第3話 ★
雑貨屋は俺と同様に朝からクエストに出る冒険者が何組か買い物をしていた。
店内は棚が所狭しと並び、その棚に綺麗にポーションなどが並べられている。
この店では店の入り口にある買い物かごに商品を入れ、かごをカウンターへと持って行き精算をする方式だ。
ウルフ用の対策として音響弾や閃光弾を一個ずつかごへ放り込む。
久しぶりの討伐系クエストだったので普段常備している下級ポーションとは別に、中級ポーションも念のための保険として一個だけ購入しようかな……。
下級ポーションで全快まで回復できる傷の目安は、自分でポーションを使用できるくらいの傷と言われている。
中級ポーションとなると身体の欠損は治療できないが、生きてさえいればほとんどの傷から最低限命を繋げる事はできるくらいの回復力がある。
店内に何か掘り出し物がないかをぐるっと見て回るとある物で目が留まった
「……ストレージリングか」
冒険者であればだれもが抱える荷物や、討伐した魔物の素材の持ち運びを楽にするリングだ。
値段を見ると百万円となっており、貯金を使えば買えないことはないが、正直今の俺では費用対効果が薄いため買うのを我慢していた。
やはり高ランクの実力ある冒険者が使用してこそ、素材を沢山運べるメリットが出てくる。
希少性も高いため近い内に売り切れるだろうな……。
俺は後ろ髪を引かれる思いだったがストレージリングから目を逸らし、他に何かいいものがないか店内を物色するのだった。
しかしその後は特にほしいものなどなかったので、カゴを携えてカウンター前の冒険者列の最後尾に並んだ。
列に並びつつ店内をぼーっと眺めていると俺のお会計の番がやってきた。
「エレンさんおはようございます」
「あらー、テイト君じゃない。いらっしゃーい」
エレンさんは金髪碧眼で髪を肩の下あたりまで伸ばし、黒のとんがり帽子を被っているおっとり系の見た目は二十代ぐらいのお姉さんで、趣味が野球の既婚者だ。
彼女は錬金術の職業に就いており、そのスキルで様々なものを作り出し販売している。
他にもこういった物の売買を行う店舗は必ず商業ギルドに所属しており、商業ギルドから商品の仕入れなど行って販売することもしている。
恐らく先ほどのストレージリングも商業ギルドから仕入れたのだろう。
ちなみに彼女の実際の年齢は三十歳とも四十歳とも言われているが、どうなんだろう?
まあこの質問をした人は、悉くその見た目からは想像もつかない威圧感で鋭い眼光を向けられるため、実際の年齢を知る人は旦那さん以外ほとんどいないらしい。
「その恰好はクエストの準備の為に買い物に来たのね?」
「はい、そうですね。ウルフ系の討伐クエストを受注したので」
「なるほど、カゴの中身納得だわ。アイツらの弱点だもんね。いつも魔物間引いてくれてありがとね」
「いえ、こちらこそいつも質の良い商品を安く提供してくれて助かってます」
「良いのよ。この街は割と僻地にあるからあなた達冒険者が安全を維持してくれてるおかげで成り立っているようなものだし。お互い様ってところよ」
「はい、街の安全を維持できるようこれからも微力ながら頑張りますね」
「ふふ、これからもよろしくね。……ええとそれじゃあお会計だけど、音響弾・閃光弾・中級ポーション一個ずつで一万円と少しだけど……一万円ぴったりでいいわよ」
「え、いいんですか? ありがとうございます!」
そう言って俺は自分の財布からお金を取り出した。
「毎度ありがとう。それじゃクエスト気をつけて行ってらっしゃい。ふふ。今日も街の安全の確保よろしくね」
「はい、いってきます」
俺は購入した閃光弾などベルトにあるホルダーにセットし店内を後にする。
クエストの目的であるウィンドウルフが縄張りとしている森は、町の東側に広がっているので俺は東門へ向かった。