にじゅうさん
綺麗な施設内には六つの掲示板があり、受付窓口は入り口の真正面にあり、書類の山に向き合う受付嬢は、長い赤髪を三つ編みにしてサイドに寄せた、優しい雰囲気を醸し出す首にストールを巻いた美人さんだ。
前世で利用していた冒険者ギルドは、酒場と兼用していたから、酔っ払いとかいて案外治安が悪かったんだよね。1000年も経つとギルドの雰囲気も変わるものだなぁ。
「あら、カガチさん。お久しぶりね。本日はどのような御用件かしら?」
受付嬢が書類の山を脇に寄せて、カガチに声をかけてきたが…、その声は野太い男のもの。
この受付嬢の外見は女性だが…男性?いや、風邪ひいていて、喉の調子が悪いだけか?
頭に疑問符を浮かべる私の横で、カガチが眉間に皺を寄せた。
「どうしたんじゃ、その声?オカマみたいじゃぞ」
ピシッと受付嬢の笑顔が凍る。
「失礼ね。この声は…、魔物との戦いで首を火傷したの。その時、喉も潰れたのよ」
うわっ、カガチがやらかした!大人な条件反射でカガチを睨む。
「カガチ、女性に対して失礼だよ。謝った方がいいと思う」
「そうか。…お嬢、すまんかったな」
「いいわよ。それより、見ない顔だけどカガチさんの知り合いかしら?」
私にむけた視線を、カガチに移す受付嬢。
「まぁ、縁があって面倒見ちゃることになったんじゃ」
「トーコと言います。よろしくお願いします」
カガチの説明に合わせて頭を下げると、ニッコリと営業スマイルを浮かべる受付嬢。
「こちらこそ宜しくね。私は受付嬢をしているキャッシー・リルバーよ。トーコちゃんは、本日のご用件は冒険者ギルドの登録かしら?」
「はい、そうです」と頷く。
「それでは登録しますので、この書類に必要事項に記入してちょうだいね」
キャッシーさんから受け取った羽ペンと書類。書くのは名前と生年月日、スキルのみ。
名前は勿論、リデア・デュモンティーではなく、トーコで生年月日は適当に。年齢さえ分かればいいからね。
因みに、平民に家名はない。つまり受付嬢のキャッシー・リルバーさんは、貴族だ。平民にもフランクな話し方から、たぶん男爵だろうか?まぁ詮索する気はないが。
それよりも、問題はスキルだ。




