じゅうなな
「おかえりなさい、カガチさん。いつもの部屋、空けてるよ」
「おう、女将ただいま。あの部屋は2人部屋じゃったな。今日から1人増えるから頼むぞ」
「おや。お連れさんがいるなんて、珍しい。…って、随分と酷い格好の子だねぇ。カガチさん、スラムの子の面倒を見るのかい?」
「まぁ、縁があったんじゃ。それより橙子を風呂に入れてくれんか」
「任せときな」と胸を叩く女将は、私に視線を合わせる。
古井戸に落ちたからなぁ。汚れてるし、スラムの子と間違われても仕方ないか。ああ!錬金術で綺麗にすればよかった!何で錬金術の存在忘れたかな!?と内心、私は頭を抱えた。
「トーコちゃんって言うのかい。私はこの宿の女将のエルだよ、よろしくね。さあ、今から身なりを綺麗にしようか」
リデアだと訂正しようかと思ったが、前世の記憶や意識が強いから、名前は橙子で行くことにした。がしかし、この世界では橙子と発音するのが難しいのに気づき、トーコと名乗ることにした。
「トーコです。よろしくお願いします」
頭を下げると、女将のエルさんは礼儀正しい子だねと、人懐っこく微笑んで部屋の鍵をカガチに手渡した。
◆
久しぶりに頭の天辺から足の爪先まで綺麗に洗い、女将さんに散髪してもらった。ついでとばかりに女将さんの娘さんが着られなくなった服を譲ってもらい、袖を通し…。
鏡を見てビックリ。水色のワンピースを着た別人がいた。
「まあまあだね。もう少し肉がつきゃぁ、可愛くなるよ」
「いやいやいや、痩せすぎだけど、充分可愛くなったと思いますよ、女将さん」
伸びっぱなしの薄灰色の髪は、相変わらず艶はないがきちんと洗ったから元のミルクティーベージュの色になり、肩までで切り揃えてもらい視界も良好で、オレンジ色の瞳が印象的な少女が鏡に映っている。
いや、でももう少し肉付きがいい方が良いよね?それに、せっかく綺麗な色の髪なのに、艶がなくて台無しだよ。匠に会うまでに綺麗で可愛くなりたいし、リンスの開発は必須だね。
「あはは。真剣に鏡を見て、やっぱり女の子だねぇ。さあ、カガチさんの所に行こうか」




