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第4話

「オラァァン! くたばれウキィ!」


「ひいぃ、お助けーぇ」


 サルとアマガエルはヒルキャニオン郊外のとある廃工場にカチコミに来ていた。

 だが廃工場というのは仮の姿で、実際は今も稼働して毎日ここからヒルキャニオンへある物が出荷されていた。それが一か月前に偶然手に入れたブルーライトペンシルだった。


 この場所を見つけるまでに、二人は似たようないくつかの犯罪拠点をつぶす必要があった。しかしサルのどこにでも侵入できる身軽さを活かした捜査力と、アマガエルの警察の情報網を有効に活用したおかげで、ここまでやって来れたのだった。

 ちなみにアマガエルは多数の犯罪者を検挙した功績で巡査から巡査部長へと昇進していた。


「おい、見ろよ! こんなにたくさんブルーライトが保管してるぜ。ここなら何かあるかもな」


「ええ、そうですね。現物が見つかるといいのですが」


 これまで複数のゴッドブレスの使用者がブルーライトを持っていた事から、このアイテムが事件に何らかの関わりがある事が分かっていた。だが逆に肝心のゴッドブレスの薬の現物らしきものは一つも見つかっていなかった。

 しかし確実にその薬物は存在するのだ。中毒者にはみな禁断症状が表れている。


 サルは捉えたゴロツキの一人に詰め寄ってこう言った。


「おい、そのゴッドブレスはどこに隠してあるんだよ~」


「言えねえっ ボスに殺される!」


「ああ? ボス? これもまたか」


 ここに来るまでも、ゴロツキどもは口をそろえて言っていた。ボスが怖い。ボスに殺されると。


「そんな奴よりオレの方がずっと怖いぞ!うきゃー」


「ヤメルのですクソザル。それよりこっちに来てください。面白いものを見つけました」


 そう言ってアマガエルはサルに監視カメラの映像を見せた。そこには珍しい人間の少女の姿が映っていた。


「あ、コイツは!」


「やっぱり、クソザルの依頼人ですか。少し前にここに来てますね」


 時刻は三日前を示していた。

 赤美は門の前で何か待っていた。しばらくすると中からアニマロイドが出てきて赤美を招きいれた。そして赤美は一時間ほどで廃工場から出て来た。


「おい、この女は何しにここに来たんだ?」


「し、知らねえよ。けど、お偉いさんの客って聞いてたぜ」


「くそーやっぱ悪いやつじゃねえか」


 映像の中で赤美はダウンコートのポケットから何かを取りだした。それはかなり大きな物のようだった。

 カメラの画質が悪くて手に持っている物までよく見えない。


「あいつ、何をもってるんだ。よく見えない!」


「多分これです」


 そう言ってアマガエルが近くの棚を開けて取り出したのは、手の平に収まりきらないほどの大きな赤い宝石だった。それらはダイヤのようにひし形のカットが施されていた。


「うわぁ、お前それ、ゴッドブレスじゃないのか!」


「違いますよ。ゴッドブレスは宝石じゃなくて薬物だって言ったじゃないですか。第一こんな大きな宝石があるわけないです。それに、ほら見てください!」


 するとアマガエルは色んなところにある収納を全部開けてみせた。そしてその中には、アマガエルが見せたような大きな宝石が山ほど詰まっていた。


「うわあ、たくさんあるな」


「でしょう。きっとガラス玉ですよ。宝石だったらこんなにたくさん用意できないですから」


「でも、こんな数何に使うんだろうな……」


「………………」


 その時、二人の思考は一つになった。何故こんな物が違法薬物の生産工場に大量にあるのかと。


「おい、お前!」


「な、なにも話さないぞ!」


「そうか……税金泥棒、脈を測れ」


 アマガエルは手ではなく自慢の舌をアニマロイドの手首に巻き付けた。嘘をつき、脈拍が速くなればこれですぐに分かる。


「質問をする。お前は黙って聞いてるだけでいい。分かったな」


「やめろッふぐッ」


 サルはゴロツキの口をガムテでふさいだ。余計な事しか喋らない口なんて不要だ。


「名探偵サル・スクラッチの推理を聞かせてやるぜ。さあ、情報を整理しよう。きっかけはオレが宝石探しの依頼を受けた事だ。探し物はゴッドブレスという宝石だったがそれは見つからず、結局、同じ名前の違法ドラッグを探す事になった。そしてドラッグの工場で始めに探していた宝石と特徴の一致した物が大量に見つかった。なあ、この二つは関係していると思わないか。もしくはこの宝石が例のドラッグそのものだとか……」


 表面上ではゴロツキの様子に変わりは無い。しかしアマガエルは僅かな脈拍の変化を見逃さなかった。サルは推理を続ける。


「次だ。ゴッドブレスの中毒者はみんなこの工場にもるブルーライトを持っていた。オレは、ブルーライトと赤い宝石の二つのアイテムがこの事件のカギだと思うぜ」


 するとサルはゴロツキの口に張っていたガムテープを思いっきりはがすとこう言った。


「なあ、この二つをどう使えばゴッドブレスを服用できるんだ。教えてくれよ」


「ばーか。そんなの教えるか」


「なるほどなるほど。やっぱりコイツを使ってゴッドブレスを服用するんだな」


「あッ しまった!」


 サルは再びゴロツキの口にガムテを張り付けた。そしてアマガエルと二人で相談を始めた。目の前にはブルーライトと赤い宝石―ゴッドブレスがある。


「いくつか、分からない事がある。この宝石はなんだ?ただの鉱石じゃないよな」


「分からないです。けど宝飾品だとしたら余りのも大きすぎます。だから希少な鉱石とかではないと思うです。それに持ってみてください」


 そう言われてサルは赤い宝石を手に取ってみた。すると思った以上の軽さに驚いた。


「軽い。まるで中身が無いみたいだぜ」


「ええ、ガラス玉だとしてもこんなに軽くはないです」


「うーん、わかんねえ。次」


 二つ目の謎はサルの所に依頼に来た少女、岡野赤美の目的についてだ。


 彼女はサルに宝石を探せと言っておきながら、監視カメラの映像では既に宝石は彼女の手にあるようだった。そしてその宝石はここに余るほどある。


「これも分からないです」


「そうだな。どうせ金は直接もらうんだ。その時に聞こうぜ」


 そして最後の謎は、ドラッグの使用方法についてだ。


 既に出回っている違法薬物は粉だったり植物だったりするが、宝石というのは二人とも聞いた事が無かった。


「こんなのどうやって飲むんだ? 大きすぎてゼリーを使っても飲み込めないぜ」


「違いますよ。風邪クスリじゃないんです。こういう危ないクスリは火で炙ったりするんですよ」


「炙る? 宝石を炙ってどうするんだ」


「さあ、それは………………」


 二人とも考えこんでしまった。こんなのお手上げだ。

 だがその時、サルはブルーライトの事を思い出した。


「ああ、これを使うんじゃないのか」


 そう言うとサルはブルーライトを赤い宝石に当てた。


「そんなに考えなしにやっては危ないですよ」


 ブルーライトが当たると宝石は光を吸収しだした。やがて宝石が内からまぶしい光を出し始めた。


「なんだコレ!? 爆発するのか?」


「逃げますのです!」


 二人はダッシュで廃工場から飛び出した。しかし宝石から出た眩い光は、二人が工場から出る頃には収まっていた。


「戻ってみるのです」


 二人は慎重に建物の中に戻った。


 すると拘束していたゴロツキの何人かが唸り声をあげ暴れていた。彼らの瞳は一様に宝石のように赤く染まっていた。


「これは……一体」


「クソザル。あれを見るのです」


 そう言われてさっきまで居た場所を見ると、さっきまでそこにあったハズの赤い宝石が無くなっていた。となりにはブルーライトが一本落ちていた。


「強い発光と共に赤い宝石は消えてしまった。つまり、そう言う事か。さっきの光が、中毒者の症状の引き金になっていたってわけだ」


 事件がだんだんと明らかになってきた。この事件を解決すれば、オレも一躍名探偵だ。


 ん、しかし待て。宝石が消えてしまったのなら、報酬はどうなるんだ?

ご拝読いただきありがとうございます!


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この先もよろしくお願いいたします。

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