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第10話

 …………だが物語の結末はそう簡単にもいかなかった。


 ゴットブレスを奪われ激怒したジージャスは、ついに禁じ手を使うことにした。

 取り出したのはペン型ライト、そしてゴットブレスの複製品だ。


「あの女……そしてエテコウめー。目にもの見せてやるっ」


 そして宝石にライトの光を当て、そこから発する赤光を直接視た。


「ぐぉぉぉ…………」


 するとただの人間のハズのジージャス・ダムドの背中からは蝙蝠のような翼が生え、手は狼のような鋭い爪に変化し、顔はアブのような大きな複眼へと変わった。


((八つ裂きにしてやるぅーーー))


 人間から化け物へと姿を変えたジージャスは蝙蝠の羽で空を飛び、サル達の乗っているパトカーに目掛けて追いかけて来た。


 その姿に逃げていたサルも気づいた。自分たちの後ろからいくつかの車をなぎ倒しながら、迫って来る怪物の姿を確認したからだ。


「な、な、なんだ~!」


「きっとジージャスだわ。ゴットブレスの魔力で自分を怪物に変えたのよ」


「なんだと? あれがあの人間男?」


 ジージャス・ダムドは交通法無視で、すっ飛ばしているアマガエルのパトカーよりも速かった。現にどんどん追い詰められていた。


「どうすんだ。なんか武器とかないのかよ」


「一応あるです。けどここじゃ使えないです。道をカエルです」


「お、おうよ」


 アマガエルはハンドルを切ると、大通りを外れて細い脇道を進みだした。普通の車なら通るためには減速が必要だが、アマガエルのドライビングテクニックならそれも不要だ。


((マーテーー))


 しかしジージャスはどんな悪路でも執拗に三人を追いかけて来た。


 やがてパトカーは海沿いを走りだした。


「おい、一体どこに行く気だ。冬眠のし過ぎで頭が鈍ったか?この先には何もないぞ」


「ええ、分かっているです。この先は行き止まり。ですがそこでなら…………」


 パトカーが行きついたのは建設途中の橋の上だ。建設途中のため橋は途中までしか掛かっていない。


「クソザル。これを使ってください」


 そう言ってアマガエルが取り出したのはバズーカ砲だ。この街で一般の所持が認められているのは口径の小さい拳銃までだ。


「署から拝借してきちゃいました。これは首ですかね」


「この汚職警官がっ ……見直したぜ!」


 サルはバズーカを肩に担いだ。砲弾は一発しかないので、外すことは出来ない。


「サル…………」


「心配するな。そこで見ておけ」


「うん。分かったわ」


「さあ、掴まってです。スピードを上げるです」


 パトカーは橋の上で一気にスピードを上げた。そして橋の端まで行くとドリフトで方向転換。来た道を引き返す。目の前には追いかけてきたジージャスが近づいて来る。


「近づいてから当てるです」


「分かってる」


 ジージャスとパトカー。二つの物体は同じくらいの速さで接近していた。

 そして互いの点が交差する瞬間。サルは引き金を引いた。


 ズガーン


 至近距離で爆発を受けたジージャスはそのまま海の底に沈んで行った。



 翌日。ジージャスカジノが閉鎖されたとの報道が流れた。違法薬物ゴットブレスの販売の他のも、様々な悪事に加担していた証拠が出てきて、ヒルキャニオン警察がカジノを全面差し押さえとなった。


 そのせいで、サルの報酬も無くなってしまった。

 赤美はサルに払うハズだった1000万cをジージャスの金庫から拝借して支払うつもりだったのだ。


「全く、とんでもねえ小娘だぜ」


「ぐ。あの時盗り損ねたあなたが悪いんでしょ」


「俺は探偵の仕事で悪事はしないと決めているんだ。泥棒なんてしないよ。お前こそ延べ棒のひとつ盗んでくれば良かったじゃないか」


「そんな余裕なかったわよっ」


 二人はあれからずっと毎日こんな調子だ。1000万cの借金を返済するため、岡野赤美はサルの元で探偵助手として働き始めた。


「もっと仲良くするです」


「お前は交番に帰れよ! 昇進したんだろ」


「そんなの取り消しです。交通違反に武器の無断持ち出し。首が飛ばなかっただけましです。ボリボリ」


 ソファの上でせんべいを貪りながらアマガエル巡査はそう言った。


 あんだけ苦労したのに、結局収益はゼロだ。前金の100万cもカジノのルーレットでとっくに消えた。

 得た物といえば、一人の女の子の笑顔くらいか…………


 その時、ちりんとベルの鳴る音がした。探偵事務所に来客だ。


「ようこそ!スクラッチ探偵事務所へ!」

完結までお付き合いいただきありがとうございました。


次回作にもご期待ください。

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