きゅう
前世の私は、コスプレ衣装を自作していたから裁縫は得意だし、今世も得意だ。刺繍することに問題はない。だが、その刺繍がキャロライン作になる事はいただけない。
他人の努力を横取りするなし!の心情だ。
納得はできないが、刺繍をすると言えば堂々と自室に引きこもれる。つまり荷造りする時間ができるという事だ!
思い立ったが吉日で早速立ち上がると、近づいて来る複数の足音がして。何事?と足音がする方に目を向けると、キャロラインと花瓶の件のキャロライン専属侍女2人が姿を現した。あっと言う間に3人の鋭い視線に囲まれる。
予想より早すぎで、私は頬を引吊らせる。ユージン・サフィーロとのお茶会はどうした!
これじゃ、チャリティーバザーの出品用ハンカチに刺繍をすると、自室に引きこもれないかぁ。
「婚外子のくせに、私のユージン様に色目を使うなんて生意気ですわ!!」
キャロラインが握る扇子からミシミシと、聞こえてはいけない音がしていてドン引きする。
貴族令嬢らしく、フリルがたっぷり使われたミモザのように明るい黄色のドレスを着て、艶やかな水色の髪はハーフアップに編み込みされているが、二重瞼で水色の瞳は吊り上がり顔は般若で台無しだ。
「私、色目なんて使ってません」
誤解だ!と訴えるが、火に油を注ぐような物でキャロラインの眉間の皺が深くなる。
「だったら、どうしてユージン様があんたみたいな婚外子を、専属侍女にしたいなんて言うのですの!」
「ユージン・サフィーロがアニソンを習いたいから」とは流石に言えないし、どうやってこの場を切り抜けよう?
「さっさと答えてください、リデア様」
「そうですよ。キャロラインお嬢様がお可哀想です」
黙ってよ侍女2人!と心の中で叫び、被害を最小限にする言葉を考えるが、いい案が出てこない。
「わ、私の庭園の手入れが天才的だったからです」
焦って出た言葉がコレで。自分でも火に油を注いだのが分かる。
嘲笑う侍女2人は大した事ないが、問題は小刻みに震え始めたキャロラインだ。
「婚外子のくせに、私を馬鹿にしますのね。躾直す必要がありますわ!」
どうして私は、あんなふざけたことを言ったんだ!と頭を抱える。いや、この雰囲気なら、私が何を言っても結果は同じか。
いやいやいや、頭を抱えてる場合じゃない。正面にキャロライン、左右に侍女、そして真後ろは古井戸で味方がいない。逃げ道がないのだ。
「覚悟なさい!」




