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何度洛陽を迎えても  作者: 赤羽テイト
第1章 邂逅と契約
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第8話

 ともかく理由は分からないが厄介な魔法を無力化する手段を得ることができたのは大きい。


「ここでお前を討伐するっ!!」


「グルルルル……」


 ふと魔獣が魔法を放ったタイミングの姿勢から首から、上以外は全く動いていないのに気付いた。


 もしや魔法はもしかしたらデメリットとして、首から上を除いての全体硬直があるのかと観察すると、若干身体が痙攣しているように見えた。


 言われてみれば洞窟に追い込まれる際も風の刃を避ける際に転げまわっていたが、ついぞ魔獣からの直接的な追撃が来なかったことを思い出す。


 そしてもう一つ思い出す。魔獣は魔法を一発ずつしか撃ってきていない。つまり連続で打つことはできないのではないだろうか?


 推測に推測を重ねた物だが突くべき隙を見つけられたのはデカい。


 こいつは知能が高い事ということは俺が洞窟に追い詰められた事や、少女が俺を庇う原因となった魔法の使い方から明らかだ。


 下手な小細工は無しで魔獣に向かって正面から突っ込む。


 それに対抗するように魔獣も俺に向かって正面から突撃してきた。やはり速い、が対応出来ないほどでない!


 小手調べとばかりに魔獣は俺の顔に向かって噛みつこうとする。それを右に首をひねって回避し、後ろへ抜けていく魔獣へ向け身体を反転させ剣を振り下ろす。


 魔獣は後ろ左足を上げることで剣を爪で受け止めるとともに、振り下ろした剣の威力を利用し前方へ飛ぶ。


「シッ!」


 俺は着地後こちらへ身体を向ける瞬間を狙うべく、振り下ろした剣を右下に構え前傾姿勢で前に駆けだした。

 魔獣は予想に反して着地後前方に駆け出し、こちらから一旦距離を置くことを選択した。


「「――」」


 お互い距離が出来たことで一旦仕切り直しの形となり、俺は剣を正眼に構え魔獣はこちらに正面を向け態勢を低くしている。


 ……今のやり取りで恐らく今の力が溢れている状態は身体能力でいうと、推定Cランクの魔獣とほぼ同じかやや優勢であるように感じる。


 感覚で言うと身体強化が常時発動しているような物に感じる。


 身体強化とは人族のみが持つ魔力を使用することで、身体能力を上げたり思考加速を行う技術でCランク以上の上級冒険者必須の能力だ。


 魔力消費が激しいため膨大な魔力量の持ち主以外は、常時発動が難しくからCランクに成るためには、この身体強化をスムーズに切り替えられ戦闘の要所で使用できることが必須となる。


 俺は身体強化自体は使用できるがまだスムーズに切り替えできない為Dランクであり、ウィンドウルフ戦でも身体強化を戦闘に組み込むことができなかった。


 Bランクになるには戦闘中身体強化を常時発動できるか、Aランク以上になると身体強化の出力または特殊な才能を持っているかでなれるかが決まる。


 ただ俺は身体強化を発動していないためこの強化は何か別種の力のように感じる。


 俺は身体強化の重ね掛けを剣を振って試して見たくなったが、明らかに剣速が上がると魔獣に警戒されてしまう可能性がある。


 意表を突くための手札はまだ残しておきたいので、いつでも身体強化を発動できるよう準備しておけば……。


 大雑把にだが攻めるプランが組めたので今度はこちらから攻勢に出た。


「は!?」


 そう思い俺が駆けだすのと同時に魔獣は再度反転し、白髪の少女目掛けて駆け出した。魔獣の野郎、急に狙いを変えてきやがった!


「きゃあ!」


「くそっ、間に合えっ!!」


 庇ってくれた少女を今度は俺が助けるべく、手札がばれるのも厭わず身体強化を発動、少女と魔獣の間に身体を滑り込ませる。


 この時俺の速さに再度魔獣が驚いた表情を一瞬見せたがすぐに俺に狙いを変え、構わずとびかかりつつ魔法を放ってくるのを知覚する。


「おぉおおおおおっ!!」


 魔法が背後から迫ってくるのを感じ身体強化が乗ったままの身体で、左足を軸に右回転で百八十度反転し魔法切りを行う。魔法を切った勢いのまま再度右回転を行い魔獣を正面で迎え撃つ。


 この時魔獣は俺の首をかみちぎるような軌道で飛び掛かってきているが、空中ではそもそも軌道を変えることができない上に奴は首下が硬直しているはず。その証拠に魔獣が痙攣している事を確認できた。


 そう分析し魔獣の攻撃を避けて絶好の反撃するタイミングを計っているその時、魔獣と目が合ったがその目は笑っているように見えた。


 直後出来ないと推測していた魔法の連続使用を行い、またしても風の刃が右後ろからも飛んでくる気配を俺は感じた。


「嘘だろっ!?」


 いくら知能が高そうだといっても、まさか魔法の連続使用出来ないと思わせる程の知能があると思っていなかった。風の刃と魔獣の攻撃は絶妙なタイミングで迫っているため、剣一本では両方の迎撃・回避は不可能だ。


「ガルルァ!!」


 ここで決めるつもりなのだろう。咆哮をあげて口を限界まで広げ、鋭い牙が並ぶ口内を覗かせている。


 風の刃を受けた場合、その破壊力から一発で致命傷になるだろう。だが魔獣の攻撃は受け方ではほぼ無傷で凌ぐことができるはず。


 一瞬でそれを判断し風の刃を迎撃することを選択。百五十度ほど体を右へ回転させ右手の剣を構えつつ、また魔獣のダメージを防ぐためとっさに左手で剣の鞘を腰から引き抜き、魔獣の顔と自分の間に掲げた。


「ぐぅ……」


「アオォン」


 そして右手の剣で風の刃を迎撃する。直後魔獣が左手で掲げていた剣の鞘に激突し、俺と魔獣はそのまま団子状になって地面を転がった。結果、俺は魔獣の上にのるような形で静止した。


 魔獣は魔法を使用後の硬直が治りかけていたが、万全の状態からの動きからは明らかに程遠く力も入っていない。


 俺はその隙を逃さないようになんとか落とさずにいた右手の剣を、魔獣の首に向かって素早く振り下ろし首を落とした。


「ふぅーー……なんとか勝てた……か……」


 こうして俺は初めての魔獣との戦闘にからくも勝利したのだった。

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