』から、錬金術で使う道具を取り出す。
ビーカー、三脚、金網にアルコールランプなどなど理科の実験でお馴染みの道具で、1000年前の私の愛用品。
次に取り出したのは、戦利品である薬草。野生だから、土汚れや虫食いが気になる。
ぽいっと、床に竜巻っぽいのを出して、種類別に『浄化』する。このまま『抽出』したいところだが、ポーション作りの場合だと煎じてから『抽出』した方が成分が安定して、使い勝手がいい。
ビーカーに薬草を入れて、アルコールランプに火をつけた。
室内に広がる薬草独特な香り。
1000年前、匠のために作り始めたポーションは、いつのまにか教会が販売するようになって…。私はブラック企業で勤める会社員のごとく働かされて、辛かったな。
ああ、いけない、いけない。思考が愚痴っぽくなった。
慌ててビーカーを見ると良い感じに。
ビーカーの中に竜巻っぽいのを出して、『抽出』で不純物を取り除けば、火傷とケロイドを治す治癒ポーションの出来上がり。
同じ要領で声帯を再生する特化型ポーションを作り…。
「仕上げね」
治癒ポーションをベースに特化型ポーションをまぜて、『合成』すると、ビーカーの中で若草色の液体がチャプンと揺れた。
「完成だぁ。ふふふ、絶対に天才新人冒険者って認めさせるんだから!」
楽しみ!と、口元が緩む。若草色の液体を試験管に入れて蓋をして、『アイテムボックス』に収納しようとした瞬間、琥珀色の何かが『アイテムボックス』から飛び出してきて私の手に引っ付いた。
「いやぁぁぁぁぁ!」
想定外のことに思わず悲鳴をあげる私。振り払おうとするが、ソレは引っ付いたままでパニックになる。
ソレと格闘すること数十秒で少し冷静になり、何だか見覚えのあるフォルムだな…と、思ったと同時に豪快に部屋のドアがバンッと開いた。
「橙子!痴漢がいたんか!?」
「どうしました!!」
入ってきたのは、カガチと宿屋の看板娘のユナさんだ。
「‥なんだぁ、スライムかぁ。何処から入り込んだのかしら?」
脱力したユナさんの呟きに、カガチが呆れた顔をする。うん。弱小魔獣にヒヨってすいませんです。




