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無頼の魔女イシュタル  作者: ふるみ あまた
1章 海の章
37/160

37 モノローグ:『ティナ・エーデル・アレキサンダー』

 

 楽しい。どうしよう。毎日が楽しい。


 正直な事を言えば、あの子が、メアリーがアレキサンダー家に嫁ぐちょっと前から、もう楽しかった。あの子ったら、毎日のように遊びに来てくれて……。孫もまだ生まれてないのに、この充実感……恐ろしいわ。楽しすぎて、あの子に嫌われたくない。今の生活を失いたくない。そんな思いを胸にしながら


 《姑魔女必見!! イマドキの嫁との良好な関係の築き方!!》


 わざわざこんな雑誌なんかを買いつけて、昼間から読んじゃったりして。私も変わったものね。息子の嫁なんて、絶対に好きになれないと思っていたもの。ところがメアリーときたら、蓋を開けてみれば『お義母様ァ!!』と、何かにつけて甘えてくる可愛い娘だった。


 雑誌はテーブルの上に置いて、早速その内容に目を通すことにしましょうか。


 《目指すべきは友人関係!! なにかを指導したりするのは御法度!!》


「……はぁ?」


 いやいやいやいやいや……何言ってんだ、こいつ。この記事の著者は、実際にメアリーぐらい可愛い嫁がいるのかしら? その上でこんな記事を書いているのかしら?


 今日だってサクランボのケーキを習いたい、って。自分でそう言って、今からここに来るというのに。あの子の事が待ちきれないから、こうして、しょうもないけども、低俗な雑誌を読んで待っているの。いつもより到着がちょっと遅いけど……遅刻だわ。いや、時間は決めていないけれど。でも……本当は私に会いたくないのかしら? だから、いつもより少しだけ遅れている? いやいやいやいや、それはない。今日はレオナルドの配下の魔女を連れているのだから、きっと集落を案内していて、そうなっているのでしょう。気にすることはないわ。


 指導してはいけない? なにそれ。それじゃあ、どうやってケーキの作り方を教えろっていうの? アレキサンダー家の歴史の詰まったサクランボのケーキを、そのレシピを知りたいと言う可愛い嫁に教えて何が悪いのかしら? まったく……この記事を書いた豚は脳みそがどうかしているわね。


 気を取り直してページをめくりましょう。今度はもっとマシな、人間様の目に入れても腐らない文字を期待するわ。


 《孫の催促はNG!! 子供を持つ持たないは個人の自由!!》


「……舐めとんのか?」


 アレキサンダー家がお家断絶にでもなったら、責任とれるのかしら? 百歩譲ってとれるとして、どうやってとるおつもり? 責任も果たさずに自由だけを得ようなんて、甘ちゃんもいい所。笑っちゃうわ。ティナ・エーデル・アレキサンダー、笑っちゃいます。


 とんでもないわね、ほんと。この記事、ちゃんと成人した魔法使いが書いているのかしら? この腐りきった文章を書いたゴミカスに、昨日のメアリーからの手紙を見せてやりたいわ。『一番孕める体位は何ですか?』って。あの子、手紙で私にそんなこと聞いてきたのよ? やる気満々じゃない。その心意気やよし。ちなみに答えは正常位。大事なのは気持ちだけど、挿入感と全身の密着感はやはり正常位でしか得られないものだと教えてあげたわ。脚で挟めますしね。


 はぁ、ほんとバカバカしい。まったく……呆れて言葉も出ないわ。次のページこそは、納得のできる、ちゃんとした人間の理論が書かれているんでしょうね?


 《古いしきたりで縛ってはいけない!! 同居の匂わせもNG!!》


「……だまらっしゃい!!!!」


 畜生の排泄物にも劣るその物体をテーブルごと燃やし、この世から消し去ってやった。お疲れ様でした。アレキサンダー家、216年の歴史を侮辱するとはいい度胸でした。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 まぁまぁまぁ……いずれは……いずれは、あの子たちがこの家を継ぐのだから。そうなったら、夢にまで見た子供たちとその嫁たち、そして孫たちに囲まれながら暮らせる日々がやってくる。それまでの辛抱なのだから、こんなわけのわからない事ばかりを並べ立てる、くだらない雑誌のいうことなんて、真に受ける必要はないわ。それとは別に、この雑誌の出版社と著者には、私に不快な思いをさせた責任を取らせないといけないわね。それにしても遅いわね。早く来ないかしら、メアリー。


「お義母様ァ!!」


 ろくに挨拶もせず、開幕ダッシュで私の身体に抱きついてくるメアリー。嗚呼、メアリー。あなたは、可愛すぎるわ。私の本当の娘にしたいくらい、愛おしい存在。でも、ちょっと待っててね。愛する我が子を苦境に立たせ、今もなお監視しようとする事をやめようとしない魔法界に忠誠を誓った魔女、イシュタルへの尋問をしなくてはなりませんからね。

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