第6話
都合よく赤美はどんどん人通りの無い方へと進んでいく。そこはプレイエリアとホテルエリアの丁度境い目にある屋内の植物園のような場所だった。今の時期だと季節的に華のある植物が咲いておらず誰も訪れる者はいなかった。
そこで赤美は立ち止まった。時計を見て時間を気にしている。
サルとアマガエルは二手に分かれると逃がさないように赤美の両側から現れた。
「やあお嬢さんこんばんわ。いい夜ですね」
「え!あなたは……! どうしてここにいるの」
「それはこっちのセリフだぜ。お前はオレに宝石さがしを依頼したくせに、色々と自分で嗅ぎまわっているようだな。おっと、宝石じゃなくてドラッグだったか」
「もう、そこまで知ってるのね」
そう言うと赤美は右手をワンピースの胸元に突っこんだ。
「動くな! 妙なマネをするんじゃない。気づいてないのか?オレの仲間が後ろにいるんだぜ」
赤美は拳銃を取りだすつもりだった。けれどサルの警告のせいで抜くことは出来なかった。
「それよ! あなたは秘密を守るって言ってたのに、しゃべっているじゃない。だから私が一人でなんとかしようとしてるのよ」
「それは……勝手に聞いてたアイツが悪いんだ。オレは悪くねえ!」
「ずいぶん勝手な人」
サルはその事に関しては何も反論が出来なかった。しかしそれにはかまわず、赤美の元に近づいていくと彼女から拳銃を取り上げてしまった。そして遠くに投げ捨てる。
「アイツは永年冬眠野郎のなまけ者だが、口は堅い方だぜ。この仕事の事を誰かに話したりなんてしてない。なあ」
「はいです」
アマガエルは大きくうなずいた。
「お前こそ、隠してる事があるだろう。ゴッドブレスてのは何なんだ。お前がドラッグの元締めなのか?」
「違うわ!!!」
赤美はとても強く口調で否定した。
「断じて違うわ!私は止めたいのっ ゴッドブレスは元々私の家の大事な宝だから、悪用されたくないのよ」
「ふむ、じゃあ元締めは誰なんだ」
「私の家の元使用人…………ジージャス・ダムドよ」
―「そこまでだ!!!」―
拡声器の声が響いた。
いつの間にかサルたちは複数の私兵隊によって取り囲まれていた。
その中のゴールドのスパンコールの服を着たひときわ目立つ男が拡声器をもってこちらに話しかけていた。男はアニマロイドでなく人間だった。
「お前はっ ローバン!」
―「お久しぶりですお嬢様」―
サルは赤美にこっそり尋ねた。
(あいつは誰だぜ)
(ローバン。ジージャスと一緒に家の使用人をしていた男よ)
「ローバン!盗んだ宝石はどこ? 私に返して! 悪い事に使うのはもうやめて!」
「お嬢様。物事には適材適所という物がありまして、私どもはそれに従っているだけでございます」
するとローバンは右手を空に掲げた。
「適材適所に従えば、お嬢様は今死ぬべきなのでございます! さあ、私兵ども。そこの邪魔者と一緒にお嬢様を撃て!」
ローバンの合図と共に私兵隊が銃を一斉に掃射した。
「こりゃマズイですッ クソザルこっちです」
「おおっ」
アマガエルが確保した逃げ道に向かってサルは猛ダッシュする。その時サルは赤美の手を掴んでいた。
「どういうつもりなの?」
「お前には聞きたいことが山ほどある。だからここで死なれたら困るぜ」
「え、ちょっと!」
そしてサルは赤美を抱えると、銃弾の雨の中をすり抜けながら通路に逃げ道へと向かった。
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