再会だったようです……
「なにを……って、俺のもう一つの世界では『はじめまして』ってのは初めて会った相手への決まり文句みたいなものでありまして──」
「そんなことは私でも知ってるの。でも、私とカヅキははじめましての仲ではないじゃない。それに、『もう一つの世界』ってなんのこと?」
ローズは怪訝そうな、また不思議そうな、腑に落ちていない表情でそう言った。
「アイリス、俺はここに来て今初めてローズ様に会ったんだよな?」
「そんなことは存じ上げておりません」
カヅキの中で、カヅキとローズが初対面だという証人になってくれるはずだったアイリスがまさかのことを発した。
「アイリスには、この屋敷の前で倒れていたゴミがあったとしか聞いてなかったから。それで、その人のことをお客さまとして扱いなさいと言ったの。まさかカヅキのことだったなんて」
なんとなく話の流れが掴めてきた。要するに、この世界では元々俺、オリノ・カヅキという人間の存在はあって、ローズとは繋がりがあった。しかし、このメイドは俺のことを初めて見て、ゴミとだけしかローズに伝えていなかったということだ。おそらく。
「──すみません、俺はあなたのことをなんと呼んだらいいでしょうか」
「なにって、今まで通りでいいじゃない」
「今まで通りって……?」
「ロズ子、なんて変な呼び方してたじゃない」
どうやら俺はこの亭主様とそんなに馴れ馴れしい関係にあったらしい。どうやって昨日以前の記憶がないことを説明したらいいか分からない。
「じゃあ、ロズ子と呼ばせていただこう。ちょっと信じ難いことかもしれないけど、聞いてほしい話があるんだ」
「なあに?カヅキ」
──こんなに美しい且つ愛らしい且つ可愛らしい子と、主人公&ヒロインできるなんて、異世界最っ高じゃねえか!
そんなことを考えながら、
「ごめん、俺には眠りによって行き来する、『もう一つの世界』があるらしくて。今までずっとその世界で俺の記憶は生活してたらしくて。昨日アイリスに拾われた時点以前のこの世界の記憶が全くないんだ──」
「まったくない──なんて言われても、3日前まではあんなに親しかった人にそんなこと言われても、俄には信じ難いわ──」
俺が睡魔に襲われる前に、このことを整理して解決しておかなければ厄介なことになる──