じゅうろく
感情のない冷たい声に、あぁ、本当に興味がないのだなと実感するが、前世を思い出した私は、そのことに心が痛まない。
「承知しました。…最後に1つだけ」
父…、いやデュモンディー伯爵の机の上に件の指輪を置いて一言。
「この指輪を身につけた遺体を裏庭で見つけました。弔いを宜しくお願いします」
父娘の最後の会話だと言うのにそっけなく終わり、了承の言葉は無かったが、私は退室した。
デュモンディー伯爵に「遺体があった」と言ったが、信じただろうか?指輪を確認するかだろうか?と不安になった瞬間、書斎の中で何かを倒した音が響く。
何?と私がクエスチョンマークを浮かべると同時に、デュモンディー伯爵が慌てた様子で書斎から出てきて、そのまま階段を降りて行った。
「あれで上手くいったんか?」
『隠密』を解き階段の先を見ているカガチは、私を信じていないようだ。
「勿論、言質も取れたし問題ないよ。それにデュモンディー伯爵のあの様子なら、母の件も大丈夫そうだし。もしかしたら、犯人探しもするかもね」
「言質、無効じゃと言わんといいがな」
「大丈夫だよ。貴族の言質は絶対だから」
これで、心置きなく匠探しの旅に出れる。気分は、空を漂う風船のように軽やかに浮き上がり、ドキドキもしている。
「荷造りするから少し待っててよ」
「早よせいよ」
荷造りは『アイテムボックス』で簡単に終わり、私はカガチとデュモンディー伯爵家を後にした。
◆
デュモンディー伯爵邸の敷地から外に出ると、入試を終えた学生かのような解放感。隣にカガチがいるにもかかわらず、「自由だ!」と叫びたくなった。
どんだけデュモンディー伯爵家が、重荷だったんだよ。
見上げた空は、茜色に染まっていて、歩きで街まで行くとなると、着く頃には真っ暗になるだろう。良い宿は明るい時間から部屋がうまる。暗くなっても空いている宿は碌な所じゃないのが定説で。
まあ、いままで床に毛布を敷いて寝ていたのだから、碌でもない宿でも問題ない。
「ベッドで寝れるだけでも、ありがたいわ」
「何を言っちょる?これからワシの常宿に行くんじゃから、ベッドで寝るんは当たり前じゃ」
なるほど。常宿なら真っ暗になっても、融通してもらえのだろう。
「ほれ、掴まれ」と手を差し出してくるかガチ。
「どうして?」
「『転移』で移動するからに決まっちょるじゃろう」
「『転移』ですと!転生ヲタク達の憧れの3大スキル『転移』『アイテムボックス』『分析・解析』が揃うなど、私達の旅は、最強装備で始まりの森ダンジョンを散策す勇者のようなもの!ヲタクな私に死角なし!!」




