なな
前世と今世を合わせた精神年齢では、人気の貴公子でも15歳では1ミリもドキリともしない。
「女性ってさ、珍しくて綺麗な物に目がないの知ってる?」
まあ、確かに貴婦人は(継母とキャロラインは異常なほど)珍しい宝石や流行りのドレスが好きだが…。それとアニソンと何の関係が?
疑問符が顔に出ていたのだろう、ユージン・サフィーロがニタリと笑う。
「リデアちゃんの歌は絶対に流行る。その歌を僕がお茶会や夜会で披露したらどうなると思う?きっと貴婦人達からは注目の的だよ。だから、僕の専用の侍女になって君の歌を教えてよ」
噂通りコイツ、俗に言うチャラ男だ!
私が愛するアニソンを、女性ウケを狙った道具にしようなど冗談でも頂けない。
「いえいえ、私のような者が畏れ多いです」
必死に首を横に振るが、ユージン・サフィーロは笑顔のままだ。
「リデアちゃんってさ虐められてるでしょ?僕のところに来れば解決するよ」
いやいや、解決しないよ。
確かにユージン・サフィーロの侍女になれば、キャロラインとの婚約期間中限定で虐められることはないかもしれない。が、しかしだ。ユージン・サフィーロは入婿になる。つまり、彼等が結婚すれば、私の環境は今と変わらなくなるだろう。最悪、ユージン・サフィーロの妾と勘違いされ状況は更に悪くなる可能性が高い。
こんな事は前世を思い出す前ですら簡単に想像できる。
流石キャロラインの婚約者だ。使用人に対する思い遣り皆無。
まぁ私は、今日デュモンティー伯爵家を出るのだから、断るの一択しかないが。
「本当に、私のような者には畏れ多いです」
殊勝な物言いとは裏腹に、アニソンは女の子を引っかける道具じゃないぞ!と内心であかんべをする。と、近くからユージン・サフィーロを呼ぶ声と複数人の気配が近づいてきた。
「ユージン様ぁ、どこですの?」
キャロラインの声だと認識した瞬間、ユージン・サフィーロが笑みを深めて、私を見据えた。
「悪い話じゃないだろう。夫人に上手く話しておくから、今のうちに荷物を纏めといてよ」
ヒラヒラと手を振り去って行くユージン・サフィーロ。私を頷かせるよりも、邸を取り仕切る継母に話した方が早いと判断したらしい。
キャロラインと継母がキレるなぁとため息を吐いた直後、私のお腹が「きゅぅぅ」と空腹を主張した。




