にじゅうく
獄卒として不正は見逃せないが、此処は地獄でも日本でもなく異世界じゃ。多少の不正は飲み込もうか。
「今回だけじゃからな」と指定依頼書を懐に仕舞い、当然、お嬢に追加で銀貨10枚を要求した。
「私のヘソクリがぁぁぁ」
「ワシがタダで不正を見逃すはずが無かろう。ざまぁじゃ」
絶望の叫びをあげるお嬢を笑い思う。1000年この世界におると、獄卒も丸くなるもんじゃなぁ。と。
◆
お嬢と愉快なやり取りをして、やってきたんは港町ヴォワル北西の浜辺。
1000年この世界におるが、不思議なこちょにワシは魔物に遭遇したことがないのじゃ。じゃからこの機会に魔物ちゅうのの残骸を見てやるか。
青く澄んだ空に透明度のある海水、クリーム色の砂浜。視察で見る沖縄の海のように綺麗じゃ。
じゃからソレを、探す手間なくすぐに見つかった。
軽車両ほどの大きさのソレは、血肉のように赤黒く、地獄で馴染みの憎しみ、後悔、怒り、悲しみを合わせた気配を纏っていた。
「魔物の残骸ちゅうんは、憎悪に飲まれとる亡者みたいじゃな。ワシに火属性のスキルはないがなぁ…」
依頼書に書かれている「火属性スキルでの焼却処分」の文字を見て溜め息を吐いた。
「取り敢えずガソリンで丸焼きにしてみるかな」
宿の部屋に『転移』し、ガソリンを担ぎ浜辺に戻る。
魔物の残骸にガソリンを撒こうと近づくと、懐に仕舞っていた探知機が鈴のように「リーン」と鳴り、日下部 匠の魂か、思い入れがある持ち物が魔物の残骸のところにあることを示した。
「うえ。あん奴を徹底的に調べんといかんのか!」
日下部 匠の魂じゃったら良いが、橙子か日下部 匠の持ち物が出てきちょったら、お嬢から追加で銀貨20枚請求じゃ!




