鏡の中の私は泣いてました
“しろかえで”につき、今日はエロはございません(笑)
『もみじ』と言う私の名前は生まれ月と……生まれつき明るい髪色から祖母が名付けてくれたと聞いた。
実際、中学高校と半分疑いの目で見る生活指導の先生に、この話を引き合いにして説明を繰り返したものだ。
“やんちゃ”と勘違いされるのが嫌で小学校から変わらずの“おかっぱボブ”で通した。
もう、20代後半なのに……
そんな私でも短大時代に初めてカレシができて……カレはとてもいい人だった。
そう、佳幸くんは今では“過去の人”
本音を言うと短大を卒業したらすぐにでも結婚したかった。
けれども二つ年上の佳幸くんも同じ社会人1年生だし、結婚はもう少ししてからという事になり、取りあえずは就職して……半年後、私は会社から“欠員の穴埋めの為の転勤”をいきなり言い渡された。次の新入社員が来たら戻してもらえると言う条件付きで……
しかし、私は未だに本社勤務。福利厚生の乏しい会社で女子寮など無く、家賃補助も3万だから都会の家賃相場では赤字だ(あるにはあったが築50年クラスの色々と不十分な物件で若い女性の独り暮らしには不向き)。
早く返してもらおうと一所懸命に仕事したのが却ってあだになったのか、色々任される様になってしまい……その割に昇給は毎年3000円程度……入って来る後輩たちは勿論自宅通勤者ばかり!! けれども“男性抜きのお付き合い”では私が一番多く支払わなくてはいけない!!
後輩から「もみじさん!独り暮らしなんですよね!いいなあ~自由で!!」なんて言われても皮肉にしか聞こえない程、お金に不自由している。
帰省(特にお正月)だってままならない!!
そんな数年が過ぎて……佳幸くんとは“自然消滅”になってしまった。
この“自然消滅”というのが厄介で……なかなか踏ん切りが付かない!!
私は佳幸くんがすべてだった。
年に何度かのデートは……何かと“男の付き合い”が多いカレに負担を掛けたくないからキッチリ割り勘だったし、誕プレとかはキチンと使って貰えるよう、なるだけ良い物を選んで贈った。
こんなわけで貯金をする余裕の無い私は都会の遊びも知らないし、都会のオトコなんて知る由も無い!!
そう、合コンすら行った事が無いのだ!!
「“地元”にカレシが居るので」と断り続けている……
“佳幸くんとの結婚”という目的を失った今、私の日常は完全にアパートと会社の往復。
時々行くスーパーは値引きシール目当てで……ふと、眺めたウインドウに映った私は着た切り雀で髪も痛んだまま随分伸びていた。
「“1000円カット”って女性もOKなのかしら?……」
こんな事まで考えてしまう。
前後のカゴが特売、値引き品で満載になっている自転車を停め、アパートの階段を往復して荷物を部屋に運び込む。最後にポストを覗くと厚手の封筒が入っていた。
裏返してみると懐かしい親友の字だ。
部屋に帰り“戦利品”の片付けもそこそこにペーパーナイフを使うと、中にもう一通の封筒が入っていた……
東 畑 佳 幸
莉 奈
(旧姓 吉田)
これだけで全てが分かった。
一緒に入っていた便箋の束はゴミ箱に捨て、手元にある中で一番まともなペンで欠席に丸を付けた。
明日は仏滅だけど別に出しても構わないよね!
ああ、お腹空かない!!
けど……賞味期限が今日のお惣菜やお弁当は食べなきゃ!!
……あれ!サザ●さんやちび〇子ちゃんも終わったのか……もうすぐ出社だなぁ~
発泡酒、冷やして置いたけど……やっぱ飲むのは止めとこっかなー♪
いっけなーい!!
手、洗ってない!!
リズムで無理やり動かした体を洗面台まで運ぶ。
そうして鏡に映し出された私の顔は
みっともなく泣いていた。
おしまい
書いて居て……
なんとも身につまされる??やるせない思いです(-_-;)
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