002 - ぷりざさま -
002 - ぷりざさま -
・・・
面倒臭そうな態度で駄女神が謎モニターを操作している、泣いていて話にならない金髪美少女について調べているのだ・・・っていうか僕が調べろって脅した。
どうやらこの金髪美少女は相当不幸な人生を送っていたようだ。
上級貴族家の当主とメイドとの間に生まれた彼女は本妻や姉弟から憎まれ酷い扱いを受けていた、様々な仕打ちに耐えながらも健気に生きていたある日、街で偶然出会った隣国の第二王子と恋に落ちたのだ。
家族からの嫌がらせや隣国の令嬢達による妨害工作を2人の愛で乗り越えて3日前にようやく婚約を交わしたのだけど、食事に毒を盛られて今に至る・・・。
「これから「ざまぁ」するところだったのかぁ、それは可哀想過ぎる」
「あぅ・・・私死にたくない、これからダニエル様と幸せに暮らすの・・・お願い助けて」
ぽろぽろ・・・
「もういいや・・・ねぇ駄女神さん、僕はこのまま死んじゃってもいいからこの人を生き返らせてくれないかな?」
「駄女神って・・・リーナさんひどい!」
駄女神にそう提案すると金髪美少女が期待に満ちた目で僕を見つめる。
「僕はあまり生に対する執着は無いから幸せを掴めそうな女の子の方を助けてあげてよ」
「それはダメです!」
即答だった。
「わぁぁぁん!、ダニエル様ぁ!」
駄女神の非情な言葉を聞いて美少女が泣き崩れる。
「何でダメなの?」
「貴方の魂を消すと「あちら」の世界を管理している担当神にバレます、私の前任者が長い間交渉してようやく向こうの魂を召喚する許可が出たのに対象を間違えましたなんて言えないじゃないですかぁ」
こいつ自分の保身しか考えてないクズだ!。
「でもこの娘が可哀想だよ!」
こくこく!
金髪美少女が激しく頷いてる、この令嬢もいい性格してるな。
ぱちぱち・・・
「素晴らしい!、さすがは私が監視対象にしていた清らかな心を持つ人間だ、自分が消滅する事も顧みず他人の幸せを望むとは・・・今私は感動に打ち震えているっ!」
拍手をしながらまた変な奴が出てきたぞ!、神っぽい衣装を着た筋肉モリモリマッチョな男が僕達の目の前に現れた・・・笑顔だけど目が笑ってない。
「ひっ・・・プリザ様どうしてここに!」
「ふふっ・・・彼女は私が目を付けていた「愛し子」でね、魂の存在が私の世界から急に消えたから探していたのだよ」
「いっ・・・愛し子ぉ!」
涙目で震え始めた駄女神に笑顔でゆっくりと近付くマッチョ男、情報量が多過ぎて理解が追いつかないよ・・・。
がしっ!
モリモリ男が駄女神の顔面を鷲掴みして話を続けた。
「プリジェールの奴がどうしてもと頼むから特別に召喚の許可を出したのに後任の小娘が別の人間・・・しかも私の大切な愛し子を死なせるとは一体何の冗談だい?、もしかしてこの私に喧嘩を売っているのかな?」
みしっ・・・
「あぅ・・・プリザ様やめて下さいお顔が痛いですぅ!」
「本来なら即刻「上」に報告して貴様の神としての資格を剥奪したいところなのだが・・・」
「いやぁ・・・許して・・・」
「許しを乞うのは私ではなく愛し子の方にであろう!」
ごごごごご・・・
「リーナしゃん・・・ごべんなざい・・・許してくらひゃい・・・」
駄女神が泣きながら僕に土下座した。
「あの金髪の子を生き返らせてくれるなら許してもいいけど」
「ひゃい・・・生き返らせますのでどうか・・・」
「やったね・・・えーと」
「ネリーザです・・・」
「ネリーザさん、婚約者の人と幸せになってね」
「はいっ!、本当にありがとうございますっ!」
「エルフの人は・・・」
「私の名前はロリーナよ、刻印を受けた身体は無い方が借金を踏み倒せて都合がいいのでこのまま精霊になろうかと・・・よければ私の肉体を使って貰えると・・・」
「いらないです!」
そんな借金まみれの身体を貰ってどうしろというのか!。
「心配しないで下さいリーナさん、刻印は消せないですが契約は私が無効化しておきますので・・・」
そう言いながら謎モニターを操作する駄女神。
ぽちぽちっ・・・
「あ、これが今の彼女の状態ですね・・・毒竜のブレスを浴びて全身が腐りかけてますけどまだ完全に死んでないので大丈夫ですっ!」
「いや、全然大丈夫に見えないよ!」
・・・
「わぁ・・・本当に苦労したんだねー」
「はい、でもダニエル様は私に優しくて、これから時間をかけて私の元実家を潰すって・・・」
「私は長老達の反対を押し切ってダークエルフの森を出たの・・・でも10年くらい経った時に悪質な詐欺に遭って・・・」
「え、ロリーナさん今幾つなの?、見た感じ13歳くらいだけど」
「今年で確か・・・138歳になるわ」
「「えー!」」
今僕達はプリザ様の出してくれた椅子とテーブルを使って話をしている、目の前には美味しいお茶とお菓子もあってちょっとしたお茶会のような雰囲気。
・・・全裸だけどね。
話をしているうちに僕達はとても仲良くなった。
ネリーザさんは貴族令嬢らしく所作が綺麗、実家ではまともに教育を受けさせて貰えなかったようだけど第二王子の国に移住してからは礼儀作法のお勉強を頑張っていたのだとか。
「リーナさんは私の恩人・・・アリア王国に立ち寄る事があれば是非お城へお越しください!、全力でお礼をさせて頂きますのでっ!」
ロリーナさんは借金を返すためにメルト帝国の北部にある街を活動拠点にしてハンター・・・僕が生前読んでいた異世界小説風に言うと冒険者のような事をしていたらしい。
彼女がお金を借りている商会長は極悪人で、身体に契約紋を刻み逆らえないようにした後、奴隷のように働かされて夜の相手もしていたようだ。
「だから私の身体は忌まわしい刻印があって汚れているわ、それを我慢して貰えればエルフだから長生きだよ」
駄女神が契約紋の力を無効にしてくれるようなので身体を譲ってもらった後は他国に逃げようと思ってる。
「あいつは借金を全額返したとしても私に執着すると思う、とにかく気持ち悪い奴なの!、だから向こうの世界に行ったらできるだけ遠くの国に逃げてね」
「あぅ・・・疲れましたぁ・・・」
「これくらいで疲れるとは情けない・・・貴様も管理神の資格試験を受けたのだろう?、蘇生術は実技にも入っていた筈だが!」
プリザ様の怒声が響き渡り駄女神が床にぺたりと座り込んだ。
お茶をしている僕達から少し離れた所にはロリーナさんとネリーザさんの肉体が安置・・・いや、正確にはまだ死んでないから寝かされているが正しいかな・・・。
駄女神の力で向こうの世界の時間を止めて2人の肉体をここに持って来た、目的は死にそうになっている状態から蘇生させる為だ。
ハンター装束のロリーナさんは皮膚が火傷のように爛れて水脹れが全身に出来ている、毒が隙間から入ったのか皮膚に張り付いて取れない革鎧を無理に引き剥がす駄女神を見て魂状態のロリーナさんが悲鳴をあげた。
ネリーザさんは見た感じ無傷だけど顔色が悪く口からドス黒い血が流れている。
「神の力でぱぱーって蘇生できないの?」
「できませんっ!」
僕の問いに駄女神が自信満々で答える、即答だ・・・。
「神様なのに?」
「プリザ様なら出来るけど新米の私には無理ですぅ!」
少し言い過ぎてしまったようだ、駄女神が涙目になっている。
「すまぬ愛し子よ・・・我々管理神は規則で許可無く別世界の生物を蘇生させる事が出来ぬのだ」
プリザ様が申し訳なさそうに僕に謝ってくれた。
「それなら駄女神様に頑張って貰わないと」
「そうであるな、ほら駄女神よ早く続きをせぬか」
いつの間にかプリザ様も僕に影響されて駄女神呼びになってるし!。
「わぁぁん!」
あれから1日くらい経った、時間の経過が曖昧だからよく分からないけれど僕達は魂の状態だからなのか眠くない。
2人とは沢山お喋りをして更に仲良くなった、もう親友と言ってもいいだろう。
物静かで少しきつい口調のロリーナとゆるふわで守ってあげたい雰囲気のネリーザ、性格は全然違うけれど2人とも凄く良い子だ。
僕がロリーナの身体を貰って向こうの世界で目覚めた時に地理や習慣を何も知らないのは心細いだろうと精霊になったロリーナがしばらく行動を共にしてくれる事になった。
メルト帝国から上手く脱出した後はロリーナに教わりながらハンターのお仕事をして暮らそうと思う、駄女神が金貨をくれるらしいから生活には困らないだろうけどハンターという仕事は面白そうだ。
ネリーザはマナー教育や結婚の準備で暫くは多忙らしい、落ち着いた頃合いを見てアリア王国にある第二王子の屋敷に遊びに行く約束をした。
「まだ終わらないのかな?」
「さぁ・・・」
僕達から少し離れた場所では相変わらず駄女神が泣きながら2人の身体を修復している。
その後ろに仁王立ちして罵声を浴びせるプリザ様も1日前と変わらない、でも時々駄女神に蘇生方法を指導しているから見かけによらず面倒見のいい人?なのだろう。
「ふむ・・・貴様の実力だとこれが限界か」
「ふぁい・・・申し訳ありません・・・ぐすっ」
プリザ様に呼ばれて2人の肉体がある所に行くと・・・。
全身に包帯を巻かれたロリーナと、顔色が良くなり眠っているように見えるネリーザが居た。
「えーと、大怪我が治ってないように見えるのですが・・・」
「愛し子よ、駄女神の力ではこれ以上の修復は無理であった」
「もしかして僕はずっとこの姿のままなの?」
「いや、時間が経てば傷は綺麗に治癒するであろう、向こうの時間でおよそ1000日といったところか・・・」
それくらいなら問題無さそうだけど痛そうだな。
「その包帯には私の神力が込められていますからそれほど痛みは感じないと思いますよ」
駄女神がまた僕の心を読んだようだ・・・。
「私はこの新しい身体に何もできぬが魂になら干渉が可能だ・・・これは私が愛し子にしてやれる最後の祝福となるであろう」
そう言って僕に向かって手を掲げると暖かな光が僕の身体に吸収された。
「では幸せに暮らすのだぞ、我が愛し子よ・・・」
どうやらプリザ様とはここでお別れのようだ、お礼を言わなくちゃ・・・。
「礼はいらぬ、あちらの世界で困った事があれば駄・・・オシーリアを呼び出し相談せよ、奴とて腐っても神であるから何かと役に立つ」
しゅっ・・・
僕の心を読んだらしいプリザ様はそう言って目の前から消えた・・・でもそんな気軽に女神様を呼んでいいの?。
「・・・やっと帰りましたぁ、怖かったよぉ」
疲れ果てた駄女神が床にぺたりと座り込んだその時・・・。
しゅぱっ!
「ひぃっ!」
消えたと思ったプリザ様が再び現れて駄女神に言った。
「貴様にはまだ話がある故、後日私の管理世界に来るように!」
「わぁぁん!」
しゅっ・・・
今度こそプリザ様は帰ったようだ。
「さて・・・あとはリーナさん達を私の世界に送り出して時間を動かせばお仕事は終わりですぅ!、リーナさん、欲しいスキルは決まりましたか?」
暫くして復活した駄女神が僕に尋ねた、事前にスキルについては聞いていたのだけど・・・。
「海を割る」「全てを燃やし尽くす」「山を消す」・・・提案されたスキルは物騒なものばかりだった!。
「2人はどんなスキルを持っているの?、一人一つ持ってるんだよね」
「私は「料理が美味しい(中級)」ですね、元家族からは役に立たないスキルだと馬鹿にされてましたけど」
ネリーザが昔の事を思い出したのか暗い表情で答えた。
「私の場合は「魔法が上手(上級)」かな、おかげでハンターのお仕事に役立ったわ」
ロリーナのスキルは確かに魔物や野盗と戦う事もあるハンターのお仕事に便利そうだ。
「僕は色々な物が入るストレージ的なスキル・・・アイテムボックスが欲しいかな?、お金沢山くれるんでしょ、持ち歩くの大変そうだし」
「そんなスキルでいいのですかぁ?、もっと凄い・・・「自由に空を飛ぶ」とか」
「別に飛びたくないし!」
「そうですねー、じゃぁ容量無制限、何でも出し入れが出来るアイテムボックスという事で・・・」
「アイテムボックスは向こうの世界にもあるのかな?」
「はいっ!、アイテムボックス・・・収納系のスキルを持つ人はそんなに居ませんけどね、私が前任者から引き継いだ世界は文明もそこそこ発展していますし魔道具もありますよ」
駄女神が自慢そうに話すのを聞いたら行くのが楽しみになってきたな。
「でもアイテムボックス程度のスキルじゃお詫びにならないです・・・もう一つ何か戦闘力のあるスキルを付けましょうか?」
「・・・向こうは魔物が時々出る他は結構平和なんでしょ、何でそんなに物騒なスキルを勧めるの?」
目を逸らしやがったぞ!。
「それなら代わりにネリーザにもう一つ付けてあげてよ、毒殺されかけたしまた同じ事が起きる可能性があるよね、怪我や毒、病気を治す「癒し」スキルなんていいかも」
「はぁ・・・リーナさんは本当に欲が無いですねー、分かりました、ネリーザさんには「癒し(極み)」をお付けしましょう、特別に皆さんにも「癒し(上級)」と「アイテムボックス(上級)」を付けておきますね・・・はい付与っ!」
ぱぁっ!
「リーナさんは「癒し(上級)」に加えて「アイテムボックス(極み)」と、私の「愛し子」登録をしておきますから・・・」
「愛し子の登録はいらないかなぁ」
「何で!」
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