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何度洛陽を迎えても  作者: 赤羽テイト
第1章 邂逅と契約
6/31

第6話 ★

 魔獣だ、あれはどう考えても。


 先程相対していた狼共がせいぜい全長一メートル程度だった体格からも判定できるが、そもそもまとう雰囲気の格が明らかに違う。


 見た瞬間に本能でわかった、相対したら速攻で殺されると。


 だが魔獣も俺を逃がす気はないのだろう、静かに相対しつつ俺を見つめる鋭い眼差しには明確な殺意が見える。


 ウィンドウルフの魔獣の固有魔法は名が示す通り、「風」。


 過去討伐された個体は、風を用いた不可視の刃を飛ばしてくるとギルドの資料には記載があった。


 先ほどの地面を見るに風の刃の威力は相当で、当たれば一発で致命傷となるだろう。


 だがとっさに回避が間に合った事から、刃の速度はそこまで早くないかもしれない。


 風の刃威力重視に見える事から安易に避けるられる速度であることを祈りつつ、俺は魔獣に背を向け全力で逃げの姿勢を取った。


 背後を気にしながら街へとつながる街道方面へ数分間全力で逃げていると、ふと後ろから魔獣が追って来てない事に気付いた。


「ハッ……ハッ……ッハァ……!」


 まさか見逃されたのか? そんなそんなわけがないと思いつつ、全速力で走ることに疲れてきたので上がってきた息を整えるため、若干速度を落とし背後を気にしつつ走り続ける。


 その直後、また嫌な予感を感じたためその感覚に従いつつ左へ飛んだ。


 すると予感通り俺が元居た場所を風が通り過ぎる感覚がし、俺の進行方向にあった直径一メートルはある木がぶった切られた。


「……」


 魔獣は先ほどまでの俺の進行方向に対して、右後ろの方向からゆったりとした足取りで俺の前へと姿を現した。


 そして相変わらず静かな殺意を俺に向けてくる。また俺は全速力で駆けることなった。


 この時雨で視界が思った以上に悪くなっていた為、方向を間違えやすくなっていることに気づかなかった。



>>>>>



「くぅ……」


 そして同様のことがその後四回行われ、気づけば俺は知らない洞窟の中へと追い詰められていた。


 三回目あたりにもしかしたらと思っていたが、やはり俺は逃げる方向を風の刃で誘導されていたようだ。


 だが時に身体強化を発動し全力で走ることに精一杯で最後の方は方向を気にする余裕がなかった。


 逃げている途中救援を呼ぶため携帯を取り出したが、森の中なので当然のように圏外となっていてギルドに連絡は無理そうだった。


 夢中で逃げているうちに小雨が大雨になっていたのだろう。洞窟の入り口からバケツをひっくり返したような雨音が聞こえてくる。


 下級ポーションの回復作用もあって何とか長時間走ることができたが、さすがに途中で効果時間が切れた上に、雨で重くなった衣服を着たままでもう走ることはできそうもなかった。


 そもそも追い詰められているので、もう走ることができる場所といえば目の前の魔獣までの距離くらいなのだが。


「グルルルル……」


 初めて魔獣は唸り声をあげた。この洞窟で確実に俺を仕留めるという強い意志を感じた。


「……戦うしか……ないのか……」


 俺は疲労と重い服で鈍くなった体を無理やり動かし、自分の剣を正眼に構え魔獣と相対した。


「……せめて一矢報いてやるよ」


 魔獣も俺が覚悟を決めたことを感じ取ったのか、こちらに身体を向け態勢を低くしいつでも飛び出せる状態になったいた。


「「――ッ!!」」


 俺と魔獣の仕掛けるタイミングは意図せず同時だった。


 正面から一気に距離を詰めていく俺と魔獣、だがしかし魔獣はとことん慎重で狡猾だった。


 正面の魔獣に意識を向けていたため、俺の左後ろから致命傷となる不可視の空気の刃が迫っていることに俺は気づけなかった。


「テイトっ!!」


 知らない声が俺の名前を読んだ直後に襟元を強く引っ張られる感覚があり、俺は右後ろに尻餅をついた状態で引き倒されていた。


 その結果、風の刃が俺に届くことはなかったが代わりに俺を引っ張った人物なのだろう、どこからともなく現れた真っ白な少女が俺の身代わりとなった。


 これが……「夢」の中で最後まで共に戦った少女と瓜二つの少女との出会いだった。

挿絵(By みてみん)

※ノベルAIにて作成した挿絵です。

※突き飛ばすようなイラストにしたかったけどこれが限界でした。

※AIイラストの為毎回キャラの雰囲気は変わる可能性が有ります。

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