009 - ずぃーれきのまち -(挿絵あり)
009 - ずぃーれきのまち -
「何をしてるんだろうねー」
「私に聞かれても分からないわ」
「もしかして道に迷ったのかな?」
「知らないわよ・・・」
リーシオの街を出てから3日目の夕方、予定通りミアさんはズィーレキの街に到着した。
街道に出る魔物や野盗に襲われて遅れる場合があるそうなので定刻通りというのは運が良いらしい・・・。
ちなみに馬車にはそれなりの腕前を持ったハンターや乗合馬車を運営している商会に雇われている護衛が同行している、この馬車は筋肉モリモリマッチョマンの剣士2人だ。
リーシオの街より低く作られた外壁を潜り抜け、乗合馬車の乗降口で降りたミアさんは魔導灯が光を放ち始めた大通りを歩いている。
段取りでは適当な宿に入って今後の予定を話し合う事になっているのに何をしているのかな?。
「馬車を降りてもう1刻半になるわ」
仕事が終わって帰宅する人々で賑わう通りの様子を眺めながらロリーナが呟いた。
「この街は夜遅く出歩いても大丈夫なの?」
「大丈夫なわけないじゃない、酔っ払いに絡まれたり物盗りに襲われたりするわ」
結局ミアさんは道に迷っていたようだ、涙目になって屋台のおばさんに道を教えて貰っている。
「武器屋さんかな?・・・中に入ったよ」
「まだ渡したお金が残っているようだから防具でも買うのかしら」
僕の言葉にロリーナが答える、昨日ミアさんは屋台で結構な量を食べていたけれどまだ半分も使っていない筈だ。
「そういえば酔っ払い親父に絡まれて手に持っていた肉串を落として泣いていたわね」
ロリーナも昨日のミアさんの豪快な買い食いを思い出しているようだ。
「革の眼帯を見てる・・・一番安いやつを手に取った」
「傷が気になるのかもしれないわね」
「左の目玉だけ残して治癒するなんて器用な事は出来ないよ」
僕が治癒しなかったミアさんの左目・・・瞼から左耳にかけて毒のせいで火傷みたいに赤黒く爛れている状態だ、ミアさんも年頃の女の子だから他人の視線が気になるのかも?。
「眼帯と革手袋を買うみたいだね、防具は買わないのかな?」
「お金が足りないんじゃないの?」
「・・・ミアさんも色々と大変そうだね」
「・・・」
「次はハンターギルドに入るようね」
道沿いに出ている屋台で肉串を2本買い袋に詰めて貰った後ミアさんは大きな建物に入った、ロリーナによればハンターギルドらしい。
中はまるで異世界小説に出て来るような・・・いかにもギルドっていう雰囲気だ、板張りの床、依頼を貼り出す掲示板、受付には綺麗なお姉さんが座ってハンター達の対応をしている、隣には酒場があるのかな?。
今は仕事帰りのハンター達で賑わっていて、受付が空くのを待っているのかミアさんは掲示板に張り出されている1枚の依頼を眺めていた、凄く真剣に見てるようだけど・・・。
「え・・・」
ミアさんの視線の先には僕の似顔絵が貼ってあった・・・。
「ダークエルフを探しています、外見は人間の13歳程度、紅目銀髪、両手首には魔封じの枷、下腹部に契約紋・・・有力な情報には謝礼として金貨50枚・・・」
「また裏切るかもしれないわね」
ごごごごご・・・
僕の横でロリーナが静かに怒ってる!。
「・・・今度おかしな事をしたら流石にもう一緒に仕事はできないかなぁ」
僕がそう言った時、受付に並んでいるハンターの人達がミアさんに注目し始めた、視界をミアさんに移すと平手で自分の頬を何度も叩いてる!。
だっ!
「あ、ギルドから出て行っちゃった」
「でも報酬の金貨に釣られて心が揺れたのは間違い無いわ、早いうちに別れた方がいいかもしれないわね」
「・・・」
・・・
「ミアさん今夜は一度お家に帰ろうか、妹さんの事が心配ですよね」
「あ、はい、お願いします」
僕とロリーナ、それから左目に眼帯を着けたミアさんは大通りから少し外れた宿の部屋で話をしている。
ミアさんによるとかなり安価な宿のようだ、周りの治安も良くないからこの部屋に「箱」を一つ仮置きしてミアさんはリーシオの実家へ、僕達はアイテムボックスの中で一晩過ごす事にした。
「明日の朝迎えに行くから身体を休めておきなさい、お昼には魔導列車に乗って出発するわよ」
ロリーナがミアさんに話しかける、先ほどの事があるから言葉の端々に棘があって怖い。
「・・・はい」
「じゃぁ送るね」
しゅっ!
僕はミアさんを実家のお部屋に隠してある「箱」に向けて送り出した、ギルドで見ていた僕の似顔絵についてはロリーナと相談して触れない事にしている。
改めて僕とロリーナだけになった部屋の中を見渡す・・・シミだらけの薄い壁、カビ臭くて小汚いベッド、今にも壊れそうな入口の鍵、外では喧嘩をしているのか怒鳴り声が聞こえる・・・こんな場所では絶対に寝たくない!。
「酷い部屋ね、いくら安くてもリーナはこんなところに泊まっちゃダメよ、どうぞ襲って下さいと言っているようなものだわ」
「言われなくても分かってるよ、外に「箱」を置くからちょっと待って」
がたがたっ・・・
僕は建て付けの悪い窓を少し開けて新しく作った「箱」を部屋の外・・・路地に隠した、この街に着くまでどこにも「箱」を隠し置いていないからこの辺りでセーブポイント的なものを作っておきたかったのだ。
「・・・この街に戻る事は無いと思うけどね」
街並みは歴史がありそうな建物や石畳の道があって綺麗なのだけど、全体的に殺伐としていて治安が悪そうだ。
「リーナ、早くこんな汚い部屋出ましょうよ」
「そうだね」
僕はロリーナをアイテムボックスに入れた後、もう一度お部屋を見渡してボックスの中に入った。
「この街には魔導列車の分岐駅があるの、南の路線は帝都ジーヴォイ、東西に走る路線を西に向かうとヴェンザ帝国に繋がっているわ」
「東は?」
「東隣のウォシュレ共和国経由で大陸東端まで分岐しながら路線が続いているわね」
僕とロリーナはアイテムボックスの中で明日乗り込む魔導列車について話をしている。
昔は馬車で長い時間をかけて人や物を輸送していたらしい、でも魔導列車の路線網が整備されたおかげで物流や経済が飛躍的に発展したのだとか。
「大陸の地図は無いの?」
「役所で売っているけれど高いわ、それに購入する時は身分や素性を詳しく調べられるわね」
どうやら地図は軍事的に重要な資料という扱いらしい。
「ヴェンザ帝国に着いたら生活の基盤を整えたいな、拠点になるお家を買ってしばらくそこで暮らそう・・・ネリーザの居るアリア王国は遠いの?」
「ヴェンザ帝国の北にあるわ、この大陸一の国力を誇る大国ね、行くのなら間に海があるから海路か・・・一度メルト帝国に戻って陸路を北へ向かう方法があるわ」
「メルト帝国には良い印象が無いから海路かなぁ」
「北の辺境を治める上級貴族、スキナンジャー家の評判が良くないだけで普通の国よ、今の皇帝陛下も温厚で人畜無害と言われているし国の南側は海に面していてとても綺麗な場所だわ」
「皇帝はスキナンジャー家を注意しないの?」
「魔物の素材を一手に握っていて権力もあるからあまり強く言えないみたいね」
「そうなんだ・・・」
ロリーナと話をしながら僕は出したままにしていた画面を操作してミアさんの様子を映し出した。
「・・・妹さんとお母さんに肉串をあげてるね」
ミアさんは正直まだ信用できない、でも悪い人じゃないし僕達の事情をある程度知っていてこちらが弱みを握っているから便利に利用できる、そんな都合の良い人材は今のところミアさんしかいない。
「お人好しで善良だけどお金が絡むと裏切る可能性があるわ、ヴェンザ帝国に入ったら手を切ったほうがいいわよ」
「でも僕達は目立つから当面は表に立って動いて貰いたいんだよねー、ここに来るまで他のエルフの人を見た事が無いし」
「当然よ、まともなエルフは人間なんかと関わらずに森に引きこもって暮らしているわ」
つまりロリーナはまともじゃないのか・・・。
ふとロリーナを見ると・・・更に透け感が減って人間と変わらないように見えた。
「ロリーナ、透けなくなってきてるしもうすぐ実体化できるんじゃない?」
「そうね・・・」
すっ・・・
「あ・・・」
ロリーナが僕の腕に触れようとしたけれどすり抜けた、まだ実体化は無理っぽい。
「待って、頑張ればいけそうだわ・・・ふんっ!・・・きぇぇぇぇっ!」
いつもは無表情で冷静なロリーナが奇声を発した。
さわさわ・・・
「どっ・・・どうかしら?・・・」
僕の腕にロリーナの手が触れる、実体化成功だ。
ぷるぷる・・・
「触れた感触は伝わったけど本当に大丈夫?、震えてるし顔が紫色になってるよ!」
「・・・ち・・・長時間は・・・まだ無理ね・・・」
ぷるぷるぷるぷる・・・
「ロリーナもうやめて!、死にそうになってるよ!」
「とても・・・疲れたわ」
燃え尽きたみたいになっているロリーナが呟いた、実体化はまだ先の話になりそうだ・・・。
・・・
「わぁ・・・」
「鍵が壊れてるし誰かが入った形跡があるわね」
翌朝、宿の部屋に戻ると入り口の鍵が壊されていた。
「ここで寝てたらミアさん襲われてたよね」
「そうね」
僕は蹴破られて壊れた鍵を見なかった事にしてミアさんを迎えに行く事にした。
アイテムボックス(0)(駄女神管理)
金貨:沢山
食料:沢山
アイテムボックス(1)
リーナが作った部屋:1
中二病くさい剣:1
下着:2組
ミアさんの家から貰ったソファ:1
アイテムボックス(2)
リーナのう⚪︎こ:少量
ゴミ:少量
アイテムボックス「箱」
1:メルト帝国、大森林(不法投棄用)
2:ミアさんに貸出し
3:メルト帝国、大森林の野営広場
4:メルト帝国リーシオの街、ミアさんの部屋
5:メルト帝国ズィーレキの街、路地裏
(仮置):メルト帝国ズィーレキの街、宿の部屋
ミアさん
ミアさん(眼帯)
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