窓際に映る幼い記憶 良い酔い後時雨
だんだん、お酒が回ってきて、体が熱くなってくる、私はあんまり酔わない体質だから、平気だけど、優ちゃんはもうだめそう…
「ゆうちゃん、はい水飲んで」
これは、ダメそうだ甘いお酒だったからガブガブ飲み過ぎたみたい
「もう夜も遅いし寝よっか」
今日はいい感じに酔えたから、ゆっくりねよ…
「ここは…」
目を開けると、真っ白の空間にいた。
身体には浮遊感を感じ、いつもの気怠さも、体の重みさえ感じない。
後ろを、振り返ると、そこには黒く、高くそびえたつ扉がある。
その、扉からは邪悪な気配すら感じるほど、漆黒に染まっている。
しかし、私の体はその扉に向かって吸い込まれていく。
抗おうとするも、言うことを聞かない。開けてはならないその扉を、開けてしまう
その、先には何もない真っ白な今の空間とは違い、暗黒の世界に吸い込まれていく
今まで見ていた、白と黒の割合が入れ替わるとき
朝日が、目元にあたりまぶしく起きる
「んっ…朝…か」
優ちゃんがいない、どっかに出かけてるのかな?
「優ちゃーん、あっいた」
朝ごはんを作っている。いい匂いだ、目玉焼きを食べるのは久しぶりだ
それにしても、あの夢を今でも覚えている、そもそも夢だったのだろうか、それすら疑いたくなるほど手体にその浮遊感が残っている。
「美桜ちゃん、大丈夫?」
ぼーっとしてしまった…私は疲れているのだろうか
なんだろう…この感覚昔にもあったような気がする
「空気悪いかもね、換気しようか」
優ちゃんがカーテンを開けると、眩しい朝日と暖かい空気が流れ込んでくる。
春の空気だ
暖かく、柔らかい
「もうあったかいね〜春だね」
今日からもうマフラーは、いらないね
春用のコートを出そうかな
「ちょっと、春用のコート取ってくるから、先に下で待ってて」
なんだろう、久しぶりに自分の部屋に帰ってきた気がする…
コート、どこだったかな…去年来てからもう着てないからどこ行ったかわからん…
「これかな?あっ、あった!」
やばいやばい、優ちゃん待たせてるから早く行かないと
「ごめんごめん、お待たせ!去年から着てなかったから、なかなか見つからなくて…」
まって、優ちゃんのコートかわいい…私やっぱりセンスないよね…
今こうやって見ると地味なグレーの無地のコートだよね…
「優ちゃんの、そのコートめっちゃかわいい、どこで買ったの?」
まぁ、私が来たことろで似合うかどうかわからんけど…
「これ?これはそこの昔からある、古着屋さんから見つけた掘り出し物なんだよねいいでしょ、帰りよって帰ろっ!」
ほえー、中古とは思えないほどきれいなんですが?私の少し汚れちゃってるんだよね買い替えようかなそろそろ…
今日は、誠人先輩は遅番だから一緒に行けない…なんかさみしい…
「あっ、美桜ちゃん今誠人先輩の事考えてたでしょ?」
なっ…なぜばれた?
「ばればれだよ、すぐに顔に出てるよ美桜ちゃん昔から、にやけてたからね、気を付けた方がいいよ」
まじ?そんなににやけてた私?
「こんなところ、誠人君に見られたらだいぶまずいね…私キモい奴じゃん…」
はぁ…私って素直なところが長所って調査書に書いたのに、素直すぎるんだよ私の顔…もうちょい嘘つけるようになってくれよ…
しばらく歩いていくと、昨日まではつぼみでしかなかった、桜が少しづつ咲き始めてきている。
季節の変化がとても分かりやすい、秋から冬への切り替わりは、寒さでしかわからないが、桜の花が咲くと、それだけですぐに春だとわかる。
「おっ、美桜ちゃん桜咲いてるよ、美しいね桜…」
そうだね…暖かいなぁ…
「って、私の名前いじったよね今!?」
毎年言われるんだよね、美しいね桜…って哀愁漂わせてさ!
「いや、だってそのまま桜が美しいからそういっただけじゃん!言いがかりだよ!」
ほんとかなぁ…
「ついた~疲れちゃったよ朝から…でも綺麗だねぇ桜がたくさん咲いている会社だとお花見が、すぐそこでできるからいいよね」
「おはようございます!いやぁ桜がきれいですねぇ」
もう今日はその話だけで持ち切りかもね…
「あっ、美桜ちゃん美しい桜だね」
田中さんまで…
「部長、みんなが私の名前をいじってくるんですけど…」
「そりゃぁ、この時期の桜は美しいから必然的にそうなってしまうだろう?まぁいい名前だ誇りに思いたまえ」
そういわれましても…なんか気になりますやん
まぁ、この調子だと、あと一か月近くはこのいじりが続くだろうなぁ…
毎年のことで、もう慣れたけどさ…
冬が終わり、桜が咲く
別れと出会いの季節、新しい生活が始まる季節
人とのふれあい、人の温かさ
すべてを知れる、春という季節




