にじゅういち
「違う違う違うぞ!これはイカ焼きじゃなくて、イカの串焼きじゃ!!」
ごめの宿木亭に泊まっている部屋で、カガチに頼まれたイカ焼きを渡したが、ダメ出しされた。
「でも、だって露店のおじさんがイカ焼きだって言ってたよ!」
「何を言っちょる!橙子は日本人ちゅうことを忘れとらんか!?イカ焼きちゅうたら、小麦粉の生地にイカの切り身を入れて、熱い鉄板で上下からプレスして焼き上げてから、中に甘辛いソースを塗って食べる、関西人のソールフードじゃぞ!」
「いや、そう言われても私、関西人じゃないから分からないよ!」
「あぁぁ食べたい、食べたいのじゃ。橙子、作ってくれ」
「無茶振りしないでよ。私、イカ焼きって食べたことないから無理だよ。露店でもこのイカの串焼きしかなかったし」
「確かこの袋に…。このレシピノートがあれば何ちょか作れるじゃろう!?」
ゴソゴソとカガチが荷物から取り出したのは、私が前世で使い込んだ漫画メシレシピのノート、略して漫メシノート。前世での、匠との思い出の詰まった漫メシノートとの再会に、目頭がツンとして泣きたくなるが、泣く雰囲気ではない。
「その漫メシノートを見たってことは、カガチ、やっぱり貴方はヲタクで同志なのよ!」
涙目になりそうなのを誤魔化すための、ちょっとした冗談はご愛嬌。
「同志じゃないちゅうとるじゃろうが!」
「まあまあ怒らない、怒らない。で?なんで漫メシノートをカガチが持っているの?」
「話せばイカ焼きを作ってくれるんか?」
どうしよう。獄卒と言う鬼は食いしん坊なようで。私はレシピもない、見たことも食べたこともない料理を作ることになるのだろうか?
無理じゃない?
まあ、漫メシノートには、ソースとマヨネーズのレシピを書いてあるから…。
「お好み焼きで許してください」
「しゃあないな、お好み焼きで許しちゃる。簡単に言うとなぁ、橙子と日下部 匠の魂を探すんに、探知機が支給されだんじゃ。じゃが、探知機に魂以外の橙子と日下部 匠の思い入れが強い持ち物にも反応してしまってのう…。しょうがないから、それらも回収したんじゃ」
「なるほど。ん?探知機があるなら、私達を探すのに1000年もかからないんじゃあ?もしかして、サボってた?」




