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異世界転移したけど最弱体質で詰んだ俺が、世界最強になって無双するまで ~気づけば俺、美女に囲まれて英雄やってました~  作者: 朝食ダンゴ


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幕間 2

 いつのことだったか。

 清々しい風を浴びながら、青空に浮かぶ入道雲を見上げていた。


「だいぶ仕上がってきたな」


 感慨深く呟くカイトの隣には、ぴたりと寄り添うように少女の姿があった。


「あなたのおかげ」

「そうか?」


 真正面から褒められると、照れくさいものだ。

 後頭部を掻きながら、景色に目を向ける。


「良い眺めだ」


 二人は切り立った断崖の上にあった。

 眼下には広大な森が広がり、遥か遠くに水平線を臨み、頭上には青い空があり、雲が流れている。


「うん。素敵な眺め」


 少女が首肯して、ほんの僅か微笑んだ。

 カイトは、節張って皴だらけになった自分の手を見つめる。


「いつの間にか、随分と老けたもんだ」


 時間の流れから隔絶された存在には、肉体の老化がない。そもそも肉体が存在するのかどうかも定かではない。

 だが、彼の身体は大きく傷んでいた。生命力を失い続けた彼の全身は、深い皴にまみれ枯れ木のように退化している。


「マナの満ち満ちた世界。本当に、きれい」


 少女の声はいつになく弾んでいて、カイトを少しだけ驚かせた。


「喜んでくれてるなら……まぁ、いいか」


 カイトは衰弱した腕で少女を抱き寄せる。

 少女から感じる温もりも、柔らかさも、紛れもない真実だ。

 物質であろうと概念であろうと、今ここにある感情は決して偽物じゃない。

 今はただ、それだけでいい。


「マナ。生命の根源。万象の源」


 祝詞のように言葉を紡ぐ少女。


「この世界が、私達の楽園になる」

「楽園か。そりゃあいい。期待に胸が膨らむ」


 しみじみ言ったカイトを、少女の黒い瞳が覗き込む。


「とても苦しくて、辛い旅になる」

「楽園なのに?」


 少女は小さく頷いた。


「楽園だからこそ」


 断崖に風が鳴く。

 新たな世界の産声が、二人の耳を優しく撫でていった。

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