じゅうろくのつづき
溢れ燃えるヲタク魂!!!
「橙子。お前、ヲタクなんか?」
「Yes、同志よ」
「ワシは同志じゃないぞ?」
「いやいやいや、『バルス』や『40秒で支度しな』を知ってる時点で、カガチはヲタクで同志だから大丈夫!」
「何が大丈夫なんじゃ、あほんだら!それは、面白い亡者が言うてるのを真似ただけじゃ!くだらんこと言うとらんで、さっさと掴まらんか!!」
同志じゃなかったかぁ。残念。ここが異世界じゃなく秋葉原だったなら、カガチをアニメとゲームの沼に沈めていたのに。
久しぶりに同志と語り合えると思ったのに、本当に残念だと肩を落としてカガチの手を掴むと、視界がブレて突然、エレベーターに乗ったような浮遊感に目を閉じた。
「『転移』完了じゃ」と言うカガチから手を離され目を開けると、そこは港町だった。
観光名所のポストカードのように、夕日が海を茜色に染めて、三日月形の漁港には沢山の漁船が停泊している。そして、湾を望む断崖の上に密集するように建てられた白壁の家々まで夕日に染まっていた。
「ここは、アランス王国の西にあるカプリス領の港町ヴォワルじゃ」
因みに、カリプス領はデュモンディー領の3つ隣だ。一瞬でこんなに遠い距離を移動できるなんて、やっぱり『転移』はすごい!
「宿はすぐそこじゃ。着いてくるんじゃ」
頷いて、カガチを追って歩く。すれ違う人々は漁師が少なく、甲冑を装備した戦士やローブを纏った魔法使いの姿が目立つ。
冒険者だ。近くにダンジョンのような所があるのだろうか?
「キョロキョロしちょるんじゃないぞ。迷子になってしまうからな」
いや、迷子になるような精神年齢じゃないけど。と思うが、落ち着きがなく視線を彷徨わせたのも事実だから、素直に頷く。
露店が並ぶ通りより落ち着いた感じの通りを数分歩き、「あそこじゃよ」とカガチが指差した先には、白の煉瓦造りの建物。
品良く窓辺には、赤い花の鉢植えが置かれていて、外観は女性好みの宿屋だ。
「飯が美味いんで、けっこう人気なんじゃ」
慣れた手つきでドアベルを鳴らして戸を開けて入るカガチの後に、私も続く。受付にいたのは、30代から40代ぐらいのふくよかな女性。食堂のおばちゃんのように茶色い髪を三角きんで覆っていて、清潔感があり好感が持てる。




