第2話
サル・スクラッチはまず最初に街の宝石商をしらみつぶしに当たってみる事から始めてみた。だがどの宝石店でもそんな名前の宝石は無いと言われた。
「ゴッドブレスっていう赤い宝石だ。ホントにないのかい」
「そんな物聞いた事ないです。ルビーですか? 代わりの物ならご用意できますよ」
「いや、そうじゃない。……じゃましたな」
表通りの宝石店に無いとすると考えられる可能性は一つ。裏通りの闇の骨董市の品だという事だ。
しかしそこでも求めていた物はなかった。
「そんなの無いよ。さっさと帰ってくれ」
「ちょ、ちょっと! まだ話が……」
それどころか店から追い出される始末だ。
―なんだあの店は。接客がまるでなってないじゃないか―
サルはぷんすか怒りながら裏通りをあとにした。
それにしても困った。手がかりがちっとも見つかない。だがこういう時に、探偵はどうするべきか決まっていた。
「そこのお前、ゴッドブレスについて何か知らないか?」
「はあ? あんた何いってんだ」
「だめか。次! そこのお前!」
もちろん聞き込みである。サルは人通りの多い場所に行き、道行く人に対しゴッドブレスの情報を手当たり次第に聞いて回っていた。
「こらぁ! そこのお前なにをしている!」
そこに現れたのは二人の警察官だ。どちらも犬のアニマロイドだったから二匹と言ってもいいかもしれない。
「え、何って……。仕事だよ。ゴッドブレスの情報を集めてるんだ」
「なんだと?! 怪しい奴め。こい!」
「は? ちょっと!」
そしてサルはそのまま交番へと連行された。
「はなせー! オレは無実だー」
「黙れ怪しいサルめっ 応援にきたそこのカエルの人! コイツの事情聴取を頼む!」
「カエルの人?」
もしやと思って交番の奥を見ると、そこにはサルの見慣れた顔があった。アマガエル巡査だ。
「やれやれ、金に困ってついにやっちまったですか。落ちるとこまで落ちましたね」
「うるさーい! オレは完全完璧無実だっての!」
「どうですかね。あ、あとはオイラに任してください。コイツの罪を全部吐かせて、死刑台に送ってやりますよ」
「いや、そこまでしなくていいけど……じゃあよろしく! 俺たち見回り続けるからっ ワン」
犬のお巡りさん達が去っていくと、サルはアマガエルに自分を見逃すよう懇願した。
「なあ、逃がしてくれよ……オレとお前の仲だろ。手錠を外してくれ」
「それとこれとは別です。オイラ知ってるんです。クソザルが新しい仕事でゴッドブレスの調査を請け負った事。聞いちゃったのです」
「そうなのか、いつの間に……」
探偵事務所の防音設備は紙同然だ。偶然外を通りかかったアマガエルに依頼の内容を聞かれてしまっていたのだった。
「でも街中の宝石商を探したんだけど見つからなかったんだ」
「ゴッドブレスは宝石じゃないです。ドラッグです」
「は? なんだって?」
「やっぱり知らなかったですか……今キャニオンのヤバい事件には大抵ゴッドブレスが関わってるんですよ」
「それってヤバいじゃん」
「ヤバいです」
そこでサルは自分が騙されていた事に気が付いた。サルは仕事で自らの手を悪事に染めないと誓っていたのだ。腹の底から怒りが沸々湧いてくる。
「あの人間の女め。許さん!」
「分かったらもうこんな危ない事はやめるのです」
「いいや……やめねえ」
「はあ、何を言ってるですか?」
アマガエルに尋ねられると、サルはにやりと笑ってこう言った。
「オレにいい考えがある。お前も協力しろ」
「なんですか」
「あの女、前金でオレに100万cもくれたんだ。それにゴッドブレスを見つければ十倍寄越すと言っている」
「ひゃく…じゅうばいですか?!」
「ああ、だから仕事をこなして金はもらおう。そして金を受け取った後にお前が女を逮捕すればいい」
「うーん。賭けレースで失ったお金は手に入るし、オイラは悪党を捕まえて出世できる。悪くないアイデアですね」
するとアマガエルは金庫から鍵を取り出してくるとサルの手錠を解いた。
「この汚職警官め。よろしくな!」
「金は山分けです!」
二人の作戦が始まった。
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