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鉛色の夜明け


 聞き慣れた電子音とともに目が開いた。


 「ここは……」


 辺りを見渡してもなんの変哲もない、ただの『オリノ・カヅキ』の部屋だ。ただ、一つだけ明らかにおかしな事象が確認できる。


 ──うわぁ……

 

 先ほどメイドの前で吐いたあのブツが頬を伝っていた。元々気持ちが悪くて、あのような夢を見ており、その途中で偶然起こったことなのか、将又(はたまた)本当にあの世界が起こっていたのか、男には知る由もなかった。


 ──とりあえずシャワーでも浴びるか……


 汚れたカヅキはシャワーへと向かった。シャワーとは、不思議なものだ。どんなに不快なことがあろうと、恐怖に慄いていようと、合点がいかないことがあろうと、シャワーを浴びている時だけはそれらの感情が払拭され、快感に変わるのだ。事柄に対して楽観的になったカヅキは、思春期特有の自惚(うぬぼ)れ顔で鏡に目をやった。しかし、そこには受け入れ難い光景があった。


 ──ウソ、だろ…………


 言葉を失った。胸のやや心臓寄りの部分に身に覚えのない『印章』が刻印されていたのだ。恐怖のあまり、温かいシャワーを浴びながらも鳥肌がたった。しかし、親に相談したり、助けを求めたりする気には到底なれなかった。とうとう刺青に手を出したと思われたりしたら、理不尽ながらも弁明の余地はない。他にも、ただでさえ浪人生を卒業してしまったこのクソ居候ニートのことで心配させる訳にはいかなかった。

まだ昼なのに、窓に目をやると鉛色の雲のせいか、体育館の裏にある倉庫くらいのどんよりした、重い明るさしかなかった──



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