運命の出会い
魔獣の咆哮が村に響きわたり、人々は悲鳴とともに逃げ惑う!アレンもその巨体から放たれる圧倒的な“圧”に足がすくむ。空気がビリビリと震え、土埃が舞い上がる。魔獣の目がアレンをロックオンした──そのとき!
ズバァンッ!!
まばゆい光とともに、白銀の鎧をまとった一人の騎士が空から着地! 彼女の着地によって巻き上がった風が、アレンの頬を撫でた。かっこよすぎてアニメかと思ったその人物が、リセリア・ファルネスだった。
「君、大丈夫? ここは私がなんとかする!」
リセリアの剣が煌めき、その切っ先が魔獣に向けられる。ポカンとしつつもうなずいた。現実とは思えない光景の連続──その思考が追いつくより早く、リセリアは魔獣に向かって一気に突撃した。
剣と牙がぶつかりあい、火花が飛び散る。その一撃一撃は、鎧をまとった体から繰り出されるとは思えないほどの俊敏さで、魔獣の分厚い皮膚を切り裂く。しかし、魔獣も尋常じゃない強さ。巨体を鋭く震わせたかと思うと、受けた傷を意に介さず、大地を抉り、樹木をなぎ倒す。巨体から放たれる爪の一振りは、あきらかにその間合いの外までも被害をまき散らす。
「伝承に違わず……ってとこかしら。ならば……」
リセリアは小さく詠唱を始めるとともに剣を構え、魔獣の巨大な爪の一撃を受け止める。ガキンッ!と甲高い金属音が響き、その衝撃波が村中に広がる!
「くっ……!」
リセリアは歯を食いしばり、その余波を必死に抑え込もうとする。衝撃波が土煙とともに押し寄せ、近くで逃げ遅れた子どもが吹き飛ばされそうになるのがアレンの視界に入った。
「やばいやばいやばいっ! これ絶対、夢じゃないよね!?」
体が勝手に動いた。アレンは迷うことなく、風圧に煽られながらも子どもに向かって走り出した。子どもの腕を掴み、自身の身体で覆いかぶさるようにして、押し寄せる衝撃を受け止める。土煙と砂利が打ち付けられ、全身に激痛が走る。
「うっ……ぐうっ!」
それでも、子どもの小さな体をしっかりと抱きしめ、絶対に守るという強い意志がアレンの心を支配した。その瞬間──
体の中が、なにかに共鳴するように熱くなった。ただの熱ではない。まるで心臓が燃え盛るかのように、全身の血が沸き立つような感覚だ。視界の端に、見たこともない文字がふわっと浮かぶ。
《適性を確認……火。魔力回路、解放準備OK》
「な、なにこれ……!? なんか始まってる──!!」
アレンの周囲の空気が、熱を帯びて揺らめき始めた。