はち
「リデア・デュモンティーのカラダは!井戸水でできている!!」
何処かで聞いたことがあるCMのフレーズを掛け声に、邸裏にある古井戸の縄を引く。
本当なら厨房に忍び込み、前世の知識を活かしてカチコチに固いパンでフワトロなフレンチトーストや、捨てる予定の骨やガラでだしを取った野菜屑のスープを作り食べたいが、ユージン・サフィーロの件があるから、飯テロなどの前世の知識を使った目立つ事はしたくないのだ。
だからカガチが迎えに来るまで、前世を思い出す前の私のいつもの行動を忠実に再現することにした。
この時間の私は、空腹になれば古井戸から水を汲みろ過や煮沸することなく飲み干していたから、腹ペコな私は同じように古井戸から水を汲み上げたのだが、桶の中は茶色く濁っている。記憶の中では普通に飲んでいたから、それなりに綺麗な水だと思っていたが?と自然と眉間に皺が寄った。
「無人島生活者だって、こんな濁った水飲まないし、よく今まで生きてたな私」
いくら空腹でも、この水はないと愚痴が当然のように溢れるが、愚痴を吐いても腹の足しにもならない。かと言って、濁った水を飲むのには抵抗がある。
まぁ、此処には誰もいないし、少しぐらいならスキルを使ってもokだろう。「泥水を天然水レベルにしますか」と桶に手をかざす。
桶を中心に竜巻ぽっい ものが発生し濁った水を巻き上げた。
この場合は『浄化』の方が使い勝手がいいのだが、ここは敢えて「抽出」で濁った水の不純物を取り除く。
竜巻ぽっいものから土の塊が弾き出され、私はその小石サイズのヘドロっぽい塊をキャッチして、そのままポイと捨てる。錬金術でも使えないと判断したからだ。
仕上げに「分析・解析」で、ピロリ菌なんかの寄生虫がいないか確認して…。問題なく普通の綺麗な水が出来上がっり、桶の中で揺れている。
「流石私」と自画自賛して桶の水を飲み干すと、空腹が少し落ち着いた。
まだ、お茶会は始まったばかりで静かだけど、私の話が出れば…。キャロラインと継母がヒステリックに喚き散らして、私を鞭打つはずだ。考えただけで恐ろしい。
「このままデュモンディー家から、おさらばしたいな」
ポツリと零した本音に苦笑しながら井戸の淵を背もたれにして座り込み、この後のリデアの予定を頭の中で確認する。
継母&キャロラインの命令で、刺繍するんだった。
父は教会に寄付したり、スラムに暮らす人々に仕事を斡旋などの慈善事業に力を入れていて、その関係で週末、教会で開かれるチャリティーバザーに何か出品しないか?とキャロラインに話がきたのだ。キャロラインは不器用じゃないけど面倒くさがりだから、代わりに私が出品用のハンカチに刺繍をする事を命令されたのだ。




