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お客様は神様です!  作者: hiro.biz
脳漿を絞るまでもない特徴の塊の様な相手【のうしょうをしぼるまでもないとくちょうのかたまりのようなあいて】
9/10

おまけ

【おまけ1】

とある日の夜間。

とある家での出来事……。

「ただいまー」

仕事を終え、帰宅する1人の女性。

歳は21。

高校時代にバイトをしていた大型スーパーに高校卒業時に就職。

就職してから3年。バイト期間を含めると5年間、その大型スーパーに勤めている。

今では一部門のマネージャー任せられている。

所謂『デキる女性』と言うやつである。

「あっ、お姉ちゃん、おかえりー」

そんな女性がリビングのドアを開け、入室してきた事で帰宅に気が付き、声を掛ける1人の少女。

少女の名前は『杠葉 凪沙』

そう、甲示の同級生の少女。

そして、帰宅した女性は凪沙の年の離れた姉だったのである。

「だー……。今日も疲れたー」

荷物を無造作にドサッと置き、ソファーに倒れ込む女性。

仕事場では絶対に見せる事のないだらしのない姿を見せる姉に呆れる凪沙。

「はい、麦茶」

いつもの光景に呆れながらも仕事の疲れを労い1杯の麦茶をテーブルに置く。

凪沙のこの行動もいつもの事である。

凪沙から差し出された麦茶を見て、上体を起こし、ソファーに座り直す。

コップを手に取り、グビグビと一気に飲み干す。

「ぷはーっ。仕事終わりのこの一杯が堪らない!!」※ただの麦茶である。

オヤジ臭い発言をしているが、杠葉一家は父親含め全員が下戸である。

よって、凪沙の姉のこの一言はテレビを見て、見様見真似の発言。

「いつも言ってるけど、あまり行儀良くないよ。それ」

姉の愚行を軽く咎め、飲み終わったコップを下げる。

「まあまあ、固いこと言わないで~。あっ、そういえば今日、面白いお客さんが居てね~」

姉が話を逸らす時の常套手段『今日、お店であった面白い話』である。

姉の『それ以上の小言は不要』と言う無言の圧力。

これもいつもの事なので凪沙も必要以上の注意はしないようにしている。

「ふーん。どんなお客さんだったの?」

姉が注意されないように話を逸らしているだけとは理解していても姉の話の内容が気になってしまう。

これまたいつも繰り返される質問なのである。

しかし、姉の術中に嵌っているのも癪に障るので興味無さそうな雰囲気だけは醸し出すことにしている。

あくまでも『仕方なく姉の話に付き合ってあげているだけ』と言う体で質問をする。

「品出ししてた人が急にバックヤードに戻ってきて、何だ?って思ったら、ココナッツありますか?って。流石に取り扱ってないなーって思いながら話を聞いていたんだけど────」

今日の珍事を楽しそうに話す姉。

一度話すと止まらないタイプなのかペラペラと話し続けている。

凪沙も姉の性格、話し方の癖などを知っているので邪魔をしない程度の相槌を打ちながら続きを聞く。

「────でさー。自分で対応した方が早いなって思って、行ってみたら凪沙と同年代くらいの男の子が居て、ココナッツパウダーとか勧めたんだけど、何に使うんだろうね」

仕事は出来るが料理は出来ない凪沙の姉。

故に料理知識も0。

商品知識はあれど使用目的は不明。

料理のみの知識なら凪沙の方があると言っても過言ではないのである。

「パンとかお菓子なのかなー?日頃聞かない材料だから上級者っぽい感じだよねー」

姉より料理は出来るとはいえ、凪沙も進んで料理をする訳ではない。

偶に母親の手伝いをする程度なので、凪沙も料理知識は乏しいと言わざるを得ない。

よって、凪沙もココナッツパウダーを何に使うかを理解していない。

雰囲気のみでの返事なのである。

「でも、メモ見ながらだったし、上級者だったらココナッツパウダーとかも知ってると思うんだよなー……」

その後も今日の話は続くが、謎は謎のまま2人の勝手な想像での話が続くのであった……。




【おまけ2】

甲示が帰宅した後も暫くの間、口論と言う名の押し付け合いは続く。

そんな騒がしい部屋へ忍び寄る影が1つ……。

「ただいま戻りました」

以前『スレイプニル』を運転した謎の人物です。

「おぉ、戻ったか。意外と遅かったのぅ」

「帰り道で力が尽きかけて徒歩での帰宅だったもので……。それで、皆さんは何を騒いでいるのですか?」

普段は有珠と2人ないので静寂な家内。

最近はヘルメスが居座ることも多いが、今日ほど騒がしくなる事はなかった。

そんな珍しさからの素朴な疑問だった。

「いや……。気にするほどの事ではないのじゃが……。おぉ!そうじゃ、力も尽きかけて疲れておるじゃろう。これでも食べてゆっくり休むのじゃ」

自分たちのあまりにも低レベルな口論内容に少しバツが悪そうに話しだした有珠だったが、目の前のモーダカの存在を知らない事に気が付き、名案と言わんばかりの表情で処理を押し付けようと試みる。

【馬鹿!やめろ!】

有珠の悪魔のような所業を止めようとするガネーシャ。

「餃子……?ですか?」

「いや、甲示が作ったモーダカじゃ」

「甲示様が……?そうですか。お気遣いありがとうございます。……では、お言葉に甘えていただきます」

ガネーシャの制止も虚しく『考察し高察する高札』の存在に気が付かずにモーダカに手を伸ばしてしまう。

その光景を見たガネーシャは目を覆い、この後の惨劇に備える。

「おっ……」

「お?」

「美味しい!何とも言えない皮の弾力と餡の甘さ、そして程よい苦み。その全てが調和している素晴らしい食べ物。流石は甲示様ですね」

「「「……」」」

甲示とモーダカを手放しに称賛。

まさかの評価にその場にいた一同、呆気に取られてしまう。

「き、気に入ったようで何よりだね♪今、誰がコレを食べるかで悩んでいた所だし、良かったら全部食べてくれないかい?」

「先程の騒ぎの原因はコレでしたか。ここまで完成された素晴らしい食べ物なので理解出来ます。……でも、本当に全て頂いてもよろしいのですか?」

「お……おぅ、わ、ワシらは十分に堪能したのじゃ。後はお主の好きにするが良い」

お世辞ではなく、本心だと確信をし、困惑する有珠。

しかし、モーダカも処理出来るwin-winの状況と理解するとモーダカを押し付る。

そんな有珠の行動に反対する者は居ない。

「ありがとうございます」

「じ、じゃあ、今、お茶を入れますね♪」

普段見る事の無いほど浮かれている雰囲気にヘルメスも少し困惑。

モーダカを処理出来る機会である事に間違いはない状況。

お茶を差し出す事でモーダカをスムーズに処理出来るように配慮する。

この場にいた全員の利害関係が一致した瞬間である……。

2つ目のモーダカに手を伸ばしている光景を見て『マジか……』と心の中で呟きながらお茶を差し出す。

「ありがとございます」

出されたお茶を一口啜り、3つ目のモーダカへ手を伸ばす。

「「「……」」」

次々と消えていくモーダカを黙って見守る事しか出来ない状況。

そして、4つ目、5つ目を美味しそうに頬張りながら胃袋へ納る。

「ごちそうさまでした。あー……。美味しかった……。やる事がまだ残っているので失礼します」

パンッと手を合わせ完食した事と軽い感想。

余韻も程々に、湯呑みとタッパーを持って退出。

「「「……」」」

襖が閉じられた後、部屋全体を包む微妙な空気。

「だ、大丈夫なんでしょうか?」

「まあ、昔から彼奴は独自の感性があるから大丈夫じゃろぅ……」

安堵と憂慮が入り混じる微妙な雰囲気。

その後、暫く沈黙が流れたが、程無く解散する流れとなったのであった……。


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