第7話
必死の逃亡の末、なんとか私兵隊の目をくらまし逃げる事ができた。
今、三人が身を隠しているのはホテルエリアの中の何処かの部屋だ。
「さあ、知っている事を話してもらうぜ。確かあの派手な人間がお前の宝石を盗んだとか言ってたな」
「ええ、そんなに急かさなくても全部話すわ。ここまで来てしまったんだもの」
すると赤美はこれまでの経緯を包み隠さず話した。
赤美は東の国の古い家の出身でその家には代々受け継がれる宝があった。それがゴッドブレスなのだが、強い魔性の力を秘めていたので厳重に保管されこれまで外に出る事は無かったという。
しかし数年前から岡野家で奉公していた二人の男が宝石を持ち去った。最初から二人組はゴッドブレスの強奪が狙いだったのだ。
岡野家の加護は消えさり一族は没落寸前。そこで赤美は一人奪われた宝石をとりもどしにヒルキャニオンまで来たのだという。
「赤美さんは家族のためにここまで来たんですか。いい子じゃないですか」
「それもあるけど……私たちの大事な家宝のせいで辛い目にあってる人いるとが思うと耐えられないのよ。早くジージャス達のやってる事をやめさせなきゃ」
「その通りなのです。ドラッグなんてよくないのです」
アマガエルは赤美に共感し頷いた。
サルは赤美に尋ねる。
「なあ、ゴッドブレスはたくさんあっただろ。あれはどういう事なんだ」
覚醒作用や超能力の発動のきっかけがブルーライトを当てた事による激しい発光だということは分かっていた。
今までの話の中の赤美のいうゴッドブレスは一つの宝石を指しているハズだ。偽物はどうやって生み出されるのかは謎であった。すると赤美は答えた。
「ええ、実はゴッドブレスは特殊な光を当てると激しく反応する性質があるのよ。たぶんあなた達がたくさんと言ってるのは一つの本物から生み出された複製の事」
「複製? コピーってことか」
「ええ、しかし本体よりは秘めている魔力も弱いため一度の発光で消滅してしまう。それにゴッドブレスの影響を受けるためには、最初に本体から発する赤光を一時間以上見続けなければならないわ」
「ふーん、そうか。それで廃工場で宝石の光を直接見たオレと居眠り野郎も無事で済んだわけだ」
ゴッドブレスの中毒者がみんな肝心のドラッグを持っていない理由が分かった。見た目が宝石で一度使うと跡形もなくなってしまうのだから分かる訳がなかったのだ。
だがもう謎は全て解けたも同然だ。あとは本物のゴッドブレスを見つけるだけだ。サルはやや興奮しながらこう言った。
「ウキィ! それでっ 本物のゴッドブレスはどこにあるんだ」
「ここよ」
「ここだと?」
「ええ、カジノ。一度に多くの人間が一つの宝石を一時間以上も眺めているような不自然な場所があっても、ここならおかしくないわ。きっとVIPエリアね」
「そうだな。きっとそうだ! お前、報酬の約束は覚えているんだろうな」
「ええ。あの、今はまだ持っていないのだけど……、もし取り戻せたら1000万c以上の支払いを約束するわよ」
「1000万c以上!?! うきゃー、その話乗ったぜ! よし、行こうすぐ行こう!」
うっきうっきーになったサルはどこにあるかも分からないVIPエリアに向かって、今すぐ部屋の扉をぶち破る勢いで出ていこうとした。しかしアマガエルがそれを止めた。
「ちょっと待つです」
「なんでだよ。大金が目の前にあるんだぜ。何のためにここまでやって来たと思ってるんだよ」
「行きたいのは山々ですが、オイラはここまでのようです……」
アマガエルは何処か辛そうにそう言った。振り返るとアマガエルは手で足を抑えていた。どうやら出血しているようだ。
「お前、それどうしたんだ」
「どうやらさっき撃たれたみたいです。不覚です」
「そうか。くっ、ううぅ お前は案外悪い奴じゃなかったぜ。立派な墓を立ててやるから、安心してくたばりな」
「いや、まだ死なねえです」
「ちっ」
アマガエルの傷は致命傷ではなかったが、機敏に走ったり飛んだりするのは難しそうだった。
「オイラは一旦離脱するです。これを渡しておくです」
そう言うとアマガエルはサルに無線機を渡した。サルはそれを尻のポケットにしまう。
「何かあればそれで連絡するです」
「お前に頼る事なんかねえよ。ゆっくりくたばっとけ」
「そうさせてもらうです」
そしてアマガエルは足を引き釣りながら部屋から出て行った。
「ねえ、二人って本当は仲いいの? 悪いの?」
「は? 何いってんだお前」
「ううん。何でもないわ。私たちも行きましょう」
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