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ロリーナ・ボーンアゲイン!〜異世界に転生したら褐色ロリエルフになりましたぁ!〜  作者: 柚亜紫翼
2章 ゔぇんざていこく

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019 - ぢゃがりこ -(挿絵あり)

019 - ぢゃがりこ -


遠くに見えていた陸地が近付いてきた、海に面した斜面に張り付くように建っている白壁の特徴的な建物や風車、教会・・・ヴェンザ帝国東端の港街、ヴロックだ。


俺達はここから魔導列車に乗りメルト帝国内陸にあるリーシオの街に向かう。


直接船でメルト帝国に上陸しても良かったが旅客船が停泊できる港から魔導列車の駅があるシリィの街まで交通の便が悪いし遠いのだ。


それに比べて今向かっているヴロックは港から駅まで歩いて1刻もかからないし、この街で会っておきたい人も居る。


俺の名前はヂャガリコ、35歳独身だ、アリア王国上級貴族ワサヴィーフ家の3男で王国騎士団特殊諜報部隊の長を任されている。


俺がアリア王国から海を渡りここに来た目的は王命によりとある人物を見つけ出し保護する事・・・保護対象がリーシオの街に留まっている保証は無いが足取りくらいは辿れるだろう。


「・・・」


「隊長ぉ!、これ美味しいです!、食べます?」


「隊長と呼ぶのはやめろと言っただろ!」


船の中で売っている肉串を何本も両手に持ち美味そうにかぶりついているこいつはシーオ、俺の部下で今回の任務の同行者だ。


彼女も俺と同じ王国の上級貴族、カルヴィドゥーン家の4女で特殊諜報部隊の隊員だ。


2人とも兄弟姉妹が多く居るから家を継ぐ必要の無い気楽な立場だ、俺の両親も危険が伴う特殊部隊に入ると伝えた時には本当にやりたい仕事なら好きにしろと言って送り出してくれた。


「旦那さまぁ、これ食べてみて下さいよー、こっちが激辛ソースで、こっちが塩・・・」


ぽかっ!


「痛ぁい!、何するんですかぁ」


俺は執拗に肉串を食えと勧めて来るシーオの後頭部を張り倒した。


任務遂行にあたり俺とシーオは夫婦という設定にしている、男一人旅より夫婦の方が警戒されないのだ・・・メルト帝国はアリア王国の友好国だが用心し過ぎるくらいがちょうどいい。


「こいつと夫婦か・・・勘弁してくれ」


「え?、何か言いました?」


「何でもない」


「辛っ!、うわ辛っ!、旦那様助けてこれ凄く辛い!」


真っ赤なソースの付いた肉串を俺の前に差し出して涙目で訴える・・・顔に近付けただけで目に沁みるような危険物を俺にどうしろってんだ!、ってかお前は俺にそれを食わそうとしてなかったか?。


シーオの奴は優秀だが正直苦手だ、だから当初は別の女性隊員を連れて来る予定だったのだ。


「ミルキィさん大丈夫ですかねぇ、私ダメだって言ったんですよ・・・でもあの人まだ腐ってない大丈夫だって全部食べちゃうから」


赤い肉串を食いながらポケットに入れていたスキットルを出して煽るシーオ・・・中には蒸留酒が入っているようで酒臭い!。


「これから仕事なのに飲むんじゃない!」


「えー、船を降りたら夕食を食べて寝るだけじゃないですかぁ、問題無いですよぉ」


俺は奴が名前を出したミルキィを同行させる予定だったのだが出発直前になって食中毒で倒れたのだ。


「隊長ごめんなさい・・・いけると思ったんですけど腐ってたみたいで・・・私の代わりはシーオちゃんに頼んだので・・・あぅ!」


ごろごろごろ・・・きゅるるる・・・


俺にそう言い残してミルキィは尻と腹を押さえて便所に駆け込んだ・・・。




シーオと馬鹿なやり取りをしているうちに港が目の前に迫っている、夕陽が白壁を赤く照らし日没が近い・・・船を降りる準備をしないとな。


「銀髪のダークエルフ、性別女、見た目は人間の13歳ほど、全身に熱傷の痕があり包帯を使用・・・か」


もう一度保護対象の特徴を呟き、俺はまだ肉串を食っているシーオを残して客室へ荷物を取りに戻った。






「ご夫婦で旅行ですか?」


「あぁ、久しぶりに休暇が取れたから妻とヴェンザ帝国やメルト帝国を観光しようと思ってね」


港にある出入国管理所で俺達は入国審査を受ける、国が用意した偽造の身分証明書はいつも通りバレずに済んだ。


メルト帝国と同様にヴェンザ帝国も王国とは友好関係にあるから手荷物も中を開けて検査官が軽く確認する程度だ。


「はい、問題ありません、良い旅をお楽しみ下さい」


「ありがとう」






出入国管理所を出ると日はすっかり落ちていた、海側は闇が広がり街は魔導灯に白壁が照らされて眩しいくらい明るい。


俺とシーオは魔導灯に照らされた石畳や階段を登り街の中心に向かって歩く、周りには俺達と一緒に船に乗っていた乗客達が街を目指して歩いている・・・今夜は人気の観光地でもあるこの街で一泊するのだ。


街の大通りから一つ外れた飲食店が多く並ぶ通りに俺の目的の店がある、まだ日が落ちて間もない時間だから人通りも多いし店も忙しいだろう、俺達は通りを散策して時間を潰す事にした。


「美味しい!」


「そうだろう、俺はこの街に来た時は必ずこの店で食べるんだ」


大通りの一等地に店を構える「レストラン・シルフィー」は俺のお気に入りの店だ、いかにも高級そうな店構え・・・実際料理の値段も高いがその価値は十分にある絶品の海産物料理が楽しめる。


「ここの料理長は味に惚れ込んだ多くの貴族家から専属にと誘われてるが全部断ってるそうだ」


俺はクリームソースのたっぷりかかった甲殻類の肉をフォークでほじくり出しながら言った。


「貴族からの依頼を断れるんですかねー」


魚のムニエルをフォークとナイフで上品に切り分けながらシーオが呟く。


「確かに普通の店なら下手をすると潰されかねない、だがここは皇帝や皇弟のお気に入りの店だからその店を潰したって知られたら・・・」


「あぁ・・・潰した貴族の家の方が無くなるってやつですねー」


魚の大きな身をフォークに刺して美味そうに頬張るシーオの言う通り、この店に何かあれば皇家が黙っていない、店の前には皇帝陛下御来店の文字が控え目に飾られてるしな。


「そうだ、だからこの店に無礼を働く輩が居ないか監視してる皇家の影が何処かに潜んでるかもな」


「わぁ、怖ぁい」


貝と香草の入ったスープを飲みながらシーオが囁くが全く怖がってるようには見えない。


「それにしても美味そうに食うよな・・・お前」




・・・


「すっごい美味しかったです!、旦那様ありがとう!」


食事が終わり店を出るとシーオが俺の腕に抱きついてきた、貧相な胸が当たってるんだが!。


こいつは胸は小さいが手足が長く鍛えているから程良く身体が引き締まっていて顔もいい、貴族令嬢らしく美しい所作も出来るし町娘のように粗雑にも振る舞える。


もちろん目立ってはいけない諜報員だから誰もが振り向く絶世の美女ではない、10人中8人が可愛いと思える程度の美貌だ。


「だが苦手なんだよなぁ・・・性格が」


「え・・・旦那様何か言いました?」


「いや、何でもない」


「あ、あそこに可愛い小物を置いてる店がある!、旦那様何か買ってー」


「・・・」




夜も更けて人通りが少なくなった、まだ酒を出すところは開いているがそれ以外の店は閉まり始めている。


俺は目的の店に向かって歩き出した、隣ではシーオが小物店で買ってやった指輪を魔導灯に翳してご機嫌だ。


「コンコン・・・コンコン・・・」


店は閉まっていて鍵がかかっているから俺は裏口の扉をノックする。


がちゃ・・・


扉が開き中から男が顔を出した。


「・・・入れ」


俺の顔を見て男は低く威圧的な声で中に入れという、俺達は言われるまま建物の中に入った。


「お久しぶりですマーチン先輩」


「もう俺はお前の先輩じゃない」


「では・・・マーチン師匠」


「師匠もやめろ」


「マーチンさん」


「・・・」


俺の目の前の男はマーチン・コアラーノ、元アリア王国騎士団特殊諜報部隊長・・・つまり俺の元上司だった男だ。


引退後も諜報部隊と完全に縁が切れている訳ではなくこのヴェンザ帝国に移り住み、帝国に来たアリア王国諜報員の諜報活動に協力しているのだ。


「泊まりか?」


「はい、俺とこっちのシーオを明日まで」


「一緒の部屋でいいか」


「はい・・・むぐぅ!」


「別々でお願いします!」


俺は一緒の部屋でいいと言うシーオの口を慌てて押さえ別々の部屋を要求する。


「ぷはぁ!、旦那様ひどい!、夫婦っていう設定なんだから一緒でいいじゃないですか!、この後も宿の部屋は一緒だろうし・・・」


「一緒じゃなくても済むなら別がいい」


「何でですかぁ!、私自分で言うのもアレだけど可愛いし!」


「あれぇ・・・隊長、こんなところまで何のお仕事ですかぁ?」


俺の後ろで声がした、慌てて振り向くと・・・。


「ヴィオラ・・・」


「あ、ヴィオちゃんだぁ」


俺に気配を悟られずに背後を取れるのは隊員の中ではこいつくらいだ・・・アリア王国騎士団特殊諜報部隊員、ヴィオラ・フェルミン・・・このメイド服を着た少女も俺の部下だ。


「隊長、それからシーオ先輩、お久しぶりですぅ」






「・・・王命で明日からメルト帝国か」


俺とマーチン先輩は店の2階にある居間で茶を飲みながら話をしている。


「はい、内容は明かせませんがしばらくリーシオやズィーレキの街で諜報活動を・・・」


マーチン先輩が手で俺の言葉を遮った。


「王命であるならば俺に内容はもちろん詳しい行き先も喋るべきではないだろう?」


確かにそうだ、協力者・・・味方とはいえマーチン先輩は部外者だ。


「はい、ご指導感謝します」


「お前は既に一人前だ、俺に教えられる事はもう何もない」


「・・・」


俺の隣ではヴィオラの奴が眠そうにしている、こいつは訳あってこのヴェンザ帝国の辺境で任務に就いている、外見は10代半ばの少女だが実力は俺の部隊の中でも上位だ、そして最も得意とするのは暗殺・・・。


「ヴィオラはしばらく見ない間に表情が柔らかくなったな」


初対面の時に見せた荒んだ目・・・手負いの獣みたいで恐ろしかったがこの街の穏やかな気候が彼女を変えているのかもしれないな。


「そうですかぁ・・・ふわぁぁ・・・」


「お子ちゃまはもう寝た方がいいんじゃないか?」


「お子ちゃまじゃないよぅ・・・くぅ・・・すぴー・・・」


こいつを抱き上げてベッドに連れて行きたいがそれは危険過ぎる、寝ている時に誰かに触れられると無意識に反撃するのだ。


俺は何度ナイフを喉元に突き付けられたか分からない・・・このままソファに放置しておくのが正解だろう。





・・・


翌朝俺達はマーチン先輩に別れを告げ、魔導列車に乗ってメルト帝国に渡った。


ズィーレキの街で聞き込みをし、リーシオの街の北にある超危険地帯、サウスウッド大森林の中で魔物に襲われながら保護対象が毒竜に襲われたと言われている場所も捜索したが手掛りが全く無い。


ロリーナと呼ばれたダークエルフの痕跡は大森林の中で忽然と消えていた。


俺はハンターの資格も持っていたから両方の街のハンターギルドでそれとなく探ってみたが収穫は無い、ギルドは訳有りの人間や素性を隠してハンターになった者を保護する為に個人情報は漏らさないのだ。



俺達は疲れ果て、およそ40日ぶりにヴェンザ帝国、ヴロックの街に帰って来た、シリィの街や国境付近の捜索で別行動していたシーオとはマーチン先輩の店で待ち合わせをしている。


昼飯を食っている客も少なくなった頃にシーオが店に入って来た、俺達はお互いの報告も兼ねて店で食事をする・・・先輩の作る肉料理は美味いのだ。


「相変わらず目撃情報は無し・・・か、出国した形跡も無いんだろ」


俺は焼きたての肉をナイフで切り分けながらシーオに尋ねた。


「魔導列車や出入国管理所の職員に「お願い」してそれらしい人物が通っていないか調べて貰ったのですがー」


「大森林の中で煙みたいに消えちまったか・・・ところで職員に「お願い」ってまさか」


「ふふっ・・・お食事を一緒にしただけですよー、もちろん私も女性諜報員ですから色仕掛けで情報を抜き出す訓練は受けてますけどねー」



「・・・東に行った可能性も考えるか」


「東の路線は半年前の崖崩れで長期復旧作業中・・・陸路は国境の手前まで馬車しかないですしウォシュレ共和国は今内政が不安定だから行かないんじゃないかなぁ」


「だよな、陸路で向かうにしても誰にも目撃されずに馬車に乗るなんて無理だ」


そう言ってスープを一口飲む、先輩の作るスープも絶品だ。


ぶふぉおっ!


俺は口に含んだスープを吹き出し、不幸にも目の前に居るシーオに直撃した。


「わひゃぁぁ!、旦那様汚い!、何するんですかぁ!」


ナプキンで顔を拭きながらシーオが俺に抗議する、悪かったよ、だがお前の後ろ・・・。


俺はシーオの後ろを指差し、気付かれないようにゆっくり振り向けと小声で指示した。


「え・・・」


スプーンを落としたフリをしてシーオが後ろを確認する・・・テーブルに座って食事をしているフードを目深に被った女の子、半袖の服から出た腕には包帯が巻かれている・・・肌は薄い褐色だ。


俺は食いかけの飯もそのままにカウンターの奥に行きマーチン先輩に尋ねた。


「あの子供は?、よく来るんですか?」


先輩はカウンターから少し立ち上がり子供の姿を確認する。


「うちの常連さんだ、50日くらい前だったか・・・友人と一緒にふらりと入って来た、味が気に入ったのか何度も来てくれてるぞ」


今までの苦労・・・メルト帝国での40日間は何だったのか、俺は膝から崩れ落ちた・・・。



挿絵(By みてみん)

世界地図 Ver2


挿絵(By みてみん)

ヴロックの街(詳細地図)


※ヴロックの街並みはサントリーニ島っぽい感じです。

読んでいただきありがとうございます。


趣味で空いた時間に書いている小説なので不定期投稿です、続きが気になる人はブックマークして気長にお待ちください。


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