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薤露  作者: 空蝉ゆあん
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この世には見えない隠れた存在がいる—— 第一夜 通り路

 あなたは知っているだろうか。この世には目に見えない隠れた存在がいる事を——


 私の名前はユヤと呼んでもらおうか。子供の頃から不思議な体験をする事が多かった。土地の影響もあったのかもしれない。そんな私の本当にあった不思議な物語をあなた方に語っていこう。

 

 第一夜 通り路

 

 私の生まれた場所は元々三組の家族に一つの家を分配されていた。分かれていた三つの家は、昔の名残を残しながら、一つの大きな家に建て替えられたのだ。


 昔の事だが、家の下には井戸がある。そこは水の流れによってある存在を導く場所になっていたのかもしれない。一つに統合させる為に、井戸を埋め立てた。その上に今の家が建っている状態だった。


 周囲には田んぼと集落が集まっている。そして私の家を中心に三角形の形になり、三つの石の墓が隠れるようにして、佇んでいた。戦争時代にはあったものらしく、一つの大きな石を置いている状態で簡易的に備えられた墓。その墓の中心に私の家があった。


 よくあるだろう? 神社の木を切ろうとしたら大怪我をしたとか、それと同じ状態でそのままにされていたのだ。


 一つは私の家の斜め二件前の家のさくらんぼの木の近くに置かれている。その家は何もしないで、そのままの状態で生活していた。そして私の隣の家の裏に置かれている、二つ目の石墓は、祖父母の時代まではそのままにされていたが、ある日、異様に思った隣人の人がどかそうとしていた。


 墓石を退ける準備をし、石に触ったのだろう。次の日、何の前触れもなく40度の高熱を出して苦しんでいた。それでも体調を崩しただけだと思った隣人は、退ける事を考えている様子。


 体調が良くなり、次こそはと退けようとすると、人に声をかけられた。そこから墓石から離れたようだが、用事が出来たのだろう。私は詳しくは聞いていないが、もう少しで事故を起こしかけたらしい。そんな事があり、怖くなった隣人は、退ける事を断念したようだった。


 三つ目の墓石は私の知り合いの畑に置かれている。知り合いのお婆さんがいつも、供物を置いて、きちんと管理をしているようだった。


 私の家はその三つの石に囲まれた場所に聳え立っている。家の下には井戸、そして囲まれた墓石。その条件が揃っていたのだ。


 

 私の祖母はいつも丑三つ時になると、廊下に出ないようにと注意をする。子供だった私はその理由を知らずに、興味本位で覗き込んでいた。


「もうすぐ、皆が通るから邪魔をしてはいけないよ」


 家には鍵がかかっている。誰もこの家には入れないはずだ。それなのに、何故そんな事を言うのかと、首を傾げた。


「さぁさぁ、寝なさい」


 私は祖母の言う事を聞くと、布団の中で目を瞑っていた。それから午前二時が回ると、遠くで物音がする事に気づいた私は、祖母を起こさないように、引き戸を少し開け、様子を見ていた。


 なるべく音を立てないように、息を殺して見ていると、そこには半透明な白い服を着ている老人がいた。台所からゾロゾロと同じような正気がない人達が溢れてくる。


「ひっ」


 声を出してしまった私は、慌てて、布団の中へ戻りながら呼吸が早くなっていくのを感じた。私の家の作りは少しおかしい。裏奇問に水まわりがあり、そしてそこから続く廊下は、いつも誰かの視線があった。


 まだ五歳だった私は、震えながら眠れない夜を過ごしていく。


「ここは霊道なんだよ。だから邪魔してはいけない。自分の存在を消して、ひっそり隠れるんだよ」


 あの時の祖母の言葉が今でも脳裏を焼き付いて離れないのだ。

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