021 - ありあおうこく! -
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「「箱」を奪われたら困るわ」
「盗られても僕の意思で消せるし、また出してミアさんに渡せば良くない?」
「でも「箱」がミアの近くに無いと危険が迫った時に助けられないわよ」
「・・・」
ミアさん達がアリア王国に旅立つ前日、僕とロリーナはアイテムボックスの中で話をしている。
ミアさんに持たせている「箱」が王国に奪われないか心配だとロリーナが言い出したのだ、確かに「箱」があるおかげでミアさんの様子が確認できるし危ない時は助ける事ができていた。
ネリーザの事は信用してるけれど国王や貴族達が信用できるかというと話は別だ、用心するに越した事はない。
その日のお昼にミアさんをお部屋に呼び出す、昨日からワクワクが止まらないようで持って行く荷物を何度も整理していた。
「ミアさん、僕が預けてる「箱」を無くさない自信あります?」
ミアさんが目を逸らした・・・自信が無いようだ。
「あの箱があるから僕達はミアさんの危険を察知できるし助けに行く事ができます、でも知らない土地・・・アリア王国で落としたり盗まれたりすると助けられません」
事の重大さを認識したのかミアさんの表情が曇る。
「実は3回くらいお部屋に忘れて2回お店に置き忘れた事が・・・でも身体が腐り落ちたら怖いから全力疾走して取りに戻ったよ!」
「ダメじゃん!」
僕達は常にミアさんを見張っている訳ではないし、そんなに暇でもない、知らない間にミアさんは何度も「箱」を置き忘れていたようだ。
「ミアさんごめんなさい、「箱」を身体から離すと治癒が無効になるというのは嘘です!」
「え・・・そんなぁ、私3回くらい死を覚悟したんだよ・・・」
僕の・・・正確にはロリーナの言った嘘はミアさんの精神をゴリゴリと削っていたようだ。
「本当にごめんなさい、あの嘘は出会って間もない頃だったのでミアさんが裏切るかもって思ったから・・・」
「そこで私は考えたわ、ミアが「箱」を無くさない方法!」
ロリーナが薄い胸を張って紙袋を取り出した、
「これは?」
「開けてみなさい」
がさがさ・・・
「愛玩動物用の首輪?、迷子になると困るから中に名前や住所を書いたカードが入るやつだよね」
「そうよ、これには魔法陣が刻まれていて登録した飼い主にしか外せないようになっているわ」
首輪の中にはカードのかわりに極限まで小さくして「箱」を入れる予定だ。
フルフル・・・
ミアさんが涙目になった、状況を察したようだ。
「さぁ付けましょうねー」
ミアさんから首輪を奪ってロリーナが迫る。
「い・・・嫌ぁ・・・」
「アリア王国で迷子になってもいいの?、「箱」が無いと私達助けに行けないわよ」
じたばた・・・
「ほら大人しくしなさい!」
「ぐすっ・・・えぐっ・・・」
「似合ってるじゃない、王国から帰ったら外してあげるわ」
ロリーナに首輪をつけられたミアさんが泣いている、可哀想だけど迷子になるよりはマシだし、ミアさんの不幸体質を考えたら死体になって川に浮いていたなんて事が普通に想像できるから心配なのだ。
・・・
「ミア、その首輪は愛玩動物用のだよな・・・お前そんな趣味があったのか?」
フェニーナさんがミアさんに話しかける。
「あぅ・・・違うの・・・」
「まぁいいか、人の嗜好にあたし達がとやかく言う権利もねぇだろうし・・・」
「うりゅ・・・」
翌朝「マリアンヌの食堂」の1階に集まったミアさんと愉快な3人組、それからアリア王国の2人は僕やロリーナ、ティアさんに見送られてヴロックの港から船に乗って旅立った。
アリア王国の使者・・・ヂャガリコさんとシーオさんは護衛だと紹介した3人の同行を許可してくれた。
「金を出すのはうちの陛下だから3人くらい増えたってどうって事ないぞ、気にするな」
そう笑いながら話すヂャガリコさん、この人も結構良い性格をしてるな・・・。
船に空席があるか心配だったけれど10日かけてアリア王国の港に向かう大きな魔導高速船だから満席になる事は滅多に無いらしい。
僕とロリーナは船が出た頃を見計らってアイテムボックスの中からミアさんの様子を覗き見る、出航してすぐ船内で売っている肉串を片手に船の屋上デッキに出て景色を眺めていた。
「子供みたいにはしゃいでるわ、船に乗るのが嬉しいようね」
ロリーナが呆れたように呟く、ミアさんには旅費とは別に食費やお小遣いに銀貨5枚を渡してある、もちろん「箱」を運ぶ報酬の金貨1枚は別払いだ。
「あ、肉串を鳥に取られたよ!」
大きな鳥に肉串を奪われて泣き出すミアさんと新しく肉串を買って来て慰めるユーリさん・・・不幸を呼び寄せる体質は相変わらずのようだ。
「あの船沈まないよね・・・」
思わず口に出てしまった僕の言葉にロリーナが反応する。
「そ・・・それはないと思うわ・・・」
「沈みかけても船ごとアイテムボックスに収納してヴロックの港に漂着した事に出来るかも?」
「リーナのスキルは本当にとんでもないわね・・・」
初日の航海は順調だ、夕陽を見ながら船内のレストランで4人が仲良く食事をしているのを見て僕まで楽しくなってしまった、のんびりした船旅も案外良いかもしれないな・・・。
「ねぇロリーナ、生活が落ち着いたら一緒に船で旅をしようか?」
「そうね、今まで私は殆ど陸路で移動していたから・・・目的地を決めない船旅も楽しいかもしれないわ」
「ロリーナ!、あれは何!」
「知らないわよ!」
3日目までの航海はとても平穏だった・・・2日目には4人が泊まっている船室と屋上デッキに「箱」を仮置きして船上から見える景色や星空を楽しんでいた。
でも4日目の今、屋上デッキから見える船首は巨大なタコかイカかよく分からない吸盤の付いた足?に絡まれている!。
海賊に対抗する為に乗っている護衛の人達がクロスボウや銃のような武器で応戦しているけど全然効いてない。
幸い船が大きい事もあって怪物を引き摺るように航行しているし達乗客はそれぞれの客室に避難しているようだ。
「あの武装じゃ勝てる訳ないわ、船に乗り込むわよ!」
「行ってどうするの?」
「私が魔法で切り刻むかリーナがあの怪物を丸ごと収納するしかないわ」
「それなら乗り込んですぐ収納して帰れば他の人達に気付かれないかな・・・」
・・・
僕とロリーナが屋上デッキに仮置きした「箱」に移動すると海面から吸盤の付いた足がはっきりと見えた。
「あれはタコっぽいなぁ・・・」
「きしゃぁぁぁ!」
「収納っ!」
「・・・」
「お仕事終わりっ、さてロリーナ帰ろうか」
「リーナ・・・あなた本当に凄いわ・・・」
僕は甲板で戦っていた護衛の人達の「消えたぞ!」「どこに行った!」「まだ近くに居るだろ!」などと言っている叫び声を背にロリーナと一緒にアイテムボックスの中に戻った。
客室に顔を出すと4人は何が起きていたのか知らされてなくて、大きく揺れて危険だから客室から出ないようにと連絡があったらしい、ちなみにミアさんは揺れに酔ったのか備え付けのトイレで吐いていた。
その後はミアさんが食べ過ぎてお腹を壊したり、屋上デッキから身体を乗り出して海に落ちそうになるなど些細なトラブルが起きたものの出港から6日、船は定刻より若干遅れてアリア王国領内の島に到着した。
この島で船の動力源となる魔石や水、食料などを補給して3日後にはいよいよ王都アリアの港に入港する予定だ。
補給の為に立ち寄ったアイシャと呼ばれている島の港は貴族や裕福な平民向けのリゾート地のようで、宿や商店、娯楽施設などが並ぶ賑やかな場所だ。
ミアさんが木陰に隠れたので僕はアイテムボックスから外に出る、この島はヴロックの街より暖かく少し乾燥しているようだ、海からの風がとても気持ちいい。
「この辺でいいかな・・・」
僕は新しい「箱」を出して海岸近くの木陰に隠した。
「ミアさんありがとう、あの2人に見つかるとまずいから僕はアイテムボックスに戻ります、これで美味しい物でも食べて下さい」
ミアさんと愉快な貴族令嬢3人組に銀貨を1枚ずつ渡す。
船の補給時間はおよそ半日、買い物をする為に船を降りるミアさん達にお願いして人の少ない木陰を見つけて貰ったのだ。
ここは有料だけど海岸で泳ぐ事も出来るようなので僕の傷が治ったら遊びに来ようと思っている。
「ミアさん、船の出航時間には遅れないでくださいね」
「あたし達が居るから大丈夫だぜ!、それから銀貨ありがとうな!」
フェニーナさんが貧相な胸を張って言った。
僕がアイテムボックスに戻った後、4人は高級そうなレストランで海鮮料理を食べてヤシっぽい木が並ぶ通りを散歩していた。
出港に遅れず無事に船に戻って一安心・・・かと思ったら乗る船を間違えて泣いている4人を見て僕は頭を抱えた。
「この世界の客船って出航の時に乗客の確認しないのかなぁ・・・」
4人を元の船に送り届けた後、僕の呟きにロリーナが答える。
「リーナが住んでたところはそんな面倒な事してたの?、こっちは乗船券を適当に確認するだけで出発に遅れた人や乗り間違いは自己責任よ」
ヴロックの街を出航して9日目、いよいよアリア王国の王都アリアの港が見えてきた。
僕はアイテムボックスの中でロリーナと一緒に屋上デッキの「箱」から見える景色を眺めていたのだけど思っていたより凄い!。
趣のある煉瓦造りの建物が立ち並び遠くにはゴシック建築風の教会が見える、大型船も停泊できる港は帆船や魔導船でいっぱいだ。
「あれが王城?」
「そうね、私もアリアには行った事があるのだけど、あの城は何度見ても壮観ね」
空に浮かぶ大きな岩、その上に聳え建つ壮大なゴシック様式っぽいお城・・・。
「ねぇロリーナ、あの岩ってどうやって浮かせてるの?」
「自然に出来たもので大昔から浮いていたらしいわよ、城は後から国力を誇示する為に数百年前の王様が建てたと言われているわね」
「落ちないのかな?」
「昔敵国が攻めて来た時にどうしても落とせなかったという記録が残っているわ、近年研究が進んで地面の奥深くに浮遊能力のある魔石が大量に埋まっているようね、浮かんでいる岩も巨大な浮遊魔石よ」
「へー、雷が落ちても大丈夫なのかなぁ・・・」
「今まで問題無かったのだから大丈夫よ」
「・・・」
ロリーナと話しているうちに船がいよいよ入港するようだ。
既に日が沈んでいて街中に魔導灯が灯り始めている、歴史がありそうな煉瓦や石造りの建物なのにLED並みに明るい魔導灯のせいで近未来都市っぽくも見える・・・。
「あのお城にネリーザが住んでるのかぁ・・・」
「ネリーザはああ見えて将来の王子妃・・・お金も権力もあるわ、今から「お礼」が楽しみね」
「・・・」
アイテムボックス(0)(駄女神管理)
金貨:沢山
食料:沢山
アイテムボックス(1)
リーナが作った部屋:1
中二病くさい剣:1
下着:2組
ミアさんの家から貰ったソファ:1
斥候服(ロリーナとネリーザ用):2
アイテムボックス(2)
リーナのう⚪︎こ:少量
ゴミ:少量
アイテムボックス(3)
巨大なタコ?のような生き物:1
アイテムボックス「箱」
1:メルト帝国、大森林(不法投棄用)
2:ミアさんに貸出し
3:メルト帝国、大森林の野営広場
4:メルト帝国リーシオの街、ミアさんの部屋
5:メルト帝国ズィーレキの街、路地裏
6:メルト帝国シリィの街、駅の近くの路地
7:ヴェンザ帝国ヴロックの街 拠点「マリアンヌの食堂」3階
8:ヴェンザ帝国ヴロックの街 お婆さんの部屋
9:ヴェンザ帝国エースの街 路地裏
10:ヴェンザ帝国ヴィエンの村 宿泊所裏口
11:ヴェンザ帝国 エースの森
12:ヴェンザ帝国カプレの街 路地裏
13:アリア王国アイシャ島 港近くの木陰
(仮置き)魔導高速船、屋上デッキ:1
(仮置き)魔導高速船、客室:1
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