さんじゅう
海風に混じって、微かだが異臭がする。
例えて言うならば、自動車事故で車が爆破した臭いだ。まあ、私に野次馬魂はないから、実際の自動車爆破事故の臭いは分からないが。
ともかく、そんな感じの臭いがするのだ。
この世界では基本、移動手段と言えば馬車。馬が普通で、車などまだ発明すらされていないが。
「この臭いはガソリンっぽいけど?」
まさか、私が知らぬ間にガソリンを使う何かが発明されたのか?例えば農業用機械とか…、いや場所的にモーターボートか?
ちょっと気になる臭いに疑問符を浮かべ、帰って来ました港町ヴォワルに。
「おかえりトーコちゃん」
人懐っこい笑顔をするのは、ごめの宿木亭の女将さんだ。
「ただいま。あの、女将さん、潮風に混じって変な臭いがしますが、何の臭いか知ってますか?」
「あぁ、この臭いかい。これは魔物の残骸を処分した臭いらしいよ」
なるほど、期待はずれだった。
「たまに浜辺に流れ着くのさ。まぁ、何時もは処分しても、こんな臭いわしないんだけどねぇ」
「なんだか、心配ですね」
魔物の残骸は別の言い方をすれば、魔物の死体の一部分だ。
「そうなんだよ。魔物の残骸ってのは、魔物を呼び寄せるって話だしねぇ。でも、まぁ、冒険者ギルドのキャッシーお嬢様が火のスキルで処分してくれるから、安心していいよ」
「そうなんですか」
ちょっっっと私に喧嘩を吹っかけてきたキャッシー・リルバーさん。貴方、港町ヴォワルでは慕われちゃってるの!?
これは、スペシャルな回復ポーションを渡して恩を売るしかない!
薬草大豊作だったし、ポーション作りたい放題だ。
早速、薬草の選別をしますか!と思ったら、女将さんに「汗かいたんだねぇ」と、笑顔でお風呂場に放り込まれた。
◆
綺麗サッパリとした頃には、日が暮れていた。
食堂に行くと、例のカウンター席でカガチがイカの姿焼きを摘みにエールを飲んでいた。
「おかえりカガチ。依頼終わったの?」
「無事に終わったぞ。そして喜べ、報酬が良くてなぁ3ヶ月遊んで暮らせるぞ」
「いやいやいや、遊ぶ前に匠探しでしょ!?」
「まぁ、落ち着かんか。ちゃあんと日下部 匠の居場所の手掛かりを掴んだんじゃからな」




