003 - りーなとろりーな -
003 - りーなとろりーな -
「・・・それではリーナさん、今から魂を肉体に入れますがよろしいでしょうか?」
僕は身体の半分以上を包帯で覆われているロリーナを見た。
汚れていた身体は駄女神が綺麗にしてくれた、毒の侵食で肩のあたりで不揃いに切れていた銀髪も短く切り揃えられている。
下腹部にはエロ漫画によくあるような淫紋・・・いや契約紋が刻まれていた、これは刻んだ術者本人でなければ消せないらしい。
消せないのは単にこいつの能力不足じゃないのか?、そう思った僕の心を読んだのか駄女神が涙目になっている。
不本意だけどこれ以上の追求はやめておこう・・・。
両手首には華奢な身体に不似合いな金属の枷が嵌っていた、アクセサリーにしては無骨過ぎる。
「ロリーナ、この手首のやつは何?」
「あ、それは商会長(クソ野郎)が私の力を封じる為に嵌めた封印、これのせいで私は魔力が殆ど使えなくなってるわ」
ロリーナの話だと魔法が使える完全な状態なら高難易度の討伐をこなして数年で借金を返せたらしい、だから長く借金漬けにしておく為に魔法を封じたのだとか。
「外せないのかな?」
僕は駄女神に聞いた。
「これも嵌めた魔道具師本人じゃないと外せないですねー」
駄女神が鼻くそをほじりながら他人事のように言う・・・こいつ。
「魔法が使えないじゃん!」
異世界に行くのに魔法が使えないなんて酷いじゃないか・・・。
「使えない事はないわ、私の魔力量は膨大だから生活魔法や小規模の攻撃魔法なら普通に使えたし」
ロリーナが僕に答える。
「向こうは平和だって言ってたし、大丈夫かな・・・」
駄女神が目を逸らした、何で他の2人まで目を逸らすんだよ!。
「それではリーナさんとロリーナさんは毒竜と遭遇した森の少し離れた場所へ、ネリーザさんは毒を盛られた夜会会場から運び出されて治療を受けている救護室に送り届けますね」
「うん、お願い・・・オシーリアさんも新米なのによく頑張ってくれたよ、駄女神なんて言ってごめんね」
「リーナさんっ・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」
一応お世話になったから最後に何かお礼を言っておこうと適当に喋った僕の言葉に感激したのか駄女神が泣き出した。
「・・・では皆さん、私の世界で幸せな人生を送ってくださいねっ」
ぱぁっ!
・・・
「・・・リーナ」
・・・
どすっ!
「ごふぅ!・・・げほっ!えふっ!」
「あ、起きた」
お腹に強い衝撃を受けて目が覚めた、目の前には宙に浮いたロリーナが居る。
周りを見渡すと薄暗くて深そうな森だ、僕は土の上に寝ていてお腹の横には大きな石が転がっていた。
「声をかけても起きないからお腹の上に石を落としたわ、痛かったかしら・・・」
ロリーナが心配そうな顔で僕に話しかける、確かに痛かったけれどこのまま森の中で寝ているのも不用心だろう・・・何故なら今の僕は全裸に包帯を巻いた状態で服を着ていない!。
「大丈夫だよ、起こしてくれてありがとう・・・ロリーナは身体が透けてるけど大丈夫なの?」
「まだ精霊になったばかりで実体化は難しそうね・・・でも精霊の長老達は人間と殆ど見分けが付かないから私もそのうち出来るようになると思うわ」
僕は改めて自分の身体を確認する・・・薄い褐色の肌、銀髪は短く切り揃えられていて身体に巻かれた包帯からは所々血が滲んでいる。
包帯の上から指で押してみると鈍い痛み・・・でも運動した翌日の筋肉痛みたいな感じかな、我慢できない程じゃない。
「リーナ、後ろを見て!」
ロリーナの声に反応して振り向くとそこには今にも「黙れ小僧」って喋りそうな狼がいた!、
ぐるるるる・・・
「ひっ・・・」
「大丈夫よ、魔法を試してみたいから動かないで・・・」
ぱあっ!
どさっ
ころころっ・・・
ぷしゃぁぁ!
ロリーナが手を翳すと光り輝く魔法陣が現れて狼の首が落ちた、血も凄い勢いで吹き出してるよ!。
「ふふっ・・・枷から解放されたおかげで強力な魔法が使えるようになったわ、私にふざけた事をしてくれた毒竜もまだ近くに居る筈だから殺したいわね」
「ちょっと待ってよ!」
僕は物騒な事を言い出したロリーナを慌てて止めた、不満そうな顔をしているけど落ち着いてくれたようだ。
「こいつは魔狼と言って毛皮や牙が高く売れるわ、駄女神がくれたアイテムボックス?に入れておいてハンターギルドに買い取って貰いましょう」
狼の死体を確認しながらロリーナが僕に説明してくれている。
「どうやって使うのかな?」
あの駄女神はスキルをくれただけで何の説明も無かった、「頭の中に使い方を入れておいたから大丈夫よね」などと全然大丈夫じゃなさそうな事を言っていたのだけど・・・。
「あ、なんとなくどうすればいいか分かるわ」
しゅっ・・・
ロリーナがそう呟いて手を翳すと目の前に居た狼さんの首と身体が消えた。
「出し入れはこうして・・・」
しゅぱっ!・・・しゅっ!・・・
「収納すると泥や汚れが落ちるみたいね、便利だわ・・・取り出す時には血や毛皮を簡単に分別できそう」
繰り返し狼さんの死体を出し入れするロリーナを眺めながら僕も足元に転がっている大きな石を見た。
しゅっ・・・
「・・・これでアイテムボックスに入ったのかな」
頭の中にあるリストに「石、数量1」が追加された事を感じる・・・他には駄女神がくれたのか「金貨」や「食料」が沢山入っているようだ・・・でも何で服が無いんだよ!。
「ちょっと待って!、何これ?」
死体で遊んでいたロリーナが思わず叫んでしまった僕の声に驚いて近寄って来た。
「どうしたの?」
「頭の中にスキルの内容が表示されてる!」
「そうね、自分の持っているスキルは頭の中に表示されるわ、貴族は魔道具で鑑定して国に申告するみたいだけど平民はしょぼいスキルが殆どだし良いのを持っていたら秘密にして他人に教えない人も多いわよ」
この世界の人間はそんな感じなのか・・・駄女神もそれくらい教えておいて欲しかった。
「魔法が上手(神)、アイテムボックス(神)、治癒(神)、美しい女神オシーリアの愛し子、ってあるんだけど・・・」
愛し子の件は執拗に勧めて来るのを断っていたら駄女神が泣き出したので仕方なく付けて貰ったのだ。
「何それ?・・・でも「魔法が上手」っていうのは私の身体を使ってるから元のスキルが引き継がれたようね、でも私のは(上級)の筈だけど」
「何か怖いな・・・」
「駄女神を呼び出して聞いてみる?」
「・・・」
あの駄女神は頭の中で呼べば天界から降りて来ると言っていた・・・でも頻繁に呼び出すのもどうかと思ったのでスキルの件は気にしない事にした。
「治癒(神)の(神)が何なのか分からないのだけど、もしかしてその包帯の下の傷を治せるんじゃないの?」
ロリーナにそう言われて治癒を使ってみた、でも頭の中に「過去に神が干渉した傷は治癒できません」と表示された・・・駄女神が丸1日かけてこの身体を蘇生したから?。
「駄女神が途中まで修復した傷だから治癒できないみたいだ」
「そうなの?、まぁ時間が経てば治るって言ってたから諦めるしかないわね」
僕達の持っているスキルをもう少し試したいけど、ここは魔物が沢山居る森の中だ。
「どこか落ち着いてスキルを試す場所は無いかな?」
「ここから数刻ほど街に向かって歩いた所にハンター達が勝手に使ってる休憩小屋があったと思うわ」
ロリーナが少し考えてそう言った、でも彼女は毒竜に襲われて死んだ事にしたいからあまり人に会いたく無い。
「そこに他のハンターが居たらスキルを試せないよね」
「じゃぁ私が拠点にしていた街には戻らないで隣町から魔導列車に乗って国境を越えましょうよ」
列車があるんだ・・・
「あ、ちょっと待って・・・アイテムボックスの中に人も入れられるみたいだ、自分も入る事ができるよって頭の中に書いてある」
「そんなの聞いた事が無いわ!、そうでなくても希少な収納系のスキル持ちなのに生き物が入れられるなんて・・・」
アイテムボックス(神)はどうやら特別なスキルのようだ、ロリーナが目を輝かせて興奮している。
「ちょっと試してみるね、見てて・・・」
しゅっ・・・
目の前にあった森の風景が切り替わって何も無い真っ白な空間になった、どこまであるのかも分からないし遠くが霞んで見えない広さだ、これがアイテムボックスの中?・・・。
「中に入れる事は分かったし、ロリーナが心配してるだろうから検証は後にして一旦出よう」
しゅたっ!
「今ボックスの中に入ったけど、どうだった?」
僕はアイテムボックスから出てロリーナに尋ねた。
「私にはリーナが突然消えたように見えたわね、しばらくして何も無い所から現れたわ」
もしかして僕はあの駄女神からとんでもないスキルを貰ったのかもしれない・・・。
「先に全裸なのをなんとかしたい!」
「そうね・・・拠点にしていた街に戻れば私の荷物が宿に置いてあるのだけど」
僕とロリーナはアイテムボックス内にある白い空間でこれからの事を話し合っている、試しにロリーナをアイテムボックスに収納したら出来てしまったのだ。
「でも商人に見つかる可能性があるよね、できるだけ街から遠くに逃げた方がいいと思う」
「私が毒竜に襲われた時はハンターが2人一緒に居たの、彼等が生きて戻っていれば私は死んだ事になってる可能性が高いわね」
「死人が歩いてたら大騒ぎになりそう・・・それも上手く誤魔化さなきゃだけど全裸なのは無防備過ぎて落ち着かないよ」
「私はまだ実体化出来ないから隣街に行ってもお店で買うのは無理ね、その辺に落ちている葉っぱを腰に付けてリーナが・・・」
他人事だと思って適当な事をロリーナが言う。
「やだよ!」
僕は床?に座り、ロリーナは目の前でふよふよと浮かんでいる、アイテムボックスの中に居る限りは安全だからスキルも色々と試したいし、2人ともしばらくここで休む事にした。
・・・
・・・
あれから1日経った、アイテムボックスのスキルを色々と試した結果、何も無かった空間はいくつかの部屋に仕切られている、家具を買ってここに置いたら快適に過ごせそうだ。
全裸でふよふよ浮いていたロリーナは服を着ている、どうやら外見を自由に変えられるようになったらしい・・・さすが精霊、僕はまだ全裸なのに!。
「僕達は双子でロリーナがお姉ちゃん、僕は妹でいい?」
今はロリーナと同じ顔の僕達の関係を他人にどう説明するか話し合っている。
「私は妹がいいわ」
まだ若干透けているロリーナは妹がいいと主張する、何でだよ!。
「えぇ・・・僕より100歳以上年上なのに?」
「私は妹がいいわ、リーナお姉ちゃん」
ごごごごご・・・
ロリーナは感情をあまり表に出さないし無表情だから真顔で見つめられると怖い・・・。
「分かったよ、僕がお姉ちゃんだ・・・」
「ありがとう、私お姉ちゃんが欲しかったの」
読んでいただきありがとうございます。
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