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お客様は神様です!  作者: hiro.biz
有為な存在【ゆういなそんざい】
3/10

1/1

~1週間後(しゅうかんご)

(あさ)から甲示(しんじ)準備万端(じゅんびばんたん)(ととの)えてあります。

「なーくん、今日(きょう)有珠様(ゆずさま)(ところ)()()だよ。準備(じゅんび)出来(でき)てる?」

「みー」

準備(じゅんび)()ってもなーくんは()いて()くのみ。

(なに)荷物(にもつ)()(わけ)ではない。出来(でき)ている以外(いがい)返事(へんじ)()いでしょう。

「じゃあ、しゅっぱーつ!」

「みー」

甲示(しんじ)となーくんは元気(げんき)よく(いえ)()()し、裏山(うらやま)()かいます。


(れい)(ごと)獣道(けものみち)をひたすら(のぼ)り、(ほこら)(まえ)到着(とうちゃく)

「じゃあ、有珠様(ゆずさま)(ところ)()くよ」

甲示(しんじ)はなーくんに(こえ)()け、ポケットから(すず)()()すと(ほこら)奉納(ほうのう)した青銅鏡(せいどうきょう)()かい(おと)()らします。

……すると、青銅鏡(せいどうきょう)から(まばゆ)(ひかり)()()2人(ふたり)(つつ)()みました。


(つぎ)瞬間(しゅんかん)有珠(ゆず)()世界(せかい)移動完了(いどうかんりょう)

2人(ふたり)(いびつ)(かたち)(もん)(まえ)()っています。

「よし、無事(ぶじ)到着(とうちゃく)出来(でき)たみたいだね。じゃあ、有珠様(ゆずさま)(いえ)までしゅっぱーつ!」

「みー」

週間前(しゅうかんまえ)有珠(ゆず)が『金銭面(きんせんめん)をどうにか出来(でき)るかもしれない』と発言(はつげん)していた所為(せい)か、甲示(しんじ)はいつも以上(いじょう)元気(げんき)です。


有珠邸(ゆずてい)

(はじ)めて()(とき)よりは(ある)きやすくなってるけど、やっぱり(とお)いなー……」

「みー」

(すこ)(つか)れた様子(ようす)道中(どうちゅう)感想(かんそう)()べつつ、()れた(かん)じで敷地内(しきちない)(はい)り、玄関(げんかん)()()けます。

「ごめんくださーい。有珠様(ゆずさま)()ますかー?」

「おぉ、甲示(しんじ)か。(はい)るが()い」

甲示(しんじ)(こえ)()けると、(いえ)(おく)から有珠(ゆず)返事(へんじ)()こえてきました。

(はい)れって()ってるけど、何処(どこ)()けば()いんだろう……?」

(すこ)戸惑(とまど)いつつ、(くつ)()玄関(げんかん)()がります。

甲示(しんじ)(くつ)(そろ)えていると、(うし)ろから女性(じょせい)(こえ)()けられました。以前(いぜん)『スレイプニル』を運転(うんてん)していた(かた)です。

甲示様(しんじさま)、こちらです」

「あっ、ありがとうございます」

どうやら今回(こんかい)案内役(あんないやく)(よう)です。


女性(じょせい)案内(あんない)され、甲示(しんじ)有珠(ゆず)()部屋(へや)(とお)されます。

()っておったぞ」

「おぉ!この()(うわさ)()ですかな!?」

部屋(へや)には有珠(ゆず)恰幅(かっぷく)()いオジサンの2人(ふたり)

(おそ)らく、この恰幅(かっぷく)()いオジサンが有珠(ゆず)(はな)していた『心当(こころあ)たり』なのでしょう。

「うむ。甲示(しんじ)ならお(ぬし)(のぞ)みを(かな)えられる可能性(かのうせい)(たか)い。甲示(しんじ)にとっても(わる)(はなし)ではないはずじゃ」

「あのー……。有珠様(ゆずさま)全然(ぜんぜん)(はなし)()えないのですが、説明(せつめい)していただいてもよろしいでしょうか?」

(きゅう)()らないオジサンとの対面(たいめん)(さら)(はな)しかけられた挙句(あげく)有珠(ゆず)()っていて当然(とうぜん)()わんばかりの態度(たいど)(はなし)(すす)めています。

しかし、甲示(しんじ)(はなし)内容(ないよう)理解(りかい)出来(でき)ず、(あたま)(うえ)には大量(たいりょう)の『?』が()かんでいる状況(じょうきょう)です。

「スマン。スマン。この大国主(おおくにぬしの)大神(おおかみ)こそ、(まえ)(はな)した()てじゃ」

「はぁ……」

()()らずの人物(じんぶつ)紹介(しょうかい)された(ところ)(なに)理解(りかい)出来(でき)ず、パッとしない(かえ)しをする甲示(しんじ)

「おろ?お(ぬし)()っとるような有名神(ゆうめいじん)だと(おも)ったんじゃが、拍子抜(ひょうしぬ)けな返事(へんじ)じゃのぅ。もっと(よろこ)ぶと(おも)ったんじゃが……」

()(おぼ)えの()名前(なまえ)なので反応(はんのう)出来(でき)ませんでした。すみません」

「それはそうですな。その()()(おぼ)えのある日本人(にほんじん)(ほう)(すく)ないですぞ。それに、その()習合(しゅうごう)されたもので正確(せいかく)には別物(べつもの)ですな」

「では、(なん)紹介(しょうかい)すれば甲示(しんじ)理解(りかい)出来(でき)るかのぅ?マハーカーラで()いのかのぅ?」

日本人(にほんじん)になら、大黒天(だいこくてん)()えば()いですぞ」

「だ、大黒天(だいこくてん)!?大黒天(だいこくてん)って、あの大黒様(だいこくさま)ですか!?」

「ほっほっほっ」

日本(にほん)でも有名(ゆうめい)七福神(しちふくじん)1柱(ひとはしら)

甲示(しんじ)大黒天(だいこくてん)(こと)()っているようです。

大黒天(だいこくてん)本人(ほんにん)認知(にんち)されている(こと)理解(りかい)し、上機嫌(じょうきげん)様子(ようす)

甲示(しんじ)多少(たしょう)不躾(ぶしつけ)態度(たいど)大目(おおめ)()てくれているようです。

「まあ、(うたが)うのも無理(むり)はないかのぅ。ホレ、(おお)くn……大黒(だいこく)、アレを()せてやらんか」

有珠(ゆず)(うなが)され、大黒天(だいこくてん)(おもむろ)小槌(こづち)()()しました。

かの有名(ゆうめい)な『打出(うちで)小槌(こづち)』でしょう。

大黒天(だいこくてん)()()した小槌(こづち)数回(すうかい)()ります。

すると……。

大量(たいりょう)大判小判(おおばんこばん)()()ます。

「お、おぉ!!!」

その光景(こうけい)()()たりにした甲示(しんじ)歓喜(かんき)(こえ)()げます。

そして、()(まえ)()ちている1(まい)小判(こばん)()()ばす甲示(しんじ)

しかし、(すんで)(ところ)小判(こばん)大黒天(だいこくてん)回収(かいしゅう)されてしまいます。

「コレは……ダメですぞ」

「えー……」

「もし、()って(かえ)っても出所不明(でどころふめい)(もの)をお(かね)()えても色々(いろいろ)問題(もんだい)()ますぞ?」

「た、(たしか)かに」

大黒天(だいこくてん)説明(せつめい)納得(なっとく)する甲示(しんじ)

「コホン……。そこで今回(こんかい)本題(ほんだい)じゃ。大黒(だいこく)()っとる『打出(うちで)小槌(こづち)』の()わりになる(もの)をお(ぬし)(ゆず)ろうと(おも)う」

(かる)咳払(せきばら)いをし、説明(せつめい)(はい)有珠(ゆず)

本当(ほんとう)ですか!?…………お(かね)がザックザク……」

有珠(ゆず)提案(ていあん)()(かがや)かせる甲示(しんじ)

(はじ)めの驚愕(きょうがく)(こえ)以外(いがい)小声(こごえ)(つぶ)くように()ってますが、ブツブツ(つぶや)きながら(いま)にも(よだれ)()らしそうな(ほど)愉悦(ゆえつ)表情(ひょうじょう)で、ニマニマしながらお(かね)(こと)想像(そうぞう)している姿(すがた)(はた)から()ると完全(かんぜん)(あぶ)ない(ひと)です。

()るだけで大判小判(おおばんこばん)大量(たいりょう)生成(せいせい)される小槌(こづち)……。

(たと)代替品(だいたいひん)だとしても期待(きたい)してしまうのは仕方(しかた)ない(こと)でしょう。

「う、うむ……。じゃが、(はなし)最後(さいご)まで()くのじゃ。タダで(わた)すとは()っておらん」

どうやら有珠(ゆず)(はなし)はまだ途中(とちゅう)だったようです。

甲示(しんじ)のあまりの()()具合(ぐあい)とか、(あつ)とか、色々(いろいろ)(こと)有珠(ゆず)多少(たしょう)()気味(ぎみ)です。

「じゃあ、どうすれば()いんですか?」

(すこ)残念(ざんねん)そうな雰囲気(ふんいき)(かも)()していますが、最終的(さいしゅうてき)には(もらえ)えると(かんが)えているのでしょう。

先程(さきほど)までの(ねつ)多少(たしょう)()め、ギリギリ正気(しょうき)()(もど)した程度(ていど)には冷静(れいせい)返答(へんとう)出来(でき)ています。

大黒(だいこく)説明(せつめい)するが()い」

(じつ)先日(せんじつ)息子(むすこ)とこの周辺(しゅうへん)(あそ)びに()たんですな。その(とき)、チョットした事件(じけん)発生(はっせい)して(こま)ってるんですぞ」

事件(じけん)ですか?」

大黒天(だいこくてん)(こと)()()きを(はなし)(はじ)めました。

息子(むすこ)一緒(いっしょ)()りに()ていたんですな。息子(むすこ)()りが得意(とくい)なので、その()大漁(たいりょう)だったんですぞ。しかし、いつの()にか1匹(いっぴき)(ねこ)(ちか)づいてきていたんですな」

(ねこ)ですか……。息子(むすこ)さんは(ねこ)(きら)いとかですか?」

事件(じけん)……。(ねこ)……。

色々(いろいろ)(いや)予感(よかん)がします。

(ちが)うんですぞ。(ねこ)(ちか)づく(こと)自体(じたい)問題(もんだい)()いんですな。問題(もんだい)なのは(ねこ)行動(こうどう)ですぞ……。その(ねこ)はあろう(こと)息子(むすこ)(さかな)()れていた魚籠(びく)(なか)()()み、()()げた(さかな)()らした挙句(あげく)大切(たいせつ)にしていた魚籠(びく)水中(すいちゅう)()とし、紛失(ふんしつ)してしまったんですな」

想像(そうぞう)するだけで大惨事(だいさんじ)です。

ここまで凶悪(きょうあく)悪戯(いたずら)をする(ねこ)心当(こころあ)たりが()るような()いような……。

たぶん()のせいでしょう……。たぶん……。

「うわー……」

甲示(しんじ)当時(とうじ)状況(じょうきょう)想像(そうぞう)して言葉(ことば)()いようです。

「そこで相談(そうだん)なんじゃが……」

「はい!その(ねこ)()つけ()して、(つか)まえれば()いんですね!?」

「いや……犯人(はんにん)は……」

大黒天(だいこくてん)甲示(しんじ)意見(いけん)否定(ひてい)しつつ、甲示(しんじ)(ちか)くの座布団(ざぶとん)(まる)くなっている生物(せいぶつ)横目(よこめ)確認(かくにん)します。

犯人(はんにん)はそやつじゃ」

有珠(ゆず)大黒天(だいこくてん)言葉(ことば)(つづ)きを(おぎな)いつつ、犯人(なーくん)(あご)()します。

……はい、犯人(はんにん)予測(よそく)出来(でき)ていました!!

「そやつ……?えっ?えーーーー!!!!」

甲示(しんじ)有珠(ゆず)()(しめ)方向(ほうこう)になーくんの姿(すがた)確認(かくにん)し、(おどろ)きます。

どうやら甲示(しんじ)はなーくんの(はなし)をしているとは(おも)っていなかったようです。

「そ、それで、大黒様(だいこくさま)息子(むすこ)さんはどうなってしまったんですか?」

「どうと()(こと)()いんですな。多少(たしょう)気落(きお)ちしているだけなんですぞ。……ただ、最近(さいきん)()(ほそ)ってきたような()がしないでもないんですな。(すこ)心配(しんぱい)になって有珠殿(ゆずどの)相談(そうだん)していた(ところ)甲示殿(しんじどの)ならどうにか出来(でき)るかもしれないと()(こと)で、今日(きょう)対面(たいめん)する(はこ)びになったんですぞ」

「そう()われましても……」

(きゅう)(はなし)()られた(ところ)甲示(しんじ)解決策(かいけつさく)打開策(だかいさく)もありません。

反応(はんのう)(こま)るだけです。

「そうですな。有珠殿(ゆずどの)(くわ)しい説明(せつめい)をお(ねが)いしますぞ?」

「なに、(たい)した(はなし)ではない。甲示(しんじ)魚籠(びく)(あたら)しく(つく)ってもらうだけじゃ」

「あのー……。1つ質問(しつもん)してもよろしいでしょうか?」

「なんじゃ?」

「さっきから『びく』って単語(たんご)()ていますが、『びく』って(なん)ですか?」

「おろ?」

神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで(はな)していた有珠(ゆず)ですが、(おも)わぬ質問(しつもん)拍子抜(ひょうしぬ)けした表情(ひょうじょう)()わります。

魚籠(びく)とは()った(さかな)()れる(かご)(こと)ですな」

「クーラーボックスですか?」

()りをした(こと)()甲示(しんじ)にとってはテレビなどで()知識(ちしき)(すべ)てです。

魚籠(びく)=クーラーボックスと想像(そうぞう)とするのが精一杯(せいいっぱい)なのでしょう。

「ま、まぁ、(あなが)間違(まちご)うてはおらんのじゃが……。(なん)説明(せつめい)すれば()いかのぅ……」

(たけ)()んだ(かご)息子(むすこ)使(つか)っていた(わけ)ですな」

説明(せつめい)(こま)有珠(ゆず)(つづ)き、大黒天(だいこくてん)補足説明(ほそくせつめい)をします。

「なるほど……。(ぼく)(たけ)魚籠(びく)(つく)ると……。って無理(むり)ですよ!魚籠(びく)なんて言葉自体(ことばじたい)()らなかったのに、(つく)るだなんて無理(むり)です!!それに、神様(かみさま)たちの(ほう)適任(てきにん)だと(おも)います。(ぼく)(つく)るよりも立派(りっぱ)(もの)(はや)(つく)れるんじゃないですか?」

甲示(しんじ)意見(いけん)(もっと)もだと(おも)います。

「うむ……。それはそうなんじゃが……。材料(ざいりょう)問題(もんだい)があってのぅ。お(ぬし)世界(せかい)にワシらはそう簡単(かんたん)()けんのじゃよ。無理(むり)ではないんじゃが、(ちから)制限(せいげん)されて(おも)うように行動(こうどう)出来(でき)んかったり、色々(いろいろ)制約(せいやく)もある。それに、お(かね)()()わせておらん」

甲示(しんじ)意見(いけん)(たい)し、有珠(ゆず)反論(はんろん)します。

神様(かみさま)にも色々(いろいろ)事情(じじょう)があるようです。

まあ、人間(にんげん)にとっても神様(かみさま)気軽(きがる)現世(げんせ)()()ち『あーだこーだ』と指図(さしず)してくるよりは平穏(へいおん)(くら)らせるので()いと(おも)います。

「じゃあ、(ぼく)(たけ)購入(こうにゅう)してくるので、(つく)れる(かた)にお(ねが)いしてもらうのでどうでしょうか?」

甲示(しんじ)有珠(ゆず)意見(いけん)考慮(こうりょ)し、(ちが)方法(ほうほう)提案(ていあん)します。

「うーむ……」

是非(ぜひ)甲示殿(しんじどの)(つく)ってほしいんですな?(ひと)などの信仰心(しんこうしん)気持(きも)ちなどの『(こころ)』が大切(たいせつ)なんですぞ。()(かみ)(たの)み、(つく)らせることは可能(かのう)ですな。しかし、そんな(もの)気落(きお)ちした状態(じょうたい)息子(むすこ)(もと)(もど)るとは(おも)えないんですぞ」

「そう()(こと)でしたら、頑張(がんば)ってみますが……。(おお)きさとかはどうすれば()いですか?」

以前(いぜん)使(つか)っていた(もの)は────」

身振(みぶ)手振(てぶ)りを(まじ)えながら全体(ぜんたい)(おお)きさや(かたち)などを(こま)かく説明(せつめい)(はじ)めます。

「あっ、すみません。大黒様(だいこくさま)(すこ)()ってください。……有珠様(ゆずさま)(かみ)とペンは()いでしょうか?」

(すこ)()つのじゃ」

有珠(ゆず)部屋(へや)()ると(かみ)とペンを()再度(さいど)入室(にゅうしつ)し、甲示(しんじ)手渡(てわた)します。

「ありがとうございます。大黒様(だいこくさま)説明(せつめい)よろしくお(ねが)いします」

甲示(しんじ)(うなが)され、先程(さきほど)同様(どうよう)説明(せつめい)をし(はじ)める大黒天(だいこくてん)

甲示(しんじ)大黒天(だいこくてん)説明(せつめい)()け、(かみ)(かたち)(おお)きさ、特徴(とくちょう)などをメモしていきます。

「────と()った(かん)じですな」

大黒天(だいこくてん)説明(せつめい)終了(しゅうりょう)

「こんな(かん)じですか?」

甲示(しんじ)自分(じぶん)()いた(もの)大黒天(だいこくてん)()せて確認(かくにん)します。

「この部分(ぶぶん)がもう(すこ)し────」

あーだこーだと甲示(しんじ)のメモを確認(かくにん)しながら(こま)かい部分(ぶぶん)調整(ちょうせい)していきます。

「これで大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」

「たぶん、大丈夫(だいじょうぶ)ですぞ」

大黒様(だいこくさま)(こま)かい指示(しじ)をしていただいたんですが、(ぼく)実力(じつりょく)ではイラスト(どお)りの(しな)出来上(できあ)がるとは(かぎ)りません。それだけは事前(じぜん)にご了承(りょうしょう)していただけますか?」

甲示(しんじ)竹細工(たけざいく)をした経験(けいけん)がありません。

(おも)(どお)りに(つく)れないのは当然(とうぜん)です。

「そこまで立派(りっぱ)(もの)期待(きたい)してないですな。出来(でき)(かぎ)り、懸命(けんめい)(つく)ってくれるだけで満足(まんぞく)ですぞ」

今回(こんかい)大黒天(だいこくてん)発言(はつげん)先刻(せんこく)発言内容(はつげんないよう)の『(こころ)』が重要(じゅうよう)だとしたものに起因(きいん)しているのでしょう。

頑張(がんば)ってみますが、本当(ほんとう)期待(きたい)しないでくださいね。……で、あのー……。材料費(ざいりょうひ)なんですが……」

甲示(しんじ)言出(いいだ)(にく)そうに材料費(ざいりょうひ)(はなし)()()そうとします。

甲示(しんじ)懐事情(ふところじじょう)(かんが)えると金銭面(きんせんめん)()にするのは仕方(しかた)()(こと)でしょう。

大黒天(だいこくてん)甲示(しんじ)材料費(ざいりょうひ)(はなし)をし(はじ)めた途端(とたん)打出(うちで)小槌(こづち)(かる)(かま)え、顕示(けんじ)します。

その姿(すがた)()甲示(しんじ)(なに)かを(さと)ります。

出来(でき)(かぎ)り、全力(ぜんりょく)()()ませていただきます!!」

「よろしく(たの)みますぞ。(しばら)く、有珠殿(ゆずどの)にお世話(せわ)になるつもりなので完成(かんせい)したら(おし)えて()しいんですな」

「はい!」

甲示(しんじ)元気(げんき)よく返事(へんじ)をします。


その()有珠(ゆず)大黒天(だいこくてん)暇乞(いとまご)いをし、有珠邸(ゆずてい)(あと)にするのでした。


甲示(しんじ)有珠邸(ゆずてい)()たのを確認(かくにん)した有珠(ゆず)大黒天(だいこくてん)……。

素直(すなお)()()(そだ)っていますな」

「そうじゃのぅ。多少(たしょう)純粋(じゅんすい)すぎる(ところ)もあるが()()じゃ」

「そうですな。最後(さいご)小槌(こづち)()せただけで、(なに)勘違(かんちが)いしたのか、やる()()してくれたので(なに)よりでしたぞ」

(かね)(わた)さんのか?」

「そんな約束(やくそく)はしてないですな。小槌(こづち)()せただけですぞ?」

「お(ぬし)(わる)いヤツじゃのぅ」

有珠殿(ゆずどの)大概(たいがい)だと(おも)いますな。しかし、代用品(だいようひん)(わた)予定(よてい)ですぞ」

なにやら不穏(ふおん)(?)な(かん)じです……。

2人(ふたり)一体(いったい)(なに)(かんが)えているのでしょう……?

そして、甲示(しんじ)材料費(ざいりょうひ)見合(みあ)うだけの報酬(ほうしゅう)()られるのでしょうか……?


一方(いっぽう)(もと)世界(せかい)(もど)った甲示(しんじ)は……。

「まずは(たけ)()(いれ)れないとなー……。なーくん、ケンちゃんのところに()ってから(かえ)るけど()い?」

「みー」

甲示(しんじ)材料(ざいりょう)確保(かくほ)する(ため)材木店(ざいもくてん)(むか)かうのでした。


「こんにちはー。……ケンちゃん、今日(きょう)店番(みせばん)?おつかれさまー」

入店(にゅうてん)健太(けんた)姿(すがた)確認(かくにん)した甲示(しんじ)健太(けんた)(こえ)()けます。

「あれ?甲示(しんじ)、また(なに)(さが)(もの)?」

「うん、今日(きょう)(たけ)()しくてね」

(たけ)(なに)使(つか)うの?竹垣(たけがき)でも(つく)るのか?」

「チョット、魚籠(びく)(つく)ろうと(おも)ってね」

「びく?びくって(なに)?」

(さかな)(いれ)れる(かご)(こと)だよ」

「あー……アレか。でも、アレって(たけ)じゃなくて竹籤(たけひご)じゃないの?」

竹籤(たけひご)……?それって(たけ)とは(ちが)うの?」

(たけ)(たけ)なんだけど、表面(ひょうめん)緑色(みどりいろ)部分(ぶぶん)だけを()った(かん)じ?って()えば()いのかな?……んー……(いま)現物(げんぶつ)()いから説明(せつめい)(にく)いけど、(たけ)(うす)加工(かこう)した(もの)って()えば()かるかな?……あっ!(すこ)()って……」

健太(けんた)(なに)かを(おも)()し、(かみ)()(はじ)めました。

甲示(しんじ)健太(けんた)手元(てもと)(のぞ)()むと地図(ちず)らしき(もの)()いているようです。

地図(ちず)?ケンちゃん、これ何処(どこ)?」

「……よし、出来(でき)た~!これ、(じい)ちゃんの(いえ)(じい)ちゃん、(いえ)(ちか)くに竹林(ちくりん)所有(しょゆう)してるから、()けば(わか)かると(おも)うよ。(おれ)名前(なまえ)()せば(たけ)(もら)えると(おも)うから()ってみれば?」

本当(ほんとう)!?ココから(とお)い?」

(わた)りに(ふね)とは(まさ)にこの(こと)

材料費(ざいりょうひ)()き、竹籤(たけひご)(こと)まで()けるとなれば、()以外(いがい)選択肢(せんたくし)はないでしょう。

甲示(しんじ)()(こころ)なしか希望(きぼう)()(あふ)れ、キラキラと(かがや)いて()えます。

「んー……自転車(じてんしゃ)30分くらいだから、(ある)きだと2、3時間(じかん)くらいかな?」

意外(いがい)(ちか)い。ありがとう。早速(さっそく)()ってみる……って今日(きょう)()っても大丈夫(だいじょうぶ)かな?」

多分(たぶん)(だれ)かは()ると(おも)うけど……。(いま)電話(でんわ)して確認(かくにん)してみる?」

「うん、お(ねが)い。色々(いろいろ)ゴメンね、ケンちゃん」

「じゃあ、電話(でんわ)してくるから、(すこ)店番(みせばん)(たの)んでいい?お(きゃく)さんが()たら()んで」

()かった。店番(みせばん)(まか)せて!」

(なに)から(なに)まで(いた)れり()くせりです。

閑古鳥(かんこどり)()(みせ)(ばん)数分(すうふん)するだけなら(おそ)るるに(たら)らず。

甲示(しんじ)二つ返事(ふたつへんじ)店番(みせばん)()()けます。

甲示(しんじ)返事(へんじ)()き、健太(けんた)(みせ)(おく)電話(でんわ)()けに()かいました。


数分後(すうふんご)

「おまたせ~。今日(きょう)出掛(でか)ける予定(よてい)()いってさ。(だれ)かは(いえ)()るから何時(いつ)()ても大丈夫(だいじょうぶ)だって」

「じゃあ、早速(さっそく)()ってみるね。ケンちゃん、ありがとう」


甲示(しんじ)健太(けんた)にお(れい)()い、(みせ)(あと)にしました。

一旦(いったん)帰路(きろ)()き、甲示(しんじ)自転車(じてんしゃ)(まえ)(なに)かを(かんが)えます。

自転車(じてんしゃ)、なーくん、健太(けんた)地図(ちず)(じゅん)(なが)めながら再考(さいこう)します……。

自転車(じてんしゃ)()った(ほう)()いのかな……?なーくん、一緒(いっしょ)()く?」

「みー」

「なーくんも一緒(いっしょ)なら、通学(つうがく)使(つか)ってる自転車(じてんしゃ)(まえ)カゴだと、隙間(すきま)(おお)きいし、(あし)(おち)ちたら(あぶ)ないし心配(しんぱい)だなー……」

甲示(しんじ)はなーくんの反応(はんのう)()一緒(いっしょ)()くと判断(はんだん)しました。

通学用(つうがくよう)自転車(じてんしゃ)になーくんを()せて(はし)ると、隙間(すきま)から()ちた(あし)がタイヤに()()まれる危険性(きけんせい)()ります。

「お(かあ)さんが使(つか)っていたママチャリなら……」

甲示(しんじ)はブツブツと(つぶや)きながら、生前(せいぜん)(はは)使(つか)っていた自転車(じてんしゃ)(もと)(あし)(はこ)びます。

甲示母(しんじはは)使(つか)っていたママチャリは、甲示(しんじ)通学用(つうがくよう)使(つか)っている自転車(じてんしゃ)搭載(とうさい)されているワイヤーカゴとは(ちが)い、(とう)()んで(つく)られた(すこ)しオシャレな(まえ)カゴです。

「これなら大丈夫(だいじょうぶ)そう」

甲示(しんじ)自転車(じてんしゃ)(まえ)カゴの状態(じょうたい)確認(かくにん)し、玄関(げんかん)まで自転車(じてんしゃ)()して移動(いどう)します。


「なーくん、おまたせー。これで()くから(まえ)カゴに()って」

「みー」

甲示(しんじ)(まえ)カゴを(かる)(たた)きながら、なーくんに移動(いどう)するように(うなが)します。

……しかし、なーくんは、(まえ)カゴをジーッと()つめたまま(うご)きません。

「なーくん、ココだよ、ココに入って」

甲示(しんじ)再度(さいど)(まえ)カゴを(かる)(たた)きます。

「なー」

なーくんは不満(ふまん)そうに(まえ)カゴを()つめながら()きます。

「もしかして……()れないの?」

「なー!!」

いくら(ねこ)でも、(ちい)さな(まえ)カゴにピンポイントで()()るのは困難(こんなん)なのでしょう。

仕方(しかた)ないなー。(ぼく)()せてあげるね」

仕方(しかた)ない』と面倒臭(めんどくさ)そうに()ってますが、甲示(しんじ)(かお)満面(まんめん)()みを()かべています。

(いま)まで散々(さんざん)、なーくんに()れる(こと)拒否(きょひ)されていたのです。()れる機会(きかい)(おとず)れて(うれ)しいのでしょう。

「じゃあ、()ちあげるよ。せーの……。……うわっ!()びた!」

「な゛ー!!」

(はじ)めての(ねこ)あるあるですね。

(ねこ)人間(にんげん)よりも(ほね)(かず)(おお)く、関節同士(かんせつどうし)可動域(かどういき)(おお)きいので()びます。

通常時(つうじょうじ)(くら)べ、最大(さいだい)(ばい)程度(ていど)()びる(ねこ)もいます。

「……」

()()げられた瞬間(しゅんかん)は、甲示(しんじ)のバカな反応(はんのう)所為(せい)不機嫌(ふきげん)でしたが、その()大人(おとな)しく甲示(しんじ)(かか)()げられ、自転車(じてんしゃ)(まえ)カゴに収納(しゅうのう)されます。

甲示(しんじ)(いま)までのなーくんの反応(はんのう)多少(たしょう)学習(がくしゅう)したのか、なーくんをカゴ(ない)移動(いどう)させる以外(いがい)余計(よけい)行動(こうどう)はしませんでした。

「これでヨシ!なーくん、(あぶ)ないからカゴから()たらダメだよ」

「みー♪」

甲示(しんじ)はなーくんに注意(ちゅうい)をし、自転車(じてんしゃ)(はし)らせます。

なーくんは(まえ)カゴに(はい)ることが出来(でき)満足(まんぞく)そうです。

「じゃあ、しゅっぱーつ♪」


甲示(しんじ)地図(ちず)(たよ)りに健太(けんた)祖父(そふ)(いえ)目指(めざ)します。


途中(とちゅう)何度(なんど)地図(ちず)確認(かくにん)しながら、甲示(しんじ)はそれらしき(いえ)(まえ)到着(とうちゃく)しました。

「ココで()ってるのかな?表札(ひょうさつ)は『財城(ざいき)』だから()ってるよね?間違(まちが)えてたら(いや)だな……」

甲示(しんじ)周囲(しゅうい)(いえ)表札(ひょうさつ)一通(ひととお)()(まわ)り、『財城(ざいき)』の文字(もじ)()(こと)確認(かくにん)します。

「うん、ココで間違(まちが)いない」

甲示(しんじ)がインターホンに()()ばした瞬間(しゅんかん)……。

「もしかして、宮司君(みやつかさくん)宮司甲示君(みやつかさしんじくん)?」

財城邸(ざいきてい)庭付近(にわふきん)から初老(しょうろう)女性(じょせい)(こえ)()けられました。

「はい、宮司(みやつかさ)です。ケンちゃn……じゃなくて、健太君(けんたくん)紹介(しょうかい)(うかがわ)わせていただきました」

「ケンちゃんで大丈夫(だいじょうぶ)よ。(はなし)()いてるから、()がって()がって。……お(じい)さーん、宮司君(みやつかさくん)()ましたよー」

健太(けんた)祖母(そぼ)(おぼ)しき女性(じょせい)甲示(しんじ)(まね)()れ、(いえ)(なか)(むか)かい(こえ)()けます。

(ばあ)さんの(こえ)反応(はんのう)して健太(けんた)祖父(そふ)(いえ)(おく)から(なた)片手(かたて)玄関(げんかん)まで出向(でむ)いてきました。

「おぉ、()たか。健太(けんた)から(はなし)()いとる。じゃあ、()くか」

()く?何処(どこ)にですか?」

「そりゃ、竹取(たけと)りだろ」

(じい)さんはそのまま車庫(しゃこ)(けい)トラに()かいます。

甲示(しんじ)(すみ)(ほう)自転車(じてんしゃ)()き、なーくんに(こえ)()けます。

「なーくん、()りる?」

「みー」

甲示(しんじ)がなーくんを()()げようと()()ばしました。

……しかし、なーくんは甲示(しんじ)()隙間(すきま)()うようにジャンプをし、勝手(かって)にカゴから()りてしまいました。

「……」

再度(さいど)なーくんに(ふれ)機会(きかい)(おとず)れた!と(こころ)(なか)歓喜(かんき)していた甲示(しんじ)(くち)()けたまま呆然(ぼうぜん)としています。

「あらあら、可愛(かわい)いお(きゃく)さんも一緒(いっしょ)だったのね」

(ばあ)さんは、なーくんの姿(すがた)確認(かくにん)し、(すこ)(おどろ)いた反応(はんのう)()せます。

「はい。一緒(いっしょ)()たかったみたいなので()れて()てしまいました。ご迷惑(めいわく)だったでしょうか?」

(べつ)迷惑(めいわく)じゃないわよ。お(じい)さんも(わたし)(ねこ)大好(だいす)きよ。お世話(せわ)大変(たいへん)だから()ってはいないんだけどね……。もし()かったら、(すこ)しの(あいだ)面倒(めんどう)()させてくれないかしら?」

「なーくん、どうする?ケンちゃんのお(ばあ)さんとお留守番(るすばん)してくれる?」

「みー」

大丈夫(だいじょうぶ)だそうです。なーくんをよろしくお(ねが)いします」

「なーくんって()うのね。じゃあ、お(うち)(なか)(はい)りましょうね」

「みー♪」

甲示(しんじ)はなーくんのお世話(せわ)をお(ばあ)さんに(まか)せ、お(じい)さんの()()んだ(けい)トラの助手席(じょしゅせき)()()みます。

(けい)トラの荷台(にだい)にはノコギリや(なた)、チェーンソーなどの道具(どうぐ)積載(せきさい)されていました。

「よろしくお(ねが)いします」

「しっかりシートベルト()めてな」

「はい」

甲示(しんじ)がシートベルトをしたのを確認(かくにん)し、(くるま)出発(しゅっぱつ)します。


10分程度(ていど)(くるま)(はし)らせ、竹林(ちくりん)到着(とうちゃく)しました。

「わぁ、(すご)い」

視界(しかい)一面(いちめん)(たけ)感動(かんどう)する甲示(しんじ)

()()()いかもしれんが、竹害(ちくがい)(おお)くて、想像(そうぞう)している以上(いじょう)手入(てい)れが大変(たいへん)なんだよ」

竹害(ちくがい)?」

「まあ、簡単(かんたん)説明(せつめい)すると、(たけ)()える(こと)による悪影響(あくえいきょう)(こと)だな。(たけ)()(した)()びず、(よこ)(ひろ)がる習性(しゅうせい)がある。だから、(つち)(ささ)えられず土砂災害(どしゃさいがい)などを()()こす。定期的(ていきてき)手入(てい)れをしてやらなあかん」

「へー。綺麗(きれい)()えても(うら)では色々(いろいろ)大変(たいへん)なんですね……」

「そうだな。自然(しぜん)相手(あいて)にするんだ。しっかりと責任(せきにん)()って管理(かんり)せんとな。……で、竹籤(たけひご)(つく)るんだったな?健太(けんた)のヤツ、(ろく)説明(せつめい)をせんと『友達(ともだち)竹籤(たけひご)使(つか)うから、(たけ)()けてあげて』としか説明(せつめい)せんかった。ほんにしょうも()いヤツだ」

「ハハハ……。ケンちゃんらしいって()えばケンちゃんらしいですね。(たけ)魚籠(びく)(つく)りたいので、ケンちゃんに相談(そうだん)したら、お(じい)さんなら(くわ)しく(おし)えてくれるし、(たけ)(もら)えるかもしれないと()われて(うかが)いました」

魚籠(びく)ねぇ……。今時(いまどき)(めずら)しい。まあ、そう()(こと)なら竹籤用(たけひごよう)(たけ)だな……。真竹(またけ)淡竹(はちく)()いな……。(すこ)(まえ)間引(まび)いた(たけ)もあるが、(あたら)しい(ほう)()いだろう……」

(じい)さんは(たけ)種類(しゅるい)などを(つぶ)きながら周囲(しゅうい)見渡(みわた)します。


「コレが()さそうだな。(あぶ)ないから(すこ)(はな)れてなさい」

(じい)さんは1本(いっぽん)(たけ)(まえ)移動(いどう)し、目当(めあて)ての(たけ)(かる)(さす)りながら目的(もくてき)(たけ)(しめ)し、甲示(しんじ)(はな)れるように指示(しじ)()します。

「はい」

(じい)さんは甲示(しんじ)十分(じゅうぶん)(はな)れたのを確認(かくにん)し、チェーンソーで(たけ)()(たお)します。

(たけ)はどれくらい必要(ひつよう)なんだ?」

「あっ……。すみません。竹籤(たけひご)(こと)とかも()かってなくて、(りょう)()まってないんです」

「そうか……。じゃあ、()()えず1本(いっぽん)()いな」

甲示(しんじ)回答(かいとう)()き、お(じい)さんは()(たお)した(たけ)適当(てきとう)(おお)きさに()()けます。

「2つ3つ(けい)トラまで(はこ)ぶのを手伝(てつだ)ってくれ」

「はい」

甲示(しんじ)とお(じい)さんの2人(ふたり)適当(てきとう)(おお)きさに()()けた(たけ)(けい)トラに()()みます。

()りない(とき)勝手(かって)()っても()いし、そこに()ってあるの(たけ)()(かえ)っても()い。(こえ)()けてくれれば手伝(てつだ)うから、人手(ひとで)必要(ひつよう)(とき)健太(けんた)経由(けいゆ)でも()いから連絡(れんらく)をすると()い。道具(どうぐ)()場合(ばあい)(こし)くらいの(たか)さに()ってある(たけ)()()れば()ける(もの)もある。まあ、勝手(かって)(くさ)るのを()(たけ)だから(しつ)保証(ほしょう)せんがな。あと、()りに()(とき)足元(あしもと)()()けるようにな。(たけ)(えら)(とき)(みどり)()(たけ)(えら)ぶと()い。真竹(またけ)って()種類(しゅるい)(しな)りもあって(あつか)いやすい」

「はい。色々(いろいろ)(おし)えてくれてありがとうございます」

「よし、一旦(いったん)(もど)るか」

(じい)さんは(けい)トラに()()みエンジンをかけ帰宅(きたく)します。


帰宅(きたく)した2人(ふたり)伐採(ばっさい)した(たけ)(にわ)(はこ)びます。

竹籤(たけひご)だったな……。(いま)(つく)(かた)(おし)えるから(すこ)()っとれ」

「はい、よろしくお(ねが)いします」

(じい)さんは甲示(しんじ)待機(たいき)するように()い、何処(どこ)かへ()ってしまいました。


(しばら)くするとお(じい)さんは(ちい)さめの(なた)小刀(こがたな)軍手(ぐんて)新聞紙(しんぶんし)など竹籤作(たけひごづく)りに使(つか)道具一式(どうぐいっしき)(たずさ)えて(もど)りました。

「まずは(たけ)綺麗(きれい)にする」

バケツに(みず)()み、タオルを()らし、(たけ)()きます。

(あら)()わったら、()怪我(けが)せんように軍手(ぐんて)をはめる」

甲示(しんじ)軍手(ぐんて)(わた)します。

甲示(しんじ)軍手(ぐんて)()()装着(そうちゃく)します。

今回(こんかい)練習(れんしゅう)(ふし)を1つ(はさ)んで()るか……。()(とき)のコツは(つぎ)(ふし)の1~2cm手前(てまえ)()()とす(こと)。まず、半分程度(はんぶんていど)()()みを()れ、180()回転(かいてん)させて逆側(ぎゃくがわ)から()る。これで(かわ)(めく)(にく)くなる」

ノコギリ片手(かたて)説明(せつめい)をしながら手本(てほん)()せるお(じい)さん。

あっと()()(たけ)()()とします。

(つぎ)(ふし)部分(ぶぶん)(たいら)(けず)る。竹皮部(ちくひぶ)があると()(とき)()っかかる原因(げんいん)になる」

ノコギリを(なた)()()え、(たけ)(かる)(まわ)しながら竹皮部(ちくひぶ)器用(きよう)(けず)()ります。

「そして、まずは半分(はんぶん)()る。()(とき)先端側(せんたんがわ)から……。どっちが先端(せんたん)でどっちが根本(ねもと)()からなくなった(とき)(ふし)()れば判断(はんだん)できる。さっき(けず)った竹皮部(ちくひぶ)根本側(ねもとがわ)節峰(せっぽう)先端側(せんたんがわ)だ。節峰側(せっぽうがわ)から()()れる」

(じい)さんは(たけ)()(ぷた)つに()ります。そして、手付(てつ)かずの(たけ)()()り、(ふし)部分(ぶぶん)()せながら説明(せつめい)してくれました。

「あとは(はば)()めるんだが……。計算(けいさん)(やす)いから今回(こんかい)は5mm(はば)竹籤(たけひご)練習(れんしゅう)するか」

半分(はんぶん)()った(たけ)にメジャーを()て、採寸(さいすん)したお(じい)さんは5mm(はば)竹籤(たけひご)(つく)(こと)()げました。

「まずは(すこ)余裕(よゆう)()って、5.5mm間隔(かんかく)(しるし)()けていく。今回(こんかい)(たけ)だと半分(はんぶん)半分(はんぶん)半分(はんぶん)半分(はんぶん)だな」

つまり、(いま)、お(じい)さんが()っている半分(はんぶん)()った(たけ)から16(ぽん)竹籤(たけひご)(つく)れる計算(けいさん)です。

(なた)(あつ)いに()れていない場合(ばあい)は、根本(ねもと)使(つか)部分(ぶぶん)以外(いがい)はテープなどを()り、()れないようにする(こと)。こうすると(すべ)った(とき)などに()(きず)つける心配(しんぱい)()る」

(じい)さんは(べつ)(なた)()()え、(さら)説明(せつめい)(つづ)けながら(なた)細工(さいく)(ほどこ)します。

(なた)(すべ)らないように親指(おやゆび)人差(ひとさ)(ゆび)以外(いがい)(ゆび)でグッと()(にぎ)る。親指(おやゆび)人差(ひとさ)(ゆび)(たけ)(はさ)むように()えて()る。そして、(ふし)部分(ぶぶん)綺麗(きれい)(なら)す。()(いれ)れる(とき)(ちから)(すこ)(いれ)れるが、コツとしては()()むように(ちから)(いれ)れる(こと)だな。あとは、()(かえ)して(この)みの(おお)きさにするだけだ。ホレ、やってみ」

(じい)さんは最初(さいしょ)半分(はんぶん)()った(たけ)(のこ)りを甲示(しんじ)(わた)し、実践(じっせん)するように指示(しじ)します。

「はい。こうですか?」

甲示(しんじ)はおっかなびっくり(たけ)(なた)()て、お(じい)さんに手解(てほど)きを()けながら(たけ)()ります。


(なん)とか5.5mm(はば)(たけ)8本(はっぽん)(つく)ることが出来(でき)ました。

「これで完成(かんせい)ですか?」

「まだだな。(つぎ)にコレを(うす)くしていく。まあ、基本的(きほんてき)には3(かい)()けて(うす)くしていけばと()いだろう。荒剥(あらは)ぎ、中剥(なかは)ぎ、薄剥(うすは)ぎの3工程(こうてい)最終的(さいしゅうてき)に0.6~0.7mmの(あつ)さにする。荒剥(あらは)ぎで2.5mm、中剥(なかは)ぎで1.5mm、薄剥(うすは)ぎで0.6~0.7mmになる(かん)じだな。荒剥(あらは)ぎと中剥(なかは)ぎはさっきと(おな)じように()れば()い。薄剥(うすは)ぎはこんな(ふう)(なた)ではなく()()(かん)じだ。(ふし)部分(ぶぶん)(ちから)(いれ)れる(とき)怪我(けが)をする(こと)(おお)いから(なた)(ちから)(いれ)れる(とき)()()けてな」

手慣(てなれ)れた(かん)じで説明(せつめい)(つづ)けながら(たけ)(うす)くしていきます。

一通(ひととお)手本(てほん)()せた(あと)甲示(しんじ)(なた)(わた)同様(どうよう)作業(さぎょう)をさせます。


苦戦(くせん)しつつ、(たけ)(うす)くし()えた甲示(しんじ)

「……で、使(つか)うのは表皮(ひょうひ)部分(ぶぶん)だけだな。使(つか)部分(ぶぶん)(いま)から(ととの)える」

(のこ)りの部分(ぶぶん)はどうするんですか?」

(すて)てるだけだな。内側(うちがわ)竹籤(たけひご)使(つか)(こと)もあるが、今回(こんかい)表皮以外(ひょうひいがい)使(つか)うつもりが()かったから、(ざつ)結構(けっこう)ボロボロだし使(つか)(もの)にならん」

「えー……。(なに)勿体無(もったいな)い」

「まあ、素人(しろうと)竹籤(たけひご)(づく)りだから仕方(しかた)()い。いつもは()って(すて)てるだけの(たけ)だ。(すこ)しでも使(つか)われるだけ本望(ほんもう)だろう」

(じい)さんは甲示(しんじ)質問(しつもん)()(こた)えしながら丸太(まるた)用意(ようい)します。

今回(こんかい)は5mmで(つく)るから……」

(じい)さんはボソボソと(なに)かを(つぶ)きながら丸太(まるた)(しるし)()け、小刀(こがたな)を2(ほん)丸太(まるた)()()みます。

「これで、この(あいだ)(とお)せば5mm(はば)竹籤(たけひご)になる。(たけ)()かないように(けず)(とき)(たけ)(おさ)えながら(あいだ)(とお)(こと)だな」

説明(せつめい)をしながら2(ほん)竹籤(たけひご)(つく)り、甲示(しんじ)交代(こうたい)します。


(つぎ)面取(めんと)りだな」

丸太(まるた)()()んだ小刀(こがたな)()き、角度(かくど)()えて再度(さいど)()()みます。

そして、竹籤(たけひご)面取(めんとり)作業(さぎょう)

(いま)まで同様(どうよう)説明(せつめい)手解(てほど)(まじ)甲示(しんじ)(のこ)りの作業(さぎょう)(まか)せます。


最後(さいご)仕上(しあ)げで(あつ)みを(ととの)える」

(ひざ)(うえ)(たけ)(かる)(けず)(あつ)みを(ととの)えるお(じい)さん。

仕上(しあ)作業(さぎょう)はお(じい)さんが(すべ)(おこな)うようです。

「これで完成(かんせい)だな」

意外(いがい)大変(たいへん)作業(さぎょう)だった……」

一通(ひととお)りの作業(さぎょう)()え、16(ぽん)竹籤(たけひご)完成(かんせい)させる(こと)出来(でき)ました。

「そうだな。これは練習用(れんしゅうよう)だから、竹籤(たけひご)(なが)さと(はば)(あつ)みが()まったらまた()なさい」

「はい。ありがとうございます。あの……。(なに)から(なに)までお()きしてしまい恐縮(きょうしゅく)なのですが、(たけ)()(かた)ってご(ぞん)じですか?」

流石(さすが)()(かた)()からんなー。……おーい、(ばあ)さんや」

居間(いま)でなーくんと(あそ)んでいるお(ばあ)さんに(こえ)()けます。

(なん)でしょうか?」

(たけ)()(かた)()かるか?」

()(かた)ですか?残念(ざんねん)ですけど、()からないですね。ごめんなさいね。でも、健太(けんた)くらいの年齢(ねんれい)()ならピコピコで色々(いろいろ)調(しら)べられるんじゃないの?」

「ピコピコ……?」

「スマンな。(ばあ)さんは極度(きょくど)機械音痴(きかいおんち)(うえ)に、機械(きかい)(くわ)しくない。大抵(たいてい)電子機器(でんしきき)は『ピコピコ』や『ゲーム()』って()(くせ)があるんだ。(ばあ)さんが()いたいのはスマホかパソコンの(こと)だろう」

(まれ)にいますね……。そう()御年配(ごねんぱい)(かた)

()()(がた)のゲーム()(すべ)て『ふぁみこん』で一括(ひとくく)り……。

(おそ)らく、興味(きょうみ)のない分野(ぶんや)なので分類(ぶんるい)する必要(ひつよう)()いのでしょう。

「あっ!なるほど!そうですね。(あと)自分(じぶん)なりに調(しら)べてみます」

(どうしよう……。(ぼく)、スマホもパソコンも()ってないんだけどな……)

「また(なに)かあったら何時(いつ)でも()いので()なさい」

「はい。今日(きょう)色々(いろいろ)とお世話(せわ)になりました。……なーくん、(かえ)るよー」

「なー」

「あらあら、もう()っちゃうの?……あっ!そうだ。甲示君(しんじくん)、1つお(ねが)いしても()いかしら?」

なーくんとの(わか)れを名残惜(なごりお)しそうにするお(ばあ)さん。

(なに)かを(おも)()した様子(ようす)甲示(しんじ)への(たの)みごとがある(こと)(つた)えます。

「はい、(ぼく)出来(でき)(こと)なら」

(たい)した(こと)じゃないのよ。健太(けんた)(たま)には(あそ)びに()なさいって(つた)えてもらえるかしら?あの()ったら、お(ぼん)とお正月(しょうがつ)にしか(あそ)びに()ないのよ。(いえ)手伝(てつだ)いが(いそが)しいのは理解(りかい)してるんだけど……。(むかし)はもっと(あそ)びに()てたのにねぇ……」

健太(けんた)もお(みせ)手伝(てつだ)いなどで時間(じかん)()いのでしょう。

(ばあ)さんも事情(じじょう)理解(りかい)していますが、(まご)()えない(こと)(さび)しがっている様子(ようす)甲示(しんじ)(たの)(ごと)(つた)えます。

()かりました。(かえ)りにケンちゃんに(つた)えておきます」

「ありがとうね」

「はい。じゃあ、なーくん(かえ)ろうか」

「なー」

「なーくん、竹籤(たけひご)()()けてね」

甲示(しんじ)はなーくんに(かる)忠告(ちゅうこく)をし、竹籤(たけひご)(まえ)カゴの内側(うちがわ)沿()うように(まる)収納(しゅうのう)

竹籤(たけひご)内側(うちがわ)になーくんを(おさ)めます。

「……では、失礼(しつれい)します。今日(きょう)はありがとうございました」

甲示(しんじ)暇乞(いとまご)いをし、帰路(きろ)()きます。


途中(とちゅう)甲示(しんじ)材木店(もくざいてん)()()ります。

「なーくん、チョット()っててね」

「なー」

甲示(しんじ)(みせ)(よこ)自転車(じてんしゃ)()め、なーくんに一声(ひとこえ)かけてから店内(てんない)(はい)ります。

「ごめんくださーい」

(なん)甲示(しんじ)今日(きょう)(なに)入用(いりよう)か?」

今回(こんかい)健太(けんた)親父(おやじ)さんが(みせ)()ました。

「おじさん、こんにちは。ケンちゃん()ますか?(いま)、ケンちゃんのお(じい)さんの(ところ)()ってきたので、お(れい)をしたくて」

(なん)親父(おやじ)(ところ)なんかに……?まあ、いいや。()ってろ。…………おーい、健太(けんた)!!甲示(しんじ)()てるぞー!!」

親父(おやじ)さんは(みせ)裏手(うらて)(まわ)り、(おお)きな(こえ)健太(けんた)()()します。

ドタドタと(せわ)しなさそうに階段(かいだん)()りる足音(あしおと)

その()、ひょっこりと(かお)(のぞ)かせる健太(けんた)

「あれ?甲示(しんじ)(じい)ちゃんの(ところ)()ったんじゃなかったの?」

「うん、()ってきたよ。(いま)(かえ)途中(とちゅう)竹籤(たけひご)もどうにかなりそう。ケンちゃんにお(れい)とか()いたくて(すこ)()っただけ」

(べつ)にいいのに。(おれ)(じい)ちゃんの(こと)(おし)えただけだし」

「うん。お(れい)もそうなんだけど、お(じい)さんとお(ばあ)さんがもっと(あそ)びに()てってケンちゃんに(つた)えてって()ってたからソレも(つた)えに()たの」

「そっか……。そう()えば最近(さいきん)(あそ)びに()ってないかも……。今度(こんど)(あそ)びに()こうかな」

「お(じい)さんとお(ばあ)さんも(よろこ)ぶと(おも)うよ。……あっ!なーくんを(そと)()たせてるから、今日(きょう)(かえ)るね。またねケンちゃん」

「あぁ、またな。言伝(ことづて)もありがとうな」

「うん、バイバイ」

甲示(しんじ)健太(けんた)(わか)れを()げ、そそくさと(そと)()ます。

自転車(じてんしゃ)(そば)()き、カゴの(なか)確認(かくにん)

なーくん、竹籤(たけひご)(とも)無事(ぶじ)です。

なーくんも悪戯(いたずら)をせず、大人(おとな)しく()っていてくれたようです。

「おまたせ、なーくん。じゃあ、(かえ)ろうか」

「なー」

健太(けんた)への伝言(でんごん)()え、甲示(しんじ)となーくんは帰路(きろ)()きました。


帰宅(きたく)した甲示(しんじ)竹籤(たけひご)居間(いま)(はこ)び、現在(げんざい)竹籤(たけひご)とにらめっこ(ちゅう)……。

「うーん……。どうしようかな……。パソコンの使(つか)えそうな場所(ばしょ)~~~。パ~ソ~コ~ン~……」

手持無沙汰(てもちぶさた)状況(じょうきょう)()きたのか、竹籤(たけひご)適当(てきとう)(いじ)りながら(かんが)(ちゅう)……。

「……そうだ!学校(がっこう)授業(じゅぎょう)使(つか)ってるパソコン!明日(あした)、パソコン(しつ)使(つか)わせてもらおう!」

(かんが)えた(すえ)(みちび)()した(こた)えは『学校(がっこう)のPC』の使用(しよう)

セキュリティ(じょう)問題(もんだい)などが()り、授業(じゅぎょう)部活(ぶかつ)以外(いがい)個人(こじん)使(つか)わせるのは(むず)しいと(おも)いますが、何故(なぜ)甲示(しんじ)使(つか)えると確信(かくしん)しているようです。

(なに)妙案(みょうあん)があるのでしょうか……?


翌日(よくじつ)昼休(ひるやす)み~

失礼(しつれい)します」

職員室(しょくいんしつ)(はい)甲示(しんじ)

担任(たんにん)()つけ、近寄(ちかよ)(こえ)()けます。

先生(せんせい)相談(そうだん)があるんですが、(よろ)しいでしょうか?」

「どうした宮司(みやつかさ)?」

「はい、インターネットを使(つか)って調(しら)べものをしたいので、パソコン(しつ)使(つか)いたいんです。()けて(もら)えないでしょうか?」

「ダメだ」

(なん)でですか!?」

甲示(しんじ)にとっては想像(そうぞう)していなかった回答(かいとう)(よう)です。

(おも)わず(こえ)(あら)()()ってしまいます。

学校(がっこう)のPCはプライベートでの使用(しよう)禁止(きんし)だ。私用(しよう)での使用(しよう)禁止(きんし)でしようってな」

「……」

(すこ)興奮気味(こうふんぎみ)甲示(しんじ)(たい)し、冷静(れいせい)対応(たいおう)をする担任(たんにん)

最後(さいご)のダジャレは不要(ふよう)だと(おも)いますが、()っている(こと)至極(しごく)()(とう)意見(いけん)です。

反応(はんのう)なしか?面白(おもし)すぎて言葉(ことば)(うしな)ってしまったか……」

「いえ、ダジャレについては今年(ことし)()いた(なか)で1(ばん)つまらなかったです。パソコンが使(つか)えない(こと)はショックです」

(ちな)みにだが、(なに)調(しら)べるつもりだ?先生(せんせい)()えないような(こと)か?」

ダジャレについての批評(ひはん)()(なが)し、甲示(しんじ)目的(もくてき)質問(しつもん)します。

問題解決(もんだいかいけつ)(ため)(うご)いてくれそうな雰囲気(ふんいき)です。

「はい、(じつ)は────」

甲示(しんじ)一部(いちぶ)フェイクを(まじ)えながら竹籤(たけひご)()(かた)調(しら)べたい(こと)(つた)えます。

フェイクを()れた部分(ぶぶん)魚籠(びく)(つく)るに(いた)った経緯(けいい)人間関係(にんげんかんけい)などです。

「なるほど。()()いに手作(てづ)りの魚籠(びく)(おく)りたいと。ん~……。図書室(としょしつ)工芸関連(こうげいかんれん)書籍(しょせき)とかは()いか?流石(さすが)にPCを生徒(せいと)使(つか)わせるのは先生(せんせい)一存(いちぞん)では無理(むり)だ。調(しら)べても()いようなら、また相談(そうだん)()てくれないか?その(とき)先生(せんせい)自宅(じたく)PCを使(つか)って調(しら)べた(もの)をプリントアウトして(わた)すくらいは可能(かのう)だ」

甲示(しんじ)事情(じじょう)理解(りかい)し、(しばら)(かんが)えた(あと)学校(がっこう)図書室(としょしつ)提案(ていあん)

それでも解決(かいけつ)しない場合(ばあい)先生(せんせい)個人(こじん)(うご)いてくれるようです。

()かりました。ありがとうございます。……失礼(しつれい)しました」

甲示(しんじ)職員室(しょくいんしつ)退室(たいしつ)し、その(あし)図書室(としょしつ)(むか)かいます。

「ダメだったか~。パソコンいっぱいあるし、イケると(おも)ったんだけどな~」

(ひと)()ちながら廊下(ろうか)(ある)甲示(しんじ)

どうやら昨晩(さくばん)自信(じしん)(なん)根拠(こんきょ)()かったようです。


図書室(としょしつ)のドアを()入室(にゅうしつ)

「あれ?甲示君(しんじくん)図書室(としょしつ)()るなんて(めずら)しい」

(こえ)()けてきたのはカウンターで作業(さぎょう)をしていた杠葉(ゆずりは)です。

杠葉(ゆずりは)さんも(なに)調(しら)べもの?」

(ちが)うわよ。ワタシは図書委員(としょいいん)仕事(しごと)今日(きょう)当番(とうばん)なの。甲示君(しんじくん)調(しら)べもの?」

「うん。チョット竹籤(たけひご)()(かた)()りたくて、先生(せんせい)にパソコンを使(つか)わせてもらおうと(おも)ったんだけどダメだってさ。それで、図書室(としょしつ)工芸(こうげい)(ほん)()いてあるかもって()われて調(しら)べに()たの」

甲示(しんじ)杠葉(ゆずりは)図書室(としょしつ)()経緯(けいい)説明(せつめい)しました。

「ふーん。(めずら)しい(こと)するのね。竹籤(たけひご)(なに)(つく)るつもりなの?」

魚籠(びく)って(わか)かる?(さかな)()った(とき)()れる()(もの)

浦島太郎(うらしまたろう)とかの昔話(むかしばなし)()てくる(ひと)(こし)()けてるのかな?」

「そうそう、それそれ」

甲示君(しんじくん)()りするの?」

「いや、(ぼく)じゃなくて、()()いのオジサンにプレゼント」

()()い?……(ねこ)ちゃんの(もと)()(ぬし)さん?」

(ちが)(ちが)う。その(ひと)()()いの(ひと)で……。あっ!そうだ!杠葉(ゆずりは)さん、(ねこ)名前(なまえ)!『なーくん』って()うの。名前(なまえ)()いから自由(じゆう)()めて()いって()われて『なーくん』に決定(けってい)したよ」

「『なーくん』か~。可愛(かわい)名前(なまえ)ね。……でも、甲示君(しんじくん)図書室(としょしつ)では(しず)かにね。(ひと)()ないから(いま)()いけど、大声禁止(おおごえきんし)

以前(いぜん)(ねこ)名前(なまえ)判明(はんめい)したら杠葉(ゆずりは)(おし)える(こと)約束(やくそく)していた甲示(しんじ)

その(こと)(おも)()し、ついつい(おお)きな(こえ)()してしましました。

杠葉(ゆずりは)はソレを()()てる(わけ)でもなく、(かる)(さと)します。

注意(ちゅうい)するのに()れている(かん)じです。

「ごめん……」

甲示(しんじ)図書室(としょしつ)基本的(きほんてき)なマナーは理解(りかい)しているのでしょう。

素直(すなお)謝罪(しゃざい)します。

(つぎ)からは()()けてね。……で、(たけ)()むんだっけ?工芸(こうげい)(ほん)だから……5(るい)かな?それとも()(もの)だから7(るい)芸術(げいじゅつ)かな?」

杠葉(ゆずりは)手元(てもと)(かみ)確認(かくにん)しながら(なに)やら(なや)んでいます。

「5(るい)?7(るい)?」

「ワタシも(くわ)しくは()らないんだけど、日本(にほん)十進(じっしん)分類法(ぶんるいほう)?って()うのを採用(さいよう)しているみたいで、背表紙(せびょうし)(した)(ほう)に3(けた)番号(ばんごう)()ってあるでしょ?それで分類(ぶんるい)してるみたい。5(るい)だと500~599、7(るい)だと700~799が該当(がいとう)する(ほん)になるの。……でも、()たような(ほん)(おな)じような場所(ばしょ)にあるから、最初(さいしょ)どの(あた)りにあるかを(さが)すか調(しら)べるだけね」

「へー。じゃあ、背表紙(せびょうし)番号(ばんごう)確認(かくにん)すれば()いんだ。便利(べんり)だね。(ほか)分類(ぶんるい)はどうなってるの?」

「ワタシもこの(かみ)()いてある(こと)しか()からないわよ」

杠葉(ゆずりは)甲示(しんじ)手元(てもと)(かみ)()せながら、(かる)説明(せつめい)をします。

(るい) 総記(そうき)

(るい) 哲学(てつがく)哲学(てつがく)宗教(しゅうきょう)精神科学(せいしんかがく)

(るい) 歴史(れきし)

(るい) 社会科学(しゃかいかがく)

(るい) 自然科学(しぜんかがく)

(るい) 技術(ぎじゅつ)工芸(こうげい)工芸学(こうげいがく)

(るい) 産業(さんぎょう)

(るい) 芸術(げいじゅつ)

(るい) 言語(げんご)

(るい) 文学(ぶんがく)

図書委員(としょいいん)担当教師(たんとうきょうし)(つく)った簡単(かんたん)(ひょう)です。

甲示(しんじ)(ひょう)杠葉(ゆずりは)(かえ)し、示教(しきょう)された5(るい)(ほん)(さが)(はじ)めます。

「ごひゃく……ごーひゃーく……ごひゃ……あった。えーっと……電気回路(でんきかいろ)衛生(えいせい)土木(どぼく)工業(こうぎょう)電気(でんき)……?ココじゃない()がする」

さっさと見切(みき)りをつけた甲示(しんじ)は7(るい)本探(ほんさが)しへ変更(へんこう)します。

「ななひゃーく……なーなーひゃーく……。ココだ。美術(びじゅつ)彫刻(ちょうこく)粘土(ねんど)、デザイン、音楽(おんがく)茶道(さどう)華道(かどう)木工芸(もっこうげい)……!!って()か~。竹細工(たけざいく)()さそう……。でも、5(るい)よりは7(るい)っぽいかな?」

()になった木工芸(もっこうげい)(ほん)中身(なかみ)確認(かくにん)しましたが、()(たけ)別物(べつもの)でした。

一通(ひととお)(ほん)のタイトルを確認(かくにん)し、目的(もくてき)(ほん)()(こと)認識(にんしき)

甲示(しんじ)杠葉(ゆずりは)(もと)(もど)ります。

「どう?あった?」

木工芸(もっこうげい)ってのがあったんだけど、チョット(ちが)うかな。でも、5(るい)よりは7(るい)かなって(おも)ったよ」

「ふーん……。じゃあさ、美術(びじゅつ)先生(せんせい)家庭科(かていか)先生(せんせい)()いてみたら?(なに)()かるかもよ」

「なるほど……。杠葉(ゆずりは)さん、色々(いろいろ)とアドバイスありがとう」

甲示(しんじ)杠葉(ゆずりは)にお(れい)()い、図書室(としょしつ)(あと)にします。


再度(さいど)職員室(しょくいんしつ)移動開始(いどうかいし)

「まずは美術(びじゅつ)張江先生(はりえせんせい)()いて、ダメなら家庭科(かていか)西方先生(にしかたせんせい)(じゅん)かな」

甲示(しんじ)はブツブツと(つぶや)きながら速足(はやあし)移動(いどう)します。

失礼(しつれい)しまーす」

職員室(しょくいんしつ)(はい)った甲示(しんじ)はキョロキョロと(あた)りを見渡(みわた)し、お目当(めあ)ての人物(じんぶつ)(さが)します

()()た」

張江先生(はりえせんせい)(ほか)先生(せんせい)談笑(だんしょう)していました。

談笑相手(だんしょうあいて)西方先生(にしかたせんせい)2人(ふたり)(そろ)っているとは(うん)()いです。

先生(せんせい)(すこ)しお時間(じかん)よろしいでしょうか?」

「あら?宮司君(みやつかさくん)、どうしたの?」

先生(せんせい)たちにお()きしたい(こと)があります。(たけ)()(かた)って()かりますか?図書室(としょしつ)調(しら)べてみたんですが、それらしい(ほん)()つからなかったので、()かれば()(かた)(おし)えてほしくて……」

(わたし)専門外(せんもんがい)ね。普通(ふつう)毛糸(けいと)なら()めるんだけど、(たけ)()からないわね。張江先生(はりえせんせい)()かる?」

残念(ざんねん)だけど、竹細工(たけざいく)(わたし)専門外(せんもんがい)図書室(としょしつ)()いなら、図書館(としょかん)はどうかしら?(ほん)()つからなくても、パソコンが使(つか)えるから調(しら)べられるんじゃない?多少(たしょう)制限(せいげん)はあるけど」

「そうか、図書館(としょかん)か。……ありがとうございました」

(あら)たな情報(じょうほう)入手先(にゅうしゅさき)(おし)えてくれた先生方(せんせいがた)にお(れい)()い、職員室(しょくいんしつ)(あと)にします。


図書館(としょかん)か……。(たし)か、利用(としょりよう)カードは小学生(しょうがくせい)(とき)(つく)った記憶(きおく)が……。(いえ)(かえ)ってからカードを(さが)して、図書館(としょかん)()くと、(おそ)くなりそうだな。利用(りよう)カードは(わす)れた(こと)にして、今日(きょう)(かえ)りに()る……?でも、なーくんの食事(しょくじ)準備(じゅんび)とかもしてないしな……」

またもやブツブツと(ひと)(ごと)(つぶや)きながら甲示(しんじ)教室(きょうしつ)(もど)ります。

教室(きょうしつ)(ちか)くに到着(とうちゃく)した(とき)偶然(ぐうぜん)にも杠葉(ゆずりは)鉢合(はちあ)わせました。

杠葉(ゆずりは)昼休(ひるやす)みの仕事(しごと)()え、教室(きょうしつ)(もど)途中(とちゅう)だったようです。

「あっ、甲示君(しんじくん)、どうだった?」

先生(せんせい)()(かた)()らないって。でも、図書館(としょかん)(こと)()われて、そんな場所(ばしょ)もあったなって(おも)()させてくれたよ。今日(きょう)明日(あした)放課後(ほうかご)()くつもり。パソコンも使(つか)えるかもしれないって」

「そう、()かったね」

「うん、杠葉(ゆずりは)さんもありがとうね」

「ワタシは(なに)もしてないわよ。また(なに)かあったら図書室(としょしつ)()てね」

杠葉(ゆずりは)甲示(しんじ)社交辞令(しゃこうじれい)っぽい言葉(ことば)()げかけ、教室内(きょうしつない)へと()えて()きました。

甲示(しんじ)自分(じぶん)教室(きょうしつ)(もど)り、午後(ごご)授業(じゅぎょう)準備(じゅんび)をします。


午後(ごご)授業中(じゅぎょうちゅう)甲示(しんじ)図書館(としょかん)(こと)(あたま)一杯(いっぱい)でした。

先生(せんせい)()され、(なに)(こた)える(こと)出来(でき)ず、(はなし)()いていなかった(こと)がバレる場面(ばめん)も……。


放課後(ほうかご)

HR(ホームルーム)()わり、(かえ)支度(したく)をしている甲示(しんじ)(もと)健太(けんた)(ちか)づいてきました。

甲示(しんじ)(なん)様子(ようす)(へん)だったけど、(なに)かあったのか?昼休(ひるやす)みに杠葉(ゆずりは)さんと(なに)(はな)してたみたいだけど関係(かんけい)ある?」

どうやら甲示(しんじ)(こと)心配(しんぱい)して(こえ)()けてくれたようです。

「あー……。うん。関係(かんけい)あるって()えば関係(かんけい)あるし、()いって()えば()いかな?」

(なん)とも歯切(はぎ)れの(わる)回答(かいとう)です。

しかし、(こと)発端(ほったん)甲示(しんじ)担任(たんにん)相談(そうだん)をし、図書室(としょしつ)()かったのが(はじ)まり。

杠葉(ゆずりは)との会話(かいわ)内容(ないよう)図書室(としょしつ)()(あと)(はなし)

そして、甲示(しんじ)午後(ごご)授業中(じゅぎょうちゅう)(かんが)えていた(こと)今後(こんご)行動(こうどう)についてです。

つまり、関係(かんけい)があると()えば関係(かんけい)があるし、()いと()えば()い。

(あやま)った(こと)()っていません。

(なん)だそれ。てっきり告白(こくはく)でもされて(うわ)(そら)なのかと(おも)ってた。(ちが)うならいいや」

告白(こくはく)!?(ちが)(ちが)う。(じつ)はね────」

健太(けんた)(くち)から()()(おも)いもよらぬ言葉(ことば)(おどろ)きつつ、甲示(しんじ)(こと)経緯(けいい)説明(せつめい)します。


「────って(こと)で、(いま)から図書館(としょかん)()こうか(まよ)ってただけ。あっ!ケンちゃんのお(じい)さんの(ところ)には、調(しら)べものが(おわ)わった週末(しゅうまつ)()きたいから連絡(れんらく)してもらっても()い?」

週末(しゅうまつ)土曜(どよう)日曜(にちよう)?」

「じゃあ、土曜日(どようび)の2()(うかが)予定(よてい)大丈夫(だいじょうぶ)?」

土曜(どよう)午後(ごご)()な。今日(きょう)電話(でんわ)しとく」

「ありがとう。じゃあ、(ぼく)、なーくんの様子(ようす)()になるから(かえ)るね。バイバイ」

「なーくん……?昨日(きのう)()ってたけど、なーくんって(だれ)?」

「なーくんは(ねこ)名前(なまえ)(まえ)にお(みせ)(はい)って(おこ)られた()ね」

「あー……あの太々(ふてぶて)しい(ねこ)か~」

健太(けんた)はなーくんとの(はじ)めて(かお)()わせた(とき)(こと)(おも)()します。

太々(ふてぶて)しいって……。でも、(たし)かに図々(ずうずう)しいかも」

甲示(しんじ)はなーくんの行動(こうどう)()(かえ)り、ニヤニヤとしながら健太(けんた)発言(はつげん)肯定(こうてい)します。

(なん)にせよ。(すこ)(いそが)しそうだな。(じい)ちゃんには連絡(れんらく)しておくから、(なに)かあったら相談(そうだん)しろよな」

「うん。じゃあね、ケンちゃん」

甲示(しんじ)健太(けんた)(わか)れ、学校(がっこう)(あと)にします。


自宅(じたく)

帰宅(きたく)した甲示(しんじ)は、廊下(ろうか)()いたなーくんの足跡(あしあと)(かる)掃除(そうじ)しつつ、利用(りよう)カードの捜索(そうさく)(はい)ります。

毎日(まいにち)なーくんの足跡(あしあと)(いえ)(よご)れるので、玄関(げんかん)にモップを常備(じょうび)し、帰宅(きたく)した(さい)にモップを()けながら移動(いどう)するのが日課(にっか)になっています。

一方(いっぽう)廊下(ろうか)(よご)した張本人(ちょうほんにん)は、現在(げんざい)居間(いま)座布団(ざぶとん)(うえ)気持(きも)()さそうに就寝中(しゅうしんちゅう)……。

甲示(しんじ)帰宅(きたく)しようと、(さが)(もの)物音(ものおと)()てようと微動(びどう)だにしません。

(きも)()わっていると()うか(なん)()うか……。

甲示(しんじ)甲示(しんじ)でこの状況(じょうきょう)()れた様子(ようす)

なーくんの無事(ぶじ)確認(かくにん)して以降(いこう)()にせず(さが)(もの)専念(せんねん)しています。

(かい)にある自宅(じたく)(つくえ)から(はじ)まり、(はは)生前(せいぜん)使(つか)っていた部屋(へや)台所(だいどころ)(じゅん)(さが)し、現在(げんざい)居間(いま)捜索中(そうさくちゅう)です。

居間(いま)後回(あとまわ)しにしたのは多少(たしょう)なーくんに配慮(はいりょ)した(ため)でしょう。

押入(おしい)れを()け、(おく)からダンボール(ばこ)()()()します。

(なか)には甲示(しんじ)小学校(しょうがっこう)幼稚園(ようちえん)(つく)った作品(さくひん)()いた()など(おも)()(しな)保管(ほかん)されています。

多少(たしょう)(むかし)自分(じぶん)作品(さくひん)(なつ)かしみながら中身(なかみ)(ひろ)げていると、お目当(めあ)てのブツを発見(はっけん)

利用(りよう)カードは(くび)にぶら()げる(こと)出来(でき)るようにカードホルダーに()れられていました。

「あったー」

発見(はっけん)した利用(りよう)カードを(よこ)()き、()らかした(もの)片付(かたづ)け、利用(りよう)カードを()に2(かい)へ。

通学用(つうがくよう)(かばん)利用(りよう)カードを()れ、1(かい)(もど)ります。

居間(いま)(はい)ると丁度(ちょうど)なーくんが()(さま)ましました。

()びをした(あと)欠伸(あくび)をし、(くび)をポリポリと()き、毛繕(けづくろ)い。

「なーくん、明日(あした)(かえ)りが(すこ)(おそ)くなるかもしれないから大人(おとな)しくしててね」

「なー」

言葉(ことば)(つう)じているのかは不明(ふめい)ですが、なーくんは一応(いちおう)返事(へんじ)をします。

甲示(しんじ)もなーくんの返事(へんじ)()き、合意(ごうい)()れたと勝手(かって)推察(すいさつ)しました。

その()夕食(ゆうしょく)準備(じゅんび)入浴(にゅううよく)宿題(しゅくだい)翌日(よくじつ)用意(ようい)などを()え、就寝(しゅうしん)する甲示(しんじ)であった……。


翌日(よくじつ)放課後(ほうかご)

図書館(としょかん)到着(とうちゃく)した甲示(しんじ)()(さき)にカウンターへ()かいます。

「あの、すみません。お()きしたい(こと)があるんですが()いですか?」

「はい、どのようなご用件(ようけん)でしょうか?」

(たけ)魚籠(びく)を……魚釣(さかなつ)りとかで()った(さかな)()れる(かご)(つく)りたいんですが、竹籤(たけひご)()(かた)()かる(ほん)何処(どこ)にありますか?……あっ、コレ利用(りよう)カードです」

甲示(しんじ)利用(りよう)カードを提出(ていしゅつ)しながら図書館(としょかん)職員(しょくいん)()いかけます。

調(しら)べてみますので、少々(しょうしょう)(まち)ちください。図書館利用(としょかんりよう)カードは(ほん)()りる(さい)にご提示(ていじ)ください」

甲示(しんじ)職員(しょくいん)指摘(してき)され、(すこ)(かお)(あか)らめながら利用(りよう)カードを仕舞(しま)います。

職員(しょくいん)(すこ)移動(いどう)し、PCを操作(そうさ)(なに)かを検索(けんさく)しているようです。


(しばら)()つと職員(しょくいん)(もど)ってきました。

「お()たせしました。該当(がいとう)する(ほん)があるとすれば19(ばん)本棚(ほんだな)だと(おも)います。竹細工(たけざいく)入門(にゅうもん)初級(しょきゅう)竹籠(たけかご)()(かた)などが()ります。魚籠(びく)()(かた)該当(がいとう)する(ほん)がない可能性(かのうせい)もあります」

「19(ばん)ですね。ありがとうございます。……日本(にほん)十進(じっしん)分類法(ぶんるいほう)ってやつは使(つか)ってないのか……」

「あら?キミ、(くわ)しいのね。日本(にほん)十進(じっしん)分類法(ぶんるいほう)だと754(ばん)よ。背表紙(せびょうし)番号(ばんごう)()ってあるわよ」

(れい)()った(あと)、ボソッと(つぶや)いた言葉(ことば)職員(しょくいん)反応(はんのう)します。

突然(とつぜん)()てきた言葉(ことば)(おど)いたのか職員(しょくいん)言葉遣(ことばづか)いに()()ています。

(ひと)(ごと)反応(はんのう)されたのが()ずかしかったのか、甲示(しんじ)()れを(かく)(よう)(せわ)しなく職員(しょくいん)にお(れい)()べ、足早(あしばや)に19(ばん)本棚(ほんだな)()かいます。


「17……、18……、19。ココだ」

目的(もくてき)本棚(ほんだな)辿(たど)()いた甲示(しんじ)

『19』と本棚(ほんだな)番号(ばんごう)(かか)げられている数字(すうじ)(した)本棚(ほんだな)整理(せいり)されている(ほん)種類(しゅるい)記載(きさい)されています。

その(なか)の1つに『754 木竹工芸(もくちくこうげい)』と(おお)きく表示(ひょうじ)されています。

「えーっと754……754……754」

(なら)べられている(ほん)背表紙(せびょうし)(ゆび)()いながら『754』のシールが()られている(ほん)(さが)します。

番号(ばんごう)()つけては、中身(なかみ)確認(かくにん)

発見(はっけん)した(ほん)数種類(すうしゅるい)家具(かぐ)木工品(もっこうひん)茶道具(ちゃどうぐ)など関係(かんけい)()(ほん)もありました。

そのような(ほん)除外(じょがい)し、()つけ()したのは4(さつ)(ほん)です。

(さつ)(かる)(なな)()み。

時計(とけい)確認(かくにん)すると17()(はん)()ぎ。

「あっ……。そろそろ(かえ)らないと」

(さつ)(なか)でも比較的(ひかくてき)簡単(かんたん)そうな2(さつ)選出(せんしゅつ)し、カウンターへ()かいます。

「すみません。この2(さつ)をお()りしたいのですが、どうすれば()いでしょうか?」

「はい、少々(しょうしょう)()ちください」

対応(たいおう)してくれたのは先程(さきほど)職員(しょくいん)です。

「では、こちらの(かみ)必要事項(ひつようじこう)記入(きにゅう)し、図書館利用(としょかんりよう)カードをご提示(ていじ)ください。貸出期限(かしだしきげん)最大(さいだい)週間(しゅうかん)です。延長(えんちょう)する場合(ばあい)はインターネットかお電話(でんわ)にて対応可能(たいおうかのう)です。時間外(じかんがい)返却(へんきゃく)返却BOX(へんきゃくぼっくす)投函(とうかん)してください」

(かみ)必要事項(ひつようじこう)記入(きにゅう)し、職員(しょくいん)(わた)します。

「あの……」

「はい?」

今日(きょう)使(つか)予定(よてい)()いんですが、パソコンは使(つか)えますか?」

「はい。ご利用可能(りようかのう)です。ご利用(りよう)されている(かた)がいる場合(ばあい)はご利用(りよう)できません。事前(じぜん)予約(よやく)していただければ1時間(じかん)予約利用(よやくりよう)可能(かのう)です。延長(えんちょう)につきましては()のご利用者様(りようしゃさま)状況次第(じょうきょうしだい)になります。また、ご利用(りよう)(さい)図書館利用(としょかんりよう)カードか身分証明書(みぶんしょうめいしょ)のご提示(ていじ)必要(ひつよう)となります」

()かりました。ありがとうございました」

甲示(しんじ)図書館(としょかん)(あと)にし、帰路(きろ)()きます。


(いえ)到着(とうちゃく)したのは18()(すこ)()ぎた(ころ)

「ただいまー」

帰宅(きたく)した甲示(しんじ)はモップを()けながら居間(いま)へ。

部屋(へや)(すみ)(かばん)()き、なーくんに(こえ)()けます。

「なーくん、(おそ)くなってごめんね。(いま)、ご(はん)準備(じゅんび)をするからチョット()ってね」

「な゛ー」

空腹(くうふく)所為(せい)(すこ)しご機嫌斜(ごきげん)(なな)気味(ぎみ)です。

返事(へんじ)()いた甲示(しんじ)台所(だいどころ)移動(いどう)します。

なーくんの食事(しょくじ)準備(じゅんび)()ませ、自分(じぶん)夕食(ゆうしょく)準備(じゅんび)()()かります。

甲示(しんじ)夕食(ゆうしょく)毎度(まいど)馴染(なじ)み『野菜炒(やさいいた)め』です。

適当(てきとう)野菜(やさい)()って(いた)めるだけ。

(ほか)料理(りょうり)(つく)れないので仕方(しかた)()いですが、図書館(としょかん)()ったついでに料理本(りょうりぼん)()りればレパートリーが()えたかもしれませんね。

せっかくの機会(きかい)無駄(むだ)にしている(こと)()()いていない甲示(しんじ)勿体無(もったいな)いです。


食事(しょくじ)()ませ、(ほん)()ながら試作品(しさくひん)竹籤(たけひご)使(つか)練習中(れんしゅうちゅう)……。

(ほん)()(かん)じだと、『()()()み』か『笊目(ざるめ)()み』が()さそうだけど、笊目(ざるめ)()みは(ちが)(ふと)さの竹籤(たけひご)必要(ひつよう)なのか……。()()()みは簡単(かんたん)だけど、笊目(ざるめ)()みの(ほう)()()()いな……。(いま)半分(はんぶん)か1/3くらいの(はば)竹籤(たけひご)()しいかも。今度(こんど)、ケンちゃんのお(じい)さんに相談(そうだん)してみよう」


土曜日(どようび)

前日(ぜんじつ)健太(けんた)祖父母(そふぼ)(いえ)()かう準備(じゅんび)()え、荷物(にもつ)玄関(げんかん)にあります。

時間(じかん)はまだ午前(ごぜん)10時過(じす)ぎ。

約束(やくそく)時間(じかん)までは余裕(よゆう)があります。

居間(いま)(よこ)のくれ(えん)日向(ひなた)ぼっこしているなーくんを()つけ、甲示(しんじ)(こえ)()けます。

「なーくん、今日(きょう)、ケンちゃんのお(じい)さんのお(うち)()くんだけど、なーくんはどうする?」

甲示(しんじ)()いに、なーくんは尻尾(しっぽ)を2()ペシペシと上下(じょうげ)(うご)かし反応(はんのう)するのみです。

微妙(びみょう)反応(はんのう)甲示(しんじ)(すこ)(こま)(がお)

「うーん……。どっちなんだろう?どっちでも()いけど、()きたらもう1(かい)()いてみよう」


部屋(へや)掃除(そうじ)などをしながら時間(じかん)(つぶ)し、()()くと12時前(じまえ)

なーくんと自分(じぶん)昼食(ちゅうしょく)準備(じゅんび)します。

なーくんも()()まし、(さら)(まえ)待機中(たいきちゅう)

猫缶(ねこかん)から(さら)(えさ)(うつ)()える(とき)甲示(しんじ)再度(さいど)質問(しつもん)をします。

「なーくん、ケンちゃんのお(じい)さん()()くけど、なーくんも()る?お留守番(るすばん)する?」

「なー」

「……どっちだろう?」

今回(こんかい)は、甲示(しんじ)質問(しつもん)仕方(しかた)問題(もんだい)があるでのしょう。

なーくんが言葉(ことば)(はな)せない以上(いじょう)返答(へんとう)雰囲気(ふんいき)理解(りかい)出来(でき)るように質問(しつもん)する必要(ひつよう)があります。

一緒(いっしょ)()く?」

「なー」

「お留守番(るすばん)?」

「……な゛ー!!」

何時(いつ)までも猫缶(ねこかん)(かたむ)けたまま(さら)(うつ)そうとしない甲示(しんじ)(しびれ)れを()らし、なーくんが甲示(しんじ)(うで)()()かります。

「イタッ」

(うで)()びつかれ、(おどろ)きと(いた)さで猫缶(ねこかん)手放(てばな)してしまいました。

なーくんは(ゆか)(ころ)がった猫缶(ねこかん)(あと)()い、猫缶(ねこかん)から直接(ちょくせつ)(えさ)()べています。

「はしたないなー」

なーくんの行動(こうどう)多少(たしょう)(おも)うところはあるようですが、五月蝿(うるさ)注意(ちゅうい)はせず、水飲(みずの)(よう)(さら)(みず)(そそ)ぎ、甲示自身(しんじじしん)昼食(ちゅうしょく)()(はじ)めます。

結局(けっきょく)、どうするか()からなかったけど、一緒(いっしょ)()くなら出掛(でか)ける(とき)(ちか)くに()ると(おも)うし、その(とき)(こえ)()ければ大丈夫(だいじょうぶ)かな」


食事(しょくじ)(あら)(もの)()ませ、時計(とけい)確認(かくにん)します。

時刻(じこく)は12()55分頃(ふんごろ)

甲示(しんじ)玄関(げんかん)()かい、リュックの中身(なかみ)再確認(さいかくにん)をします。

「────試作(しさく)した()目編(めあ)み、(ほん)もある。お世話(せわ)になってるお(れい)()ったけど、もう(すこ)(たか)(もの)()かったかな?」

甲示(しんじ)はリュックの(よこ)にある近所(きんじょ)和菓子店(わがしてん)紙袋(かみぶくろ)(なが)めながら一考(いっこう)します……。

しかし、(すで)購入済(こにゅうず)みなので(なや)んでも仕方(しかた)()いと観念(かんねん)し、自転車(じてんしゃ)準備(じゅんび)をします。

今日(きょう)ママチャリを選択(せんたく)

リュックを背負(せお)い、(まえ)カゴに手土産(てみやげ)を入れます。

「なーくん、()くのかな?……なーくん、どーするのー?()ないならお留守番(るすばん)だよー」

準備(じゅんび)(ととの)い、(あと)出発(しゅっぱつ)するだけの甲示(しんじ)

玄関(げんかん)から(いえ)(なか)(こえ)()けています。

数秒後(すうみょうご)、テトテトと玄関(げんかん)()かってくるなーくん。

一緒(いっしょ)()く?」

「みー」

なーくんの返事(へんじ)()き、(まえ)カゴに()せます。

「なーくん、その(ふくろ)はお(れい)(しな)だから(よご)さないでね」

「なー」

(まえ)カゴに()せたなーくんに注意(ちゅうい)をしつつ、玄関(げんかん)(かぎ)()出発(しゅっぱつ)します。

健太(けんた)祖父母(そふぼ)(いえ)直行(ちょっこう)するのではなく、一旦(いったん)材木店(ざいもくてん)()ります。


「なーくん、チョット()っててね」

返事(へんじ)()たず、甲示(しんじ)店内(てんない)へ……。

「ごめんください」

今日(きょう)はどうした?」

今日(きょう)(めず)しく(?)健太(けんた)親父(おやじ)さんが(みせ)にいました。

「おじさん、こんにちは。ケンちゃん()ますか?(いま)からケンちゃんのお(じい)さんのお(うち)(うかが)予定(よてい)なんですが、連絡(れんらく)()れてあるのかを確認(かくにん)したくて」

健太(けんた)なら、その親父(おやじ)(ところ)だ。(なん)でも数日前(すうじつまえ)に『電話(でんわ)した(とき)約束(やくそく)した』とか()って午前中(ごぜんちゅう)出掛(でかけ)たぞ」

「なー」

「あっ、なーくん、()っててって()ったのに……。おじさん、ごめんなさい。すぐ(そと)()します」

突如(とつじょ)カウンターの(うえ)(あらわ)れたなーくんを()て、甲示(しんじ)(おどろ)きましたが、すぐに謝罪(しゃざい)をし、なーくんを(そと)()そうと()()ばした瞬間(しゅんかん)親父(おやじ)さんに(こえ)()けられました。

(きゃく)()ないし(いそ)がんで()い。……で、(ねこ)()れて()くのか?」

「はい。一緒(いっしょ)()きたい様子(ようす)だったので」

「そうか。……(なん)だったらココで(すこ)しの(あいだ)(あず)かっても()いぞ?()れて()くのも危険(きけん)だろ?」

親父(おやじ)さんの(もう)()甲示(しんじ)(すこ)(なや)みます。

前回(ぜんかい)自転車(じてんしゃ)(まえ)カゴに(おさ)まり(しず)かにしていましたが、今回(こんかい)大人(おとな)しいとは(かぎ)りません。

親父(おやじ)さんの指摘(してき)一理(いちり)あります。

(なに)かの拍子(ひょうし)()してしまう可能性(かのうせい)もあります。

「なーくん、どうする?」

「なっ」

なーくんは(みじか)返事(へんじ)をし、プイッと親父(おやじ)さんに()()けます。

「じゃあ、絶対(ぜったい)(まえ)カゴから()ないでね。大人(おとな)しくしてないと(あぶ)ないよ」

「なー」

「なーくんもこう()ってるので、今日(きょう)()れて()きます」

甲示(しんじ)はなーくんの意思(いし)尊重(そんちょう)するようです。

「そ、そうか……。()()けてな」

(こころ)なしか親父(おやじ)さんはガッカリしているように()えます。

「はい、ありがとうございます」

甲示(しんじ)親父(おやじ)さんにお(れい)()い、再度(さいど)なーくんを(まえ)カゴに()出発(しゅっぱつ)します。


木材店(ざいもくてん)への()(みち)はあったものの、2度目(どめ)訪問(ほうもん)(みち)(まよ)(こと)()くほぼ予定時刻(よていじこく)の13()45分頃(ふんごろ)健太(けんた)祖父母宅(そふぼたく)到着(とうちゃく)しました。

(すこ)(はや)いけど大丈夫(だいじょうぶ)かな?」

玄関付近(げんかんふきん)邪魔(じゃま)にならない場所(ばしょ)自転車(じてんしゃ)()め、なーくんや荷物(にもつ)()ろします。

「ケンちゃんが(さき)()てるって()ってたし、(はや)くても大丈夫(だいじょうぶ)だよね……?」

甲示(しんじ)(にわ)様子(ようす)(かる)(うかが)い、インターホンを()します。

「ごめんくださーい」

(すこ)()つとドタドタと(さわ)がしい足音(あしおと)玄関(げんかん)(ちか)づき、()()きました。

「やっぱり甲示(しんじ)か。(こえ)でそうだと(おも)った」

「おじさんがケンちゃんも()かったって(おし)えてくれたから、(すこ)(はや)いかなって(おも)ったけど()ちゃった」

(はや)すぎる(わけ)じゃないし()いんじゃない?玄関(げんかん)()(ばなし)(なん)だし(あが)がれよ」

「うん、お邪魔(じゃま)します」

「みー」

健太(けんた)案内(あんない)居間(いま)(とお)されます。

「あらあら、なーちゃんも一緒(いっしょ)なのね。こっちにいらっしゃい」

なーくんの姿(すがた)確認(かくにん)し、(そば)()るよう(うなが)します。

本日(ほんじつ)もお世話(せわ)になります。……これ、よろしかったらお()べください」

一生懸命(いっしょうけんめい)丁寧(ていねい)言葉(ことば)心掛(こころが)けているつもりなのでしょうが、(すこ)日本語(にほんご)(あや)しいです。

子供(こども)(へん)()(つか)うんじゃない」

甲示(しんじ)気遣(きづか)いを(かる)(とが)めつつ、素直(すなお)()()るお(じい)さん。

「うふふ……。素直(すなお)じゃないんだから」

(ばあ)さんは()れた様子(ようす)です。

「ゴホン……。甲示君(しんじくん)()れてるだろう。(すこ)(すわ)って(やす)みなさい。……(ばあ)さん、お(ちゃ)!」

()まずさを誤魔化(ごまか)すように咳払(せきばら)いをし、お(ばあ)さんにお(ちゃ)準備(じゅんび)をさせます。

(すこ)乱暴(らんぼう)物言(もの)いのは()(かく)しでしょう。

「はいはい」

(ばあ)さんはなーくんを(かる)()で、甲示(しんじ)(わた)した紙袋(かみぶくろ)をお(じい)さんから()()台所(だいどころ)へ。

「「「……」」」

しばしの沈黙(ちんもく)……。

御持(おも)たせで恐縮(きょうしゅく)ですが……」

(もど)ってきたお(ばあ)さんは甲示(しんじ)手土産(てみやげ)のどら()きとお(ちゃ)各々(おのおの)(まえ)()()します。

「ありがとうございます」

「いっただきまーす」

甲示(しんじ)はお(ばあ)さんへお(れい)()い、健太(けんた)はどら()きに(かぶ)()きます。

(じい)さんは無言(むごん)でお(ちゃ)(すす)り、お(ばあ)さんはなーくんを()でます。

しばしの静寂(せいじゅつ)……。

一口(ひとくち)(ちゃ)()んだお(じい)さんがコトッと(しず)かに湯飲(ゆの)みを()き、(くち)(ひら)きます。

「それで、竹籤(たけひご)(けん)()まったのか?」

前回(ぜんかい)、サイズ不明(ふめい)保留(ほりゅう)になっていた(こと)()いているのでしょう。

「はい、(すこ)相談(そうだん)したい(こと)もありまして────」

甲示(しんじ)はリュックを(あさ)りながら返答(へんとう)します。

リュックから図書館(としょかん)()りた(ほん)見様見真似(みようみまね)()んだ鍋敷(なべし)程度(ていど)(おお)きさの()目編(めあ)み、菱四(ひしよ)目編(めあ)みの竹籤(たけひご)()()します。

そして、(ほん)のとある1ページを(ひら)きながら(はなし)(つづ)けます。

「────この(ほん)参考(さんこう)簡単(かんたん)()める2種類(しゅるい)()(かた)(ため)したんですが、魚籠(びく)(つく)場合(ばあい)、ココに()いてある笊目編(ざるめあ)みの(ほう)()()がします」

(たし)かに」

(よこ)一緒(いっしょ)(ほん)(なが)めていた健太(けんた)(みじか)感想(かんそう)()べます。

「それでですね。この笊目編(ざるめあ)みは骨組(ほねぐ)みになる縦方向(たてほうこう)(ふと)竹籤(たけひご)横方向(よこほうこう)には(ほそ)竹籤(たけひご)使(つか)うみたいなんです。(たて)先日(せんじつ)(ふと)さで()いのですが、その半分(はんぶん)か1/3くらいの(ほそ)さの竹籤(たけひご)()しいのですが、可能(かのう)ですか?」

「……(つく)るのは簡単(かんたん)だが、1/2と1/3どっちにするつもりだ?綺麗(きれい)()めるなら(こま)かい(ほう)見栄(みば)えも()いと(おも)うが、()回数(かいすう)()える(ぶん)手間(てま)()えるぞ?」

「うーん……」

(じい)さんの質問(しつもん)(たい)する返答(へんとう)(なや)甲示(しんじ)()健太(けんた)(こえ)()けます。

甲示(しんじ)竹籤(たけひご)(あま)ってない?」

試作(しさく)(とき)使(つか)わなかったものだけど……」

甲示(しんじ)はリュックから竹籤(たけひご)(たば)()()し、健太(けんた)(わた)します。

(じい)ちゃん、ハサミ()して」

「ほれ」

健太(けんた)竹籤(たけひご)1本(いっぽん)半分(はんぶん)(ふと)さに。半分(はんぶん)にした竹籤(たけひご)片方(かたほう)(さら)半分(はんぶん)()り、(なが)さを3分割(ぶんかつ)します。

(つぎ)に、(あたら)しく3(ぼん)竹籤(たけひご)()り、(ほん)()ながら()みます。

「こんな(かん)じ?(ほそ)(ほう)は1/3じゃなくて1/4だけど、どっちが()い?」

「ケンちゃん、上手(じょうず)!」

(ほん)()一瞬(いっしゅん)()()げた健太(けんた)感心(かんしん)する甲示(しんじ)

「そんな(こと)よりどっち?」

(ほそ)(ほう)かな?」

「だってさ」

「じゃあ、(つく)(とき)に1/3で計算(けいさん)(なお)すか」

「あのっ!1/4の(ふと)さにしていただいても()いですか?」

(かま)わんが、(もと)(はば)は5mmだったな。……5mmだと1/4は1.25mm。……甲示君(しんじくん)(たし)魚籠(びく)(つく)予定(よてい)だったな?」

(かる)計算(けいさん)をし、(なに)かを(かんが)(あと)甲示(しんじ)質問(しつもん)をします。

「はい」

(かざ)(もの)か?実際(じっさい)使(つか)(もの)なのか?」

多分(たぶん)使(つか)ってくれると(おも)います」

魚籠(びく)(おお)きさは?」

「えーっと……。(はば)がこれくらいでバスケットボールくらいかな?(たか)さは(はば)より(すこ)(たか)めで、これくらいです」

甲示(しんじ)身振(みぶ)手振(てぶ)りを(まじ)え、(つく)予定(よてい)魚籠(びく)のサイズを(つた)えます。

予想(よそう)していたサイズより(おお)きいな。竹籤(たけひご)(はば)()えても()いか?」

「……?はい、大丈夫(だいじょうぶ)です。(なに)問題(もんだい)がありますか?」

問題(もんだい)()うか、骨組(ほねぐ)みに5mm(はば)(もの)使(つか)うとして、どの程度(ていど)間隔(かんかく)配置(はいち)するかだな。間隔(かんかく)()()ぎると強度(きょうど)不安(ふあん)だな」

「なるほど」

「そこで提案(ていあん)だが、1cmと2mmにしてみないか?流石(さすが)に1mmは手作業(さぎょう)だと誤差(ごさ)()可能性(かのうせい)がある。だから、2mm前後(ぜんご)って(こと)にしないか?」

「……そうですね。提案(ていあん)ありがとうございます。お(じい)さんの指摘(してき)(ただ)しいと(おも)います」

甲示(しんじ)もお(じい)さんの指摘(してき)理解(りかい)し、妥協案(だきょうあん)賛同(さんどう)します。

「サイズも()まったので、竹取(たけと)頑張(がんば)ります!!」

甲示(しんじ)、やる()()してる(ところ)(もう)(わけ)ないんだけど……」

健太(けんた)(なに)やら(もう)(わけ)なさそうに(しゃべ)()しました。

「どうしたのケンちゃん?」

(じつ)は……。(たけ)……、()って()てある」

「え?」

「ココに()いてから昼食(ちゅうしょく)まで(ひま)だったから(じい)ちゃんと()って()てある。車庫(しゃこ)(けい)トラの荷台(にだい)()んであるよ」

本当(ほんとう)!?」

一服(いっぷく)もし()わった(こと)だし、そろそろ(はじ)めるか。道具(どうぐ)準備(じゅんび)(はじ)めるから2人(ふたり)(たけ)(にわ)移動(いどう)させなさい」

「はい」

(じい)さんの指示(しじ)()け、2人(ふたり)車庫(しゃこ)()かいます。


「おぉ!(なが)い」

(けい)トラの荷台(にだい)には甲示(しんじ)身長(しんちょう)よりも(すこ)(なが)(たけ)何本(なんほん)()まれていました。

(ひま)だったけど、時間(じかん)十分(じゅうぶん)にあった(わけ)でもないから、(はこ)べるサイズに()()けて()ってきただけだしな。1人(ひとり)(はこ)ぶのは(あぶ)ないから2人(ふたり)()って()こう」

「うん」

健太主導(けんたしゅどう)数回(すうかい)()け、(にわ)(たけ)(はこ)()します。


(すべ)ての(たけ)(はこ)()わりました。

「これで最後(さいご)っと。(じい)ちゃん、(はこ)()わったよ」

「ご苦労(くろう)さん。甲示君(しんじくん)はノコギリや(なた)使(つか)()れていないみたいだし、刃物(はもの)はあまり使(つか)わない作業(さぎょう)(おも)担当(たんとう)だな。健太(けんた)(たけ)を1mくらいに()()けなさい。甲示君(しんじくん)()()けた(たけ)綺麗(きれい)()いてからコッチに(はこ)んでもらっても()いかな?」

「はい。よろしくお(ねが)いします」

(じい)さんの指示(しじ)()け、(つぎ)作業(さぎょう)(うつ)ります。

健太(けんた)(たけ)()り、甲示(しんじ)(たけ)()きお(じい)さんの(もと)(はこ)びます。

(じい)さんは(たけ)()(ぷた)つに()作業(さぎょう)です。

()った(たけ)がある程度(ていど)()まった(ところ)でお(じい)さんは甲示(しんじ)(つぎ)指示(しじ)()します。

甲示君(しんじくん)(はこ)ぶのは()わりで、(つぎ)()った(たけ)(しるし)()けてもらって()いかな?」

「はい。前回(ぜんかい)(おな)じように(ふと)さを()める作業(さぎょう)ですよね?何処(どこ)(しるし)()ければ()いですか?」

「そうだな……。今回(こんかい)は1cm(はば)と2mm(はば)だから、1.1cm~1.3cmで(しるし)()けてもらえるかな?(ふと)くなる(ぶん)問題(もんだい)()いから(ほそ)くならないようにな」

「1.1cmですね」

ペンとメジャーを()()り、(たけ)(しるし)()けようとします。

甲示君(しんじくん)()ちなさい」

「はい、(なん)でしょうか?」

(たけ)(しるし)()けようとした甲示(しんじ)()て、お(じい)さんは作業(さぎょう)()めました。

「そうじゃなくて、まずは(たけ)外周(がいしゅう)をまず(はか)って1.1cmで()る。そこから何個(なんこ)(つく)れるか計算(けいさん)してから(しるし)()(はじ)めれば均等(きんとう)分割(ぶんかつ)(やす)い。1.1cmで(しるし)()けて最後(さいご)端数(はすう)()るより、端数(はすう)部分(ぶぶん)は1.2cmや1.3cmを組合(くみあわ)せて調整(ちょうせい)すれば、(すう)ミリの(こま)かい部分(ぶぶん)()さずに()む。今回(こんかい)は2mm(はば)竹籤(たけひご)(つく)るから端数(はすう)()ても()いのだが、(あと)区別(くべつ)をする手間(てま)()える」

「なるほど」

(じい)さんの指摘(してき)()け、甲示(しんじ)(たけ)(しるし)()ける作業(さぎょう)(もど)ります。


(じい)ちゃん、全部(ぜんぶ)()()わった」

健太(けんた)(たけ)()()作業(さぎょう)終了(しゅうりょう)したようです。

「じゃあ、(たけ)()いてジジイの(ところ)(はこ)んで、全部(ぜんぶ)(はこ)んだら、甲示君(しんじくん)()けた(しるし)位置(いち)(たけ)()りなさい」

了解(りょうかい)

(あら)たな指示(しじ)()け、健太(けんた)仕事(しごと)(もど)ります。

作業(さぎょう)()わった(ひと)から(つぎ)作業(さぎょう)()られ、順調(じゅんちょう)竹籤(たけひご)(づく)りは(すす)みます。


「よし、(のこ)りは仕上(しあ)げだな。健太(けんた)荒剥(あらは)ぎをそのまま(つづ)けて、甲示君(しんじくん)面取(めんと)作業(さぎょう)だ」

(じい)ちゃんは?」

「ジジイは2mm(はば)竹籤(たけひご)(つく)る。荒剥(あらは)ぎが()わったものを4~5分割(ぶんかつ)する作業(さぎょう)だ。甲示君(しんじくん)、1cm(はば)必要分(ひつようぶん)面取(めんと)りを(おこな)って大丈夫(だいじょうぶ)だが、魚籠(びく)(つく)(とき)失敗(しっぱい)しても()いように予備(よび)(すこ)(おお)(つく)っておきなさい」

()かりました」

(じい)さんは最後(さいご)指示(しじ)()し、甲示(しんじ)面取(めんと)りを(おこな)えるように丸太(まるた)に1cm(はば)小刀(こがたな)をセット。

その()、お(じい)さん自身(じしん)荒剥(あらは)ぎが(おわ)わった状態(じょうたい)(たけ)数本(すうほん)()ち、作業(さぎょう)()()かります。


(じい)ちゃん、(おわ)わった」

健太(けんた)は2mmの面取(めんと)りだ。準備(じゅんび)仕方(しかた)()かるか?」

「さっき()たからたぶん大丈夫(だいじょうぶ)準備(じゅんび)出来(でき)たら確認(かくにん)して」

健太(けんた)作業台代(さぎょうだいが)わりの丸太(まるた)がなっかたので、(すこ)(おお)きめの板材(いたざい)使用(しよう)します。

小刀(こがたな)()()み、お(じい)さんに確認(かくにん)()ります。

「これで()い?」

「どれ……。……よし、問題(もんだい)()い」

(はば)角度(かくど)確認(かくにん)し、小刀(こがたな)()さった板材(いたざい)健太(けんた)(かえ)します。

承諾(しょうだく)()健太(けんた)面取(めんと)作業(さぎょう)(うつ)ります。


「これで最後(さいご)っと」

結構(けっこう)(りょう)(つく)れたね。ケンちゃん、お手伝(てつだ)いありがとう。お(じい)さんもご協力(きょうりょく)ありがとうございます」

竹林管理(ちくりんかんり)のついでだ。()にする(こと)()い。不足(ふそく)したら健太(けんた)()えば追加(ついか)(つく)るからな。遠慮(えんりょ)なく連絡(れんらく)すると()い」

(じい)さんは(つく)()えた竹籤(たけひご)をビニール(ぶくろ)()めながら甲示(しんじ)(こえ)()けます。

「はい。またお世話(せわ)になるかもしれません。その(とき)はよろしくお(ねが)いします」


甲示(しんじ)健太(けんた)廃材(はいざい)片付(かたづ)けと掃除(そうじ)

時刻(じこく)は17時過(じす)ぎ。()(かたむ)(あた)りが(くら)くなる時間帯(じかんたい)

(やく)時間(じかん)ぶっ(とお)しで(つく)った甲斐(かい)もあり、大量(たいりょう)竹籤(たけひご)完成(かんせい)しました。

「なーくん、()きて。(かえ)るよ」

甲示(しんじ)はお(ばあ)さんの(ひざ)(うえ)気持(きも)()さそうに()ているなーくんに(こえ)()けます。

気怠(けだる)そうに欠伸(あくび)をし、(ひざ)から()()びをするなーくん。

「なー」

()ている(ところ)()こされ、(すこ)不機嫌(ふきげん)そうです。

健太(けんた)一緒(いっしょ)(かえ)るなら(すこ)荷物(にもつ)()ってあげなさい」

「はーい」

健太(けんた)間延(まの)びした返事(へんじ)をし、(りょう)(おお)(ほそ)竹籤(たけひご)(たば)()にします。

「ケンちゃん、ありがとう。なーくんをカゴに(いれ)れないといけないから(すご)(たす)かる」

(かえ)(みち)一緒(いっしょ)だし、()にすんなって」

(かえり)支度(じたく)()ませた2人(ふたり)

甲示(しんじ)はお(じい)さんとお(ばあ)さんに再度(さいど)(れい)をし、なーくんと竹籤(たけひご)(まえ)カゴに()せ、(もん)(まえ)健太(けんた)合流(ごうりゅう)します。

「おまたせ。ケンちゃん」

(わす)(もの)()い?」

「うん」

「じゃあ、()るか」

甲示(しんじ)健太(けんた)大量(たいりょう)竹籤(たけひご)()帰路(きろ)()くのでした。


甲示(しんじ)(いえ)()いた甲示達(しんじたち)一行(いっこう)

「ありがとうケンちゃん。荷物(にもつ)(はこ)びもさせちゃってごめんね」

「いいよ。いいよ。魚籠作(びくづ)頑張(がんば)れよな」

健太(けんた)返事(へんじ)をしながら玄関内(げんかんない)竹籤(たけひご)(はこ)()れ、帰路(きろ)()きました。

甲示(しんじ)健太(けんた)見送(みおく)った(あと)、なーくんと竹籤(たけひご)()ろし、自転車(じてんしゃ)片付(かたづ)けます。

なーくんは自宅(じたく)()(ころ)にはすっかり()()め、帰宅後(きたくご)すぐに夕飯(ゆうはん)催促(さいそく)です。


夕食(ゆうしょく)()ませた甲示(しんじ)となーくん。

甲示(しんじ)竹籤(たけひご)()()し、()(はじ)めます。

なーくんは食事(しょくじ)満足(まんぞく)して居間(いま)座布団(ざぶとん)(うえ)(まる)まっています。

魚籠(びく)(そこ)部分(ぶぶん)ってどう(つく)るんだろう……?」

ある程度(ていど)(おお)きさまで竹籤(たけひご)()んだ甲示(しんじ)疑問(ぎもん)(くち)にします。

色々(いろいろ)試行錯誤(しこうさくご)()(かえ)していますが上手(うま)曲線(きょくせん)(つく)れないようです。

明日(あした)学校(がっこう)()りに図書館(としょかん)()ってパソコンで調(しら)べないとダメだな……」

魚籠(びく)(そこ)(まる)くする作業(さぎょう)(あきら)め、翌日(よくじつ)準備(じゅんび)をして就寝(しゅうしん)するのでした。


翌日(よくじつ)放課後(ほうかご)

甲示(しんじ)図書館(としょかん)へ。

図書館(としょかん)入館(にゅうかん)し、受付(うけつけ)カウンターに()かい、PC利用(りよう)手続(てつづ)きをします。

簡単(かんたん)注意事項(ちゅういじこう)などを口頭(こうとう)説明(せつめい)され、PC(まえ)案内(あんない)されます。

利用時間(りようじかん)は1時間(じかん)延長(えんちょう)する場合(ばあい)利用者(りようしゃ)状況(じょうきょう)()判断(はんだん)されるので、延長(えんちょう)(さい)受付(うけつけ)再度相談(さいどそうだん)との(こと)でした。

甲示(しんじ)はブラウザを起動(きどう)し『魚籠(びく) (つく)(かた)』で検索(けんさく)をします。

検索(けんさく)()っかかったサイトを(うえ)から(じゅん)熟読(じゅくどく)

(いく)つかのサイトを()(あさ)り、1つの(こた)えに辿(たど)()きました。

「……なるほど。骨組(ほねぐ)みの(ふと)竹籤(たけひご)放射状(ほうしゃじょう)()んでから()(はじ)めるのか。……あっ、でも、(そこ)円形(えんけい)じゃなくても(つく)れるっぽい。土台部分(どだいぶぶん)四角(しかく)(つく)って徐々(じょじょ)(まる)みを()けていく……っと。んー……どっちの(ほう)(つく)(やす)いんだろう?」

必要(ひつよう)(こと)などをイラスト()きでメモを()りながら魚籠(びく)()(かた)検索(けんさく)(つづ)けます。

(なお)、イラストの腕前(うでまえ)は……ココでは()れない(こと)にしましょう。(さっ)してください。


「よし!これでたぶん大丈夫(だいじょうぶ)()からないことがあったらまた()よう」

時計(とけい)確認(かくにん)すると検索(けんさく)(はじ)めてから45(ふん)(ほど)経過(けいか)

キリも()いのでPCの利用(りよう)終了(しゅうりょう)します。

片付(かたづ)けをし、受付(うけつけ)利用(りよう)終了(しゅうりょう)手続(てつづ)きとお(れい)()図書館(としょかん)(あと)にします。


帰宅(きたく)した甲示(しんじ)はメモを()()魚籠作(びくづく)りを開始(かいし)します。

底部(ていぶ)(まる)魚籠(びく)四角(しかく)魚籠(びく)の2種類(しゅるい)(ため)しに(すこ)しだけ()んだ結果(けっか)……。

()(はじ)めは(まる)(ほう)(すこ)(こま)かくて大変(たいへん)だけど、労力(ろうりょく)はあまり()わらないかな……?大黒様(だいこくさま)から()いたイメージだと全体的(ぜんたいてき)球体(きゅうたい)っぽい雰囲気(ふんいき)だし、(まる)(ほう)にしよう」

方針(ほうしん)()まった甲示(しんじ)四角(しかく)()んだ竹籤(たけひご)分解(ぶんかい)し、(まる)魚籠作(びくづく)りを再開(さいかい)します。

(なか)()かせたなーくんに邪魔(じゃま)をされるまで夕食(ゆうしょく)時間(じかん)()()かない(ほど)没頭(ぼっとう)していました。

そして、夕食後(ゆうしょくご)魚籠作(びくづく)りは(つづ)くのでした……。


翌日以降(よくじついこう)魚籠作(びくづく)りは(つづ)きます……。

(つく)(かた)()からない部分(ぶぶん)は、その翌日(よくじつ)図書館(としょかん)検索(けんさく)

魚籠作(びくづく)りに精励(せいれい)した甲斐(かい)があり、金曜日(きんようび)(よる)魚籠(びく)(つく)()わりました。


「────あとは、ココに腰紐(こしひも)()けてっと……。出来(でき)たー!!」

(こま)かい(ところ)確認(かくにん)すると、()(かた)(あま)く、多少(たしょう)(ゆる)部分(ぶぶん)もありますが、(はじ)めて(つく)った魚籠(びく)にしては(おおむ)良好(りょうこう)

()(ぐち)部分(ぶぶん)(すこ)(しぼ)ってから(ひろ)げるのが(むずか)しかったなー」

完成(かんせい)した魚籠(びく)(なが)めながら魚籠作(びくづく)りを想起(そうき)します。

「よし、日曜日(にちようび)有珠様(ゆずさま)(ところ)()こう」

甲示(しんじ)片付(かたづ)けをしながら週末(しゅうまつ)予定(よてい)()てます。


日曜日(にちようび)

今日(きょう)朝早(あさはや)くから準備(じゅんび)をし、なーくんと一緒(いっしょ)有珠(ゆず)(もと)へ。

「ごめんくださーい。有珠様(ゆずさま)いますかー?」

いつも(どお)(こえ)()けると(おく)(ほう)からドタドタと(さわ)がしい足音(あしおと)を立てながら大黒天(だいこくてん)(ちか)づいてきました。

「おぉー。やはり甲示殿(しんじどの)でしたな」

大黒様(だいこくさま)、お(ひさ)しぶりです。魚籠(びく)完成(かんせい)したのでお()ちしました」

大黒天(だいこくてん)姿(すがた)確認(かくにん)した甲示(しんじ)魚籠(びく)()()し、手渡(てわ)そうとします。

(すこ)(まえ)息子(むすこ)()れて()ていますぞ。ささ、()がってですな」

大黒天(だいこくてん)完成(かんせい)した魚籠(びく)()(うれ)しそうに甲示(しんじ)(まね)()れ、息子(むすこ)()部屋(へや)案内(あんない)します。

大黒天(だいこくてん)()勝手(かって)やっていますが、有珠(ゆず)住処(すみか)大黒天(だいこくてん)住処(すみか)ではないんですよね……。


案内(あんない)された部屋(へや)には有珠(ゆず)大黒天(だいこくてん)息子(むすこ)。テーブルの(うえ)には3つの湯飲(ゆの)みと御茶請(おちゃう)け。

(おそ)らく、ココで3(にん)(くつろ)いでいたのでしょう。

甲示(しんじ)、よく()たのぅ」

「お邪魔(じゃま)してます。有珠様(ゆずさま)

甲示殿(しんじどの)(いま)、お(ちゃ)準備(じゅんび)をしますぞ。(すわ)るんですな」

大黒天(だいこくてん)甲示(しんじ)(かた)をガシッと(つか)(すこ)強引(ごういん)(すわ)らせます。

「そんな、大黒様(だいこくさま)(わる)いですよ。お気遣(きづか)いなく」

甲示(しんじ)()()がり、大黒天(だいこくてん)(あと)()おうとしましたが、(とき)すでに(おそ)し。

大黒天(だいこくてん)(おく)へと()ってしまいました。

大黒(だいこく)()(どお)しかったんじゃろう。()きにさせてやると()い」

「そんな……」

「それより、それが完成(かんせい)した魚籠(びく)かのぅ?」

「はい」

甲示(しんじ)魚籠(びく)有珠(ゆず)(わた)します。

所々(ところどころ)不安(ふあん)はあるが()出来(でき)ておる。事代主神(ことしろぬしのかみ)元気(げんき)()るじゃろぅ」

有珠(ゆず)魚籠(びく)をまじまじと確認(かくにん)し、感想(かんそう)()べ、甲示(しんじ)魚籠(びく)(かえ)します。

事代主神(ことしろぬしのかみ)さま……?」

「そこで(たましい)()けたように(ほう)けとるヤツじゃ」

視線(しせん)(さき)には(ほお)()け、(からだ)(やつ)れ、まるで生気(せいき)(かん)じられない事代主神(ことしろぬしのかみ)()ます。

甲示(しんじ)事代主神(ことしろぬしのかみ)姿(すがた)()つめ、(こえ)()けて()いものか(まよ)っています。

そこへ大黒天(だいこくてん)がお(ちゃ)()(もど)ってきました。

「ささ、甲示殿(しんじどの)。お(ちゃ)ですぞ」

「ありがとうございます。事代主神(ことしろぬしのかみ)(さま)大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」

「まだ、魚籠(びく)(わた)してないんですな?甲示殿(しんじどの)魚籠(びく)があれば大丈夫(だいじょうぶ)だと(おも)いますぞ。甲示殿(しんじどの)()()いていないようですな。事代主神(ことしろぬしのかみ)よりも馴染(なじ)(ぶか)()()がありますぞ。甲示殿(しんじどの)魚籠(びく)をいただいても(よろ)しいですかな?」

「はい。……馴染(なじ)(ぶか)()()ですか?」

甲示(しんじ)大黒天(だいこくてん)魚籠(びく)手渡(てわた)しながら質問(しつもん)をします。

大黒天(だいこくてん)魚籠(びく)()()り、甲示(しんじ)質問(しつもん)には(こた)えず、事代主神(ことしろぬしのかみ)魚籠(びく)(わた)します。

恵比寿(えびす)甲示殿(しんじどの)がオマエの(ため)魚籠(びく)(たずさ)えてくれたんですな。お(れい)()うんですぞ」

「えっ!?えぇーー!!え、恵比寿様(えびすさま)!!あの恵比寿様(えびすさま)ですか!?」

大黒天(だいこくてん)(くち)から()予想外(よそうがい)名前(なまえ)()き、甲示(しんじ)驚愕(きょうがく)します。

「そうじゃ。(おそ)らく、お(ぬし)想像(そうぞう)している(かみ)じゃ」

「えーっと……。大黒様(だいこくさま)恵比寿様(えびすさま)親子(おやこ)で……。えー……。大黒様(だいこくさま)恵比寿様(えびすさま)七福神(しちふくじん)で……?恵比寿様(えびすさま)はとても(ふく)よかなイメージの神様(かみさま)ですが……。んっ?どう()(こと)ですか!?」

衝撃(しょうげき)事実(じじつ)理解(りかい)()()かないようです。

混乱気味(こんらんぎみ)なのはイメージしている恵比寿天(えびすてん)と、眼前(がんぜん)恵比寿天(えびすてん)()ても()つかない姿(すがた)をしている(こと)要因(よういん)の1つでしょう。

「そのままの意味(いみ)ですな。親子共々(おやこともども)七福神(しちふくじん)選出(せんしゅつ)されていますぞ」

大黒様(だいこくさま)恵比寿様(えびすさま)親子(おやこ)だったんですね。()りませんした」

「お……おぉ……おーー!!」

甲示(しんじ)大黒天(だいこくてん)会話(かいわ)他所(よそ)に、魚籠(びく)()()った恵比寿天(えびすてん)()(なみだ)()かべながら奇声(きせい)(はっ)します。

魚籠(びく)()にした恵比寿天(えびすてん)は、空気(くうき)()れた風船(ふうせん)(ごと)(まる)みを()(はじ)め、ゲッソリと()(ほそ)っていた姿(すがた)(うそ)だったかのように丸々(まるまる)とした風貌(ふうぼう)様変(さまがわ)わりし(はじ)めました。

恵比寿(えびす)……(もど)ったんですな?」

素晴(すば)らしい!この魚籠(びく)素晴(すば)らしい!(よこしま)感情(かんじょう)多分(たぶん)(ふく)まれているものの、物凄(ものすご)気持(きも)ちの()められた一品(いっぴん)!」

(よこしま)感情(かんじょう)』とは(おそ)らく、成功報酬(せいこうほうしゅう)(こと)(かんが)えながら(つく)っていたのでしょう。

(なに)はともあれ、恵比寿天(えびすてん)元気(げんき)姿(すがた)(もど)(こと)には成功(せいこう)したようです。

(なん)納得(なっとく)いかないなー……」

一定(いってい)評価(ひょうか)はされているものの、手放(てばな)しでは(よろこ)べない評価(ひょうか)

甲示(しんじ)小声(こごえ)(すこ)不貞腐(ふてくさ)気味(ぎみ)不満(ふまん)(くち)にします。

「まあまあ、甲示殿(しんじどの)機嫌(きげん)(なお)してほしいんですな。恵比寿(えびす)、この()魚籠(びく)(つく)ってくれた人物(じんぶつ)ですぞ。お(れい)()うんですな」

(なん)と!(われ)貢物(みつぎもの)とな!?」

(ちが)いますぞ。……甲示殿(しんじどの)愚息(ぐそく)(もう)(わけ)ないんですな」

「いえいえ、お()になさらず」

大黒天(だいこくてん)正気(しょうき)(もど)ったばかりで状況(じょうきょう)把握(はあく)しきれていない恵比寿天(えびすてん)(あたま)(かる)(はた)き、甲示(しんじ)謝罪(しゃざい)をします。

甲示(しんじ)としては貢物(みつぎもの)とされた(こと)よりも、魚籠(びく)(たい)する評価(ひょうか)(ほう)()っかかっているようです。

「どう()(こと)ですか!?」

甲示殿(しんじどの)にお(ねが)いして(つく)ってもらったんですな。しっかりお(れい)()うんですぞ」

「そう()(こと)でしたか。勘違(かんちが)いして(もう)(わけ)ない。(まこと)感謝(かんしゃ)(もう)()げる」

「いえいえ、恵比寿様(えびすさま)元気(げんき)になられて(なに)よりです。……で、大黒様(だいこくさま)(れい)のアレなんですが……」

魚籠(びく)()(わた)しが無事(ぶじ)完了(かんりょう)した甲示(しんじ)報酬(ほうしゅう)(はなし)(うつ)ろうとします。

「はて?アレとは(なん)(こと)ですな?」

(とぼ)けたフリをする大黒天(だいこくてん)

材料費(ざいりょうひ)捻出(ねんしゅつ)する(ため)のアレですよアレ」

有珠殿(ゆずどの)甲示殿(しんじどの)(なに)()っているんですな?材料費(ざいりょうひ)(はなし)をした(おぼ)えが()いんですぞ?」

「ワシも()らん。甲示(しんじ)はお(ぬし)小槌(こづち)()勝手(かって)()()っただけじゃのぅ」

「な゛!?」

大黒天(だいこくてん)有珠(ゆず)(くち)から()()予想(よそう)だにしていなかった発言(はつげん)に、言葉(ことば)(うしな)甲示(しんじ)

「どどど、どーゆ―(こと)ですか!?」

やっと(しぼ)()した言葉(ことば)はかなり動揺(どうよう)しています。

「どーもこーもそのままの意味(いみ)ですぞ。材料費(ざいりょうひ)()いですな?しかし、約束(やくそく)(しな)(わた)しますぞ。有珠殿(ゆずどの)完成(かんせい)していますな?」

「うむ。名付(なづ)けて『プチ()小槌(こづち)』じゃ」

有珠(ゆず)大黒天(だいこくてん)()われ小槌(こづち)()()しました。

(だれ)名付(なづ)けたんですか?」

「ワシじゃ」

「センス()いですな」

修業(しゅぎょう)必要(ひつよう)なレベルのネーミングセンスだ」

(ひど)()われ(よう)です。

「ゴホンッ!!名前(なまえ)はどうでも()いんじゃ!!(いま)から使(つか)(かた)説明(せつめい)するから()くが()い」

酷評(こくひょう)(すこ)(いか)気味(ぎみ)有珠(ゆず)

甲示(しんじ)小槌(こづち)手渡(てわ)します。

「はい、よろしくお(ねが)いします」

甲示(しんじ)小槌(こづち)()()り、説明(せつめい)(うなが)します。

「まず、()部分(ぶぶん)計測器(けいそくき)があるのじゃ。数字(すうじ)(なら)んでおろう?」

甲示(しんじ)(にぎ)っている()部分(ぶぶん)確認(かくにん)すると『0』が(なら)んでいます。

「はい。0が10()あります」

「よろしい。一度(いちど)()って、数字(すうじ)確認(かくにん)するのじゃ」

有珠(ゆず)指示通(しじどお)小槌(こづち)()り、再度(さいど)計測器(けいそくき)確認(かくにん)すると数字(すうじ)変化(へんか)がありました。

一番下(いちばんした)が2になりました」

「ちゃんと(うご)いとるようじゃ。それがお(ぬし)(かせ)いだ金額(きんがく)じゃ」

一振(ひとふ)り2(えん)!?」

「もう一度(いちど)()ってみるのじゃ」

再度(さいど)小槌(こづち)()()ろし、数値(すうち)確認(かくにん)します。

「あれ?7になってる。4じゃない?」

「うむ……。小槌(こづち)は1(かい)()(ごと)に1~9の数字(すうじ)無作為(むさくい)加算(かさん)される仕組(しく)みじゃ。お(ぬし)は2(かい)()り、2と5を()いた(わけ)じゃな」

「なるほど。……で、コレをどうすれば()いんですか?」

(つち)上部(じょうぶ)()()っている部分(ぶぶん)()せば清算可能(せいさんかのう)じゃ」

有珠(ゆず)説明(せつめい)()甲示(しんじ)はボタンを()してみます。

「……?あれ?(なに)()きません」

清算金額(せいさんきんがく)は1(えん)からじゃ」

「でも、(いま)(えん)……」

「それは(せん)じゃ。よ~く数字(すうじ)()るが()い。小数点(しょうすうてん)があるじゃろう。(いま)は0.07(えん)。つまり7(せん)じゃ」

甲示(しんじ)発言(はつげん)(さえぎ)り、有珠(ゆず)説明(せつめい)(つづ)きをします。

「そ、そんなー」

説明(せつめい)()き、(かた)()とす甲示(しんじ)

甲示殿(しんじどの)()()(こと)はありませんぞ。継続(けいぞく)(ちから)なりですな。()れば確実(かくじつ)()えますぞ」

「そ、そうですね」

大黒天(だいこくてん)(はげ)ましで多少(たしょう)()(なお)りました。

「1~9つまり、期待値(きたいち)は5。1(びょう)2振(ふたふ)りと(かんが)えると、1分(いっぷん)で6(えん)。1時間(じかん)で360(えん)か」

「……」

余計(よけい)(こと)()わないでほしいんですな」

甲示(しんじ)士気(しき)()ちる計算(けいさん)をした恵比寿天(えびすてん)大黒天(だいこくてん)(とが)めます。

甲示(しんじ)は『プチ()小槌(こづち)』を複雑(ふくざつ)そうな()()ています。

「コホンッ。甲示(しんじ)、2つ注意点(ちゅういてん)がある」

「はい……。(なん)でしょうか?」

まだ説明(せつめい)()わっていなかったようです。

甲示(しんじ)のテンションはかなり(ひく)いです。

「1つは甲示自身(しんじじしん)()らねばならん」

(ほか)(ひと)()ってもらうのは()しって(こと)ですか?」

「そうじゃな。それと、扇風機(せんぷうき)などに(くく)りつけて(まわ)すなどの行為(こうい)()しじゃ」

「それはそうですよね。でも、(ぼく)()ってるかはどう認識(にんしき)してるんですか?」

「それは……」

「それは?」

企業秘密(きぎょうひみつ)じゃ。(ひと)説明(せつめい)しても理解出来(りかいでき)(ちから)じゃ。魔法(まほう)神力(しんりき)(たぐい)だと(かんが)えれば()いじゃろう」

「はぁ……。では、2つ()注意点(ちゅういてん)は?」

()()けた返事(へんじ)をする甲示(しんじ)

明確(めいかく)(こた)えを()けなかった(こと)(たい)する落胆(らくたん)か、(あきら)めか?

どちらにせよ、これ以上(いじょう)追及(ついきゅう)はしないようです。

「2つ()清算(せいさん)してもお(かね)()(はい)るとは(かぎ)らんと()(こと)じゃ」

「えっ!?どう()(こと)ですか!?」

一生懸命(いっしょうけんめい)小槌(こづち)()ってもお(かね)()(はい)らないとなれば一大事(いちだいじ)

甲示(しんじ)(こえ)(おお)きくなります。

()()くのじゃ。(はなし)最後(さいご)まで()くが()い。お(ぬし)が100(えん)まで()めて清算(せいさん)すると仮定(かてい)するじゃろぅ?」

「はい」

「その(とき)道端(みちばた)で100(えん)(ひろ)可能性(かのうせい)もある」

「それだと100(えん)()(はい)ってますよね?」

(ただ)し、それ以外(いがい)方法(ほうほう)清算(せいさん)される場合(ばあい)もある。(たとえ)えば、()(もの)()った(とき)に100円分(えんぶん)割引(わりびき)(うけ)けられる。とか、100円分(えんぶん)商品(しょうひん)がオマケで()くとかじゃな」

「なるほど。つまり、(なに)()きるかは()からないんですね」

「そうじゃ。多少(たしょう)誤差(ごさ)(しょう)じる可能性(かのうせい)もあるのじゃ。金額(きんがく)(たか)(ぶん)(なに)もないが、(ひく)(ぶん)誤差分(ごさぶん)(もど)るようになっておる。100(えん)清算(せいさん)してジュース1本(いっぽん)とかも()()るし、95円分(えんぶん)しか使(つか)わなかった場合(ばあい)は5(えん)(もど)ると()(こと)じゃな」

自分(じぶん)使(つか)いたいように使(つか)えないお(かね)か。便利(べんり)なような不便(ふべん)なような……」

(そん)はしないので(ひま)(とき)()ると()いですぞ」

大黒天(だいこくてん)がフォローになっているのか、(すこ)疑問(ぎもん)(のこ)るフォローをします。

「それと最後(さいご)に。清算(せいさん)されるまでの時間(じかん)は24時間以内(じかんいない)じゃ。ボタンを()した(あと)すぐに清算(せいさん)されるとは(かぎ)らんのじゃ」

注意点(ちゅういてん)が3つに……」

「いらぬツッコミはするでないのじゃ。(なに)質問(しつもん)があれば(こた)えるのじゃ」

甲示(しんじ)小槌(こづち)をじっと()つめ、(なに)かを(かんが)えています。

「いえ、(いま)(ところ)は……。使(つか)勝手(がって)(わる)いなって(こと)以外(いがい)は……」

後半部分(こうはんぶぶん)小声(こごえ)愚痴(ぐち)をこぼすように(つぶや)きました。

不満(ふまん)なら(かえ)しても()いんじゃぞ?」

「いえいえいえ!満足(まんぞく)してます!わー(うれ)しいなー!!」

まさかの没収宣言(ぼっしゅうせんげん)甲示(しんじ)(あせ)り、(くび)をブンブンと()りながら前言(ぜんげん)撤回(てっかい)

ついでに棒読(ぼうよ)みながらも(よろこ)んでいる(こと)(つた)え、()()ろうとします。

使(つか)勝手(がって)(わる)く、(おも)(どお)りにお(かね)()(はい)らなくとも、手放(てばな)すのは()しい一品(いっぴん)なのでしょう。

「「「……」」」

()わり()(はや)さに()れている所為(せい)神様一同(かみさまいちどう)()ややかな視線(しせん)甲示(しんじ)(おく)ります。

「ハハハハハハ……。大切(たいせつ)使()わせていただきます。ありがとうございます」

(にん)視線(しせん)()()れなくなった甲示(しんじ)(かわ)いた(わら)いで誤魔化(ごまか)し、謝意(しゃい)(ひょう)します。

「まあ、()いじゃろう」

「そうですな。今回(こんかい)甲示殿(しんじどの)にお世話(せわ)になったのは事実(じじつ)ですぞ」

(われ)魚籠(びく)大切(たいせつ)にさせてもらう」

「いえいえ、(もと)はと()えば、なーくんが原因(げんいん)だったみたいで……」

(なん)とか微妙(びみょう)空気(くうき)一新(いっしん)し、(まる)(おさ)まったようです。


「────では、この(あた)りでお(いと)させていただきます」

(しばら)4人(よにん)会話(かいわ)

甲示(しんじ)時期(きじ)()暇乞(いとまご)いをします。

「うむ。また(なに)かあったら()るのじゃ」

(ひま)(とき)(われ)らの(ところ)にも(あそ)びに()ても()いぞ」

「そうですな。その(とき)歓迎(かんげい)いたしますぞ」

(にん)見送(みおく)りを()け、甲示(しんじ)となーくんは帰路(きろ)()きます。


「なかなか面白(おもしろ)そうな(こと)を♪お婆様(ばあさま)()われ、嫌々(いやいや)様子(ようす)確認(かくにん)()ましたが、(おも)わぬ収穫(しゅうかく)ですね♪お三方(さんかた)には(すこ)しお(はなし)をお()きして、こんな(なに)()(さび)れた場所(ばしょ)とはさっさとおさらば(いた)しましょう♪」

(へい)(かげ)から甲示(しんじ)動向(どうこう)観察(かんさつ)する(あや)しい人影(ひとかげ)……。

この人物(じんぶつ)正体(しょうたい)とは……?


自宅(じたく)

「1時間(じかん)で360(えん)くらいって()ってたなー。なーくんの食事代(しょくじだい)くらいは(かせ)ぎたいな」

自宅(じたく)(もど)った甲示(しんじ)早速(さっそく)『プチ()小槌(こづち)』を()ります。

しかし、10分程度(ぷんていど)()(つづ)けた結果(けっか)……。

「つ、(つか)れた……」

(びょう)2振(ふたふ)りで計算(けいさん)して、10(ぷん)(やく)1200(かい)

(つか)れるのも当然(とうぜん)です。

金額(きんがく)確認(かくにん)すると……。

「57.36……。まだ57(えん)!?」

金額(きんがく)(ひく)さに驚愕(きょうがく)します。

なーくんの餌代(えさだい)半分(はんぶん)にも(とど)いていません。

仕方(しかた)()い。時間(じかん)()つけて地道(じみち)頑張(がんば)るしかないか」

小槌(こづち)をテーブルに()き、部屋(へや)(すみ)にある()った竹籤(たけひご)(たば)()つめます。

(あま)ったけど、コレどうしようかな……。()てるのも勿体(もったい)ないしなー。……あっ!そうだ!」

(なに)かを(おも)いついた甲示(しんじ)竹籤(たけひご)()(はじ)めました。


数日後(すうじつご)

完成(かんせい)!」

甲示(しんじ)手元(てもと)には竹籤(たけひご)(つく)られた四角柱(しかくちゅう)(ちい)さな()(もの)が2つ。

「ケンちゃんのお(じい)さんとお(ばあ)さん、(よろ)んでくれるかな?(あと)でケンちゃんに連絡(れんらく)してもらってから(わた)しに()こう」



────後日(ごじつ)甲示(しんじ)健太(けんた)祖父母(そふぼ)手作(てづく)りの()(もの)(おく)りました。

2人(ふたり)大層(たいそう)(よろこ)んで甲示(しんじ)からの(おく)(もの)()()りました。


(じい)さんはハサミやペンなどを()れるペン()()わりに。

(ばあ)さんは玄関(げんかん)(かざ)一輪挿(いちりんざ)しに使(つか)重宝(ちょうほう)しているようです。



─ つ づ く ─



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